【短編】凍える喉奥(閲覧注意)
子供が好きな方、僕なりの残酷な描写に免疫、抵抗力のない方は閲覧にご注意下さい。
寒さで手を擦り合わせるのは、最早癖になっている。
はぁーっと息を吐いて真っ白な息吹を吐くのも抜けない癖だ。
この息を吐く癖は、楽しいことを始める前とかによくやってしまう。
季節は冬だった。
冬以外の何物でもない冬。
どうせ冬なら雪でも降ればいいのに。
僕の町では、滅多に雪は降らない。
初めて雪を見たのは小学生の頃で、その初めての雪以外に降る雪を見たことがない。
ここではどうだろう。
ここ、東京ではよく雪が降るのだろうか。
僕は夜を彩る細やかな光の下で、身を縮こませながらある人を待っている。
ある人、といっても恋人とか、親友とか、そんないいものじゃない。
まあ、来ないかもしれないけど。
「ねえねえ」
誰かが話しかけてくる。
振り向くと、そこには真っ赤なランドセルを背負った少女が俯きながら立っていた。
「これ、おにいちゃんのでしょ」
そう言うと少女は、見覚えのある手袋を取ってくれた。
僕のだ。
どうやらポケットから落ちてしまっていたらしい。
僕は感謝の言葉を言うと、少女はにこりと笑って駆けていった。
子供は好きだ。
落ち込んだ時に見ていると元気になる。
それにしても今日は本当に寒いな。
今日はいつも持ってきているマフラーを忘れてしまったが、それに追い打ちをかけるかのような寒さだ。
これは一降りくるかもな。
死んだ店長の口癖だったか。
といっても、店長を殺したのは僕だけどね。
娘さんを誘拐しようとしたら後を追ってくるんだもん。
自業自得だよね。
ふと気がつくと、視界に真っ白な粒が現れていくのが見えた。
僕はなんだか、心が踊るような気分になった。
この歳になっても、やはり雪に興奮してしまうんだな。
小学生の頃もはしゃいだのを覚えている。
そうだな、今日はあの子にしよう。
僕はポケットからハンカチを取り出し、路地へと消えていく少女の後をゆっくりとした足取りで追った。
はぁーっ。




