コボルド
転送された場所は草原のフィールドだった。トリスティアの森のダンジョンとイメージはそんなに変わらず、ただ所々でモンスターだけでなく、それらと戦っている冒険者達の姿が伺えた。
ひと気の少なそうな方へ進もうかと思ったが、シェリーによるとそちらはホワイトゲートのある反対方向であり、少し進んだらすぐに行き止まりになるそうだ。次の階層に進む為にはホワイトゲートを目指す他にない。仕方なく人のいる方向へ歩みを進めた。
結局モンスターと一度の戦闘も発生せずにホワイトゲートまで辿り着いてしまった。しかもホワイトゲートに近づくに連れ、次第に冒険者の数が増えていった。
階層の攻略ではなくレベル上げだけを目的にした場合、すぐに帰れるようにする為、もしくはイレギュラーが発生した場合すぐに逃げれるように、ホワイトゲートの近くでモンスターを狩るようにしているのだろう。
こういった冒険者達がいるという事は、他の階層にも同じような人達がいるだろう事は安易に想像がつく。そうなると次の階層も似たような事になるわけで、レベルを上げたいのに先が思いやられた。
13層を終えて14層もやはり同じように、冒険者達が場所取りをするような形で、各場所に散らばってモンスターを狩っていた。
「ここも同じような感じだね」
「モンスターまだ?」
「この状態じゃ遭遇するのはなかなか難しそうだね」
「このまま同じ状態が続くのでしたら、とりあえず19層まで終わらせてから戦い易いモンスターを探して、人の居ない所でレベル上げをするのがよろしいのではないでしょうか」
流石にこのままモンスターにほとんど出会わずに19層が終わり、20層でいきなり守護者と戦う事は出来れば避けたい。守護者に挑まない限りでは戦闘面に問題はないだろうから、シェリーの提案を採用する事にした。
たまにモンスターと戦う事は出来たが、ダンジョン内を移動するだけで1日が終わってしまった。それでもなんとか19層まで走破出来た。歩く速度を多少上げていたのもあるが、戦闘時間がなくなるだけでいつもの攻略の2倍に近いペースで各階層を終わらせられた。
ホワイトゲートから離れた所である程ひと気が少なかったので、明日からはその辺りでレベル上げをしようと思う。何層でやるかはこの後の話し合い次第だが、俺としては18層に出てきた人の形をした頭が犬のコボルドが良いかなと思った。
コボルドは巨大なハンマーみたいな物を所持していてスキルも《鎚術》のレベル5を取得していた。《鎚術》の相手は初めてだし練習にもなるだろう。他にも13層の草原に猪のアサルトボア、12層の森に食人植物のラフレシア、15層の山に狸のリーフラクーン、16層の森にカマキリのギロチンマンティス、17層の洞窟に蝙蝠のダークネスバット、19層の浜辺に蛙のヘビーフロッグが居たが、コボルドに飽きたらダークネスバットが《闇魔術》のレベル5を所持していたし、そちらを相手にするのも良いかもしれない。新しく出てきた山のフィールドにも慣れる為に15層でも良い。
街に帰った後は食事をしてその時に話し合った結果、17層のダークネスバットも人気があったが、ソフィアの希望で18層のコボルドと暫く戦う事になった。魔法を使ってくる相手よりは接近戦をやりたいらしい。今日はほとんど戦闘がなかったせいで、相当鬱憤が溜まっているみたいだった。明日のコボルド達には悪いがその鬱憤を晴らす為の相手をしてもらおう。
そして翌日、俺達は18層の草原フィールドにやってきていた。ひと気のない所へ移動していくとさっそく《探知》にコボルド達の反応があった。《探知》はモンスターとそれ以外で区別がつくのがありがたい。そのおかげで冒険者達を避けながらモンスターを探していった。
何度かモンスター達と遭遇したが、その全てがコボルドで、この階層にはコボルドしか居ないみたいだった。ソフィアも最初は自分だけでコボルド達を倒していた。
経験値は前に調べた感じだと、誰が倒してもパーティー内に公平に分配されるみたいだから、ソフィアが1人で倒すのは別に構わない。ただ何もせずに経験値だけ貰っている感じになるのが申し訳なく思うが、ソフィアが1人で戦いたがってるのだからそれも問題ないという事にしておこう。そしてソフィアはようやく鬱憤を晴らし終わったのか俺達にもコボルドの相手をさせてくれるようになった。
俺もコボルドの相手をするが、《鎚術》の技を見てみたくてわざと隙を見せてみたりした。期待通りにコボルドがレベル3の技《クラッシュ》と、レベル5の技《ローリングクラッシュ》をそれぞれ使用してくれた。《クラッシュ》は大きく振りかぶった鎚を思いっきり相手にぶつける《スラッシュ》のような一撃の技だった。《ローリングクラッシュ》はその名の通り、使用者を中心とした横回転をして鎚を振り回す技だった。
そして戦わなくても分かるが、巨大なハンマーは重い分、威力は絶大だが速度が遅い。回避を念頭に戦闘をする俺達にとっては避け易い。結局一度も鎚を喰らう事なく時間は過ぎていき、その日はコボルドとだけ戦い続けて終わったのだった。




