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プレゼント

 トリスティアの森のダンジョンをクリアして、街に戻ってきた俺達は予定通りに装備屋に来ていた。


「あんちゃん達、今日も来たのかい。それに後ろにいる2人はあんちゃんのお仲間かい?」


「うん、そういえば2人を連れてきた事なかったね。獣人の方がアペルでもう1人がシェリー、今日は2人の装備の買い替えをしに来たんだ」


「そうか、それでどんなのが欲しいんだい?」


 俺はおっちゃんにシェリー用の宝石の付いた杖を探しに来たと伝えた。主に使う属性は土系統だから出来れば黄色の宝石が良い。


「作成済みの杖では見つからねえな。ちょっと待ってろ」


 おっちゃんは杖の置いてある場所を確認した後、そう言ってカウンターの奥へ消えていった。


「お待たせ、さあ好きなのを選びな」


 戻ってきたおっちゃんがスーツケースくらいの箱を持ってきて、それを開き見せてきた。中には色とりどりの宝石が綺麗に整頓されて飾られていたが、この中から好きな物を選んで良いらしい。


「キラキラしてて綺麗です」


「シェリーの装備に使うんだから、シェリーが好きなのを選んだら良いんじゃないかな」


「ショウジ様、こういった宝石などは男性が女性に贈るという話が良くありますが、女性側からしても男性に選んでもらった物をプレゼントして頂きたいものなのですよ?」


 箱の中にある様々な宝石の中でも黄色い宝石はいくつかあって、どれを選んだら良いのか全く分からなかったので、女性のシェリー自身に選んでもらおうと思ったのだが、女心が分かっていないと怒られてしまった。しかもさりげなく俺が買ってプレゼントする形になっている。隣でもソフィアが無言で頷き続けていた。確かにソフィアが使っている最初のエメラルドの装備は俺が買ってプレゼントしたようなものだけど、シェリーからそこを指摘されるとは思ってもいなかった。


 仕方なしに箱の中から黄色い宝石を選んでみる。大きければ大きいほど値段も高くなるだろうが、その分魔力の増幅量も上がるだろう。選ぶならちゃんと選びたい。俺はある程度宝石の数を絞った後、それぞれの宝石を《鑑定》していく。特に《鑑定》で能力や効果が表示される訳ではないが、名前も何となく選ぶ基準になる。その中で選び出したのがトパーズだ。透き通った黄色に少し赤みもあってオレンジ色に近いかもしれない。


「それじゃ、このトパーズにするよ」


「良い選択だな、そのトパーズだったら金貨7枚でいいぜ。それと素材はどうする?出来れば杖だから木材があったら良いんだが」


 そう言われて《道具》の中に何か良い素材がないか探していく。その中で見つけたエルダートレントの枝、これが良さそうだ。ヘルグミルのダンジョンの方でエルダートレントを倒していたのでその時に手に入れていたのだろう。結構《道具》の中も種類が増えてきていて管理しきれなくなってきている。そろそろ冒険者ギルドの買い取りに出して整理した方が良さそうだ。俺はエルダートレントの枝を取り出すとカウンターの上に置いておっちゃんに見せた。


「おっちゃん、これどう?」


「エルダートレントの枝か、いい素材を持ってるじゃないか。今回も手数料はおまけしてやるよ」


 おっちゃんが俺の選んだトパーズとエルダートレントの枝を収納していく。


「成功率90%だとさ。問題ないよな、いくぜ?」


 俺は頷いて先を促す。それにしても90%か、流石おっちゃん成功確立高いな。そしてすぐにおっちゃんから《装備作成》が成功したと報告があり、完成した杖がカウンターの上に置かれた。


 《鑑定》して確認するが、杖の名称は黄玉のエルダーロッド。はてなマークみたいな渦巻状の中心にトパーズが飾られ、光を受けて美しく輝いていた。おっちゃんに金貨7枚を渡して、出来上がった黄玉のエルダーロッドをシェリーに渡す。


「なんか気恥ずかしいけど、これプレゼント。黄玉のエルダーロッドだって」


「ショウジ様、ありがとうございます。一生大切に致します」


 一生ってなんて大げさな。シェリーは恭しく両手で受け取ると大事そうに黄玉のエルダーロッドを抱えた。


「うん、これからもよろしくね」


 シェリーの杖の買い換えは終わり、次はアペルの防具選びか。それに関してはシェリーがアペルと一緒に選ぶ事になっているから任せるか。その間に冒険者ギルドへ報告を済ませに行こう。


「それじゃシェリー、後はアペルの防具の買い替えだね。アペルはシェリーさえ居ればいいだろうから、俺は冒険者ギルドに行っても良いかな?ちょっとそっちにも用事があるんだ」


「分かりました。あーちゃんの装備を選び終わったら追いかけます」


「うん、よろしく。ソフィアはどうする?」


「私も一緒に行く」


「うん、それじゃ行こうか」


 おっちゃんにも挨拶をして、俺とソフィアは先に冒険者ギルドへ向かったのだった。

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