準備時間 -1-
~ゲーム開始から〇時間目~
訳の分からない状況。
答えを見つける為に、情報を必死に集めた。
だが、謎の手紙の存在が、今までの行動を、ぴしゃりと否定する。
常人の頭で、どんなに考えたって無駄だ。誘拐犯は、きっと頭の線が一本切れているのだから。
「クソッ!」と、思わず悪態が口をつく。
俺 「(富士は、何であんなクソみたいな内容の、手紙を信じたんだ!)」
俺は、この教室に居るメンバーの中で、富士だけは、冷静で、頭が切れる、優秀な奴だと思っていた。
頼れる仲間と認めたかっただけに、先ほどの発言に腹立たしさを感じる。
何故、富士は、あんな馬鹿げた内容を、信じたのだろう。
どうしても理解する事が出来ない。
一度は、頼れるかもと思った相手だ。簡単に切り捨てたくは無い。
こんこんと怒りが湧き起こるのを抑えつつ、富士の言葉を思い出すことにした。
『君たちには、これから 【鬼ごっこ】 をしてもらう。ルールを守り楽しく遊ぶように。』
やはり理解が出来ない。誘拐犯がそんな事を言うハズが無い。
そもそも、鬼ごっこをさせる事に、何のメリットが有るのか?
そんな堂々巡りの思考をしていると、目の前から、女の声が割り込んできた
「あの~。考え中に申し訳ございません。」
この気弱そうな声は、間違いなく、さっきのアイツだ。無視したい。
考えの邪魔だと、相手にしないつもりであったが、女が持っている物に視線が釘付けになる。
俺 「おいっ! お前、確か、樹って言ったな。」
俺 「手に持っている物は、何だ?」
おびえた子犬のように、縮こまってしまった。
俺 「(チッ。面倒くさい奴だ。無理やり奪う手も有るが、騒がれたくは無いな。)」
恐る恐る、こちらを伺う様子にウンザリしつつ、「大声出して、すまなかった。」と、少し投げやりな口調で謝る。
樹 「いえ。私の気が小さいのが悪・・・。」
案の定、語尾が小さく聞き取れない。
何を言っているのか、聞き直すのも面倒くさい。次の言葉を待つ事にする。
二人の間に沈黙が降りる事、数秒。女は、控えめな声で話し始める。俺は、相槌も打たずに静かに耳を傾けることにした。
樹 「えっと、富士さんに頼まれて来ました。飲み物と携帯食料、それと腕時計を皆に渡すようにと。」
飲み物と食い物がココに有ったのか。誘拐犯は、俺達を、何日間か閉じ込める気でいるらしい。
そっと手渡された物を、まじまじと見つめる。
俺 「(500mlのペットボトルに入った水と、カロリーメイトのようなお菓子か。この量じゃ、1日と持たないな。)」
どうやら、長期期間、閉じ込められる心配は無さそうだ。
俺達は、一時的にココに集められただけなのか?
明日にでも、別の場所に移されるのだろうか?
疑問が次々と、頭の中に広がっていく。
一つ分かった事が有る。どうやら、今すぐに 【殺される】 という事は、無さそうだ。