準備時間 -2-
――ぴんぽんぱんぽ~ん
天井付近に取り付けられたスピーカーから、間の抜けた音色が聞こえてきた。
間髪入れずに、機械的な音声が続けて流れてくる。
――鬼ごっこ運営事務局からの、お知らせです
――これより、ゲーム開始を宣言いたします
――ただいまから、1時間の準備時間を設けます
――皆様、思い思い、追いかけ合ってください
――以上、鬼ごっこ運営事務局からのお知らせでした
――ぴんぽんぱんぽ~ん
再び、スピーカーから間の抜けた音色が聞こえてくるのと同時に、 《がちゃり》 と、扉の近くで鍵の回る音がした。
ヒィーっという、叫び声が後ろから聞こえてくる。
ドアが数センチほど開くと、廊下から、ヒヤリと冷たい風が吹き込んできた。
恐怖でみぞおちのところがドキドキする。
俺 「(なにが起こった?)」
突然の出来事に混乱する。教室内のざわめきが煩い。
女の声が近くで聞こえてすぐに、現実に引き戻された。
「世良田くん。落ち着いて聞いて欲しいの。」
いつの間にか、近くに来ていた富士が、落ち着き払った様子で話しかけてきた。
富士 「今なら、誘拐犯を捕まえられるかもしれないわ。」
戦慄が走る。正気を疑われかねない提案だ。
扉の鍵を開ける為に、誘拐犯が近づいてきた。確かに、今が捕まえるチャンスなのかもしれない。
だが、恐ろしい。短時間で、この発想に至った、富士の思考回路がとても恐ろしい。