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イエローチューリップ

作者: 漣

4年付き合っていた彼から深夜突然呼び出された。

急いで準備を整え、必要最低限の物を持って指定されたカフェに向かう。

道中、何か大事な話をされるのだろうかと様々な考えが脳裏をよぎったが今考えても仕方ないと思い直し歩を進める。


指定されたカフェに着き店内に入れば既に彼は来ており、深くソファに凭れ掛かってタバコを吹かせていた。

「ごめん、遅くなった。」

微笑を浮かべて彼に声をかけながら、向かい合うように私もソファに座る。

「…別に待ってないから。それより、突然呼び出して悪かったな。」

どことなく素っ気無い彼の言動にドキッとしながらも、「暇してたから平気」とだけ答えた。

彼も「そうか」とだけ答え、吸っていたタバコの火を灰皿に押し付けて消した後、漸く私の顔を見た。

そして、たっぷり間を置いて口を開いた。

「……別れてくれ。」

私をまっすぐ見て、何の躊躇いもなくはっきりと言い放った。

「いいよ。」

視線を少し彼の顔からそらした後、口元に来たときと同じような微笑を浮かべ、朝の挨拶をするような気軽さで答えれば、彼は私の予想外の態度に驚いたのか軽く目を見開いて固まっていた。

「あの子が好きなんでしょ?…ナオミちゃんが。」

ナオミという名前を口にしては、分かりやすく顔色を変えた彼。

「知ってたよ、貴方が4年間ずっとナオミちゃんだけを想ってたこともね…?」

クスリと笑ってソファから立ち上がる。

「ナオミちゃんが好きだったなら私と付き合わなければよかったじゃない。…私に情けをかけたつもりなの?…馬鹿にしないでよね。」

今まで溜まっていた不満、想いが一気に流れだす。

「別に今更言っても仕方ないことだけど…私もそろそろ別れたいと思ってたし、丁度いい機会だったわ。」

そしてもう一度、恐ろしいまでに清々しい笑みを見せては、「二度と会うことはないかもね」とだけ告げてカフェを後にする。


彼と別れた後、ボーっと歩きながら【彼と別れたのは間違いじゃない】と素直に思えた。

普通4年も付き合った男と別れるとなれば悲しさのあまり泣いてでも縋り付くだろう。

だけど私は彼と別れても不思議と悲しくなかった。

涙も、悲しいという感情も湧いてこなかった。

【なぜだろう…?】

考えて考えて一つの結論に至った時、不意に足が止まった。

「…あぁ、そうか…」

【知っていたからだ…全部、最初から…】

彼が私ではなくナオミが好きだったという事実を―。


分かっていたんだ、初めから…望みのない恋だと。

どんなに頑張ってもナオミに勝てないことを…。

付き合っていても、私の恋が永遠の片思いだということを―。



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