表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/183

ゴブリンと茸

 ティーリアの街を出て、再びやってきたダンジョンの入り口。黒い膜の中に入ると視界に、1層か2層に行くかのウィンドウが出た。俺は迷わず2層を選択すると、視界が開いて森が広がっていた。一瞬外に出てしまったのかと思ったが、外とは景色が違うのでダンジョンの中なのだろう。


 そういえば冒険者ギルドで、プリメラさんにダンジョンのことについて教えてもらっていた。ダンジョンは世界中にいくつもあって、階層の多さや規模に違いはあるものの、主な共通点は階層によって環境が変わり、10層から20層30層35層40層45層50層……とダンジョンの出口を守る守護者(ガーディアン)が出現する。今のところは50層までしか確認が取れていないらしい。


 それとは別に最下層になると通路などなく、広い部屋がひとつあるだけで、そこで迷宮主(ダンジョンマスター)と戦う事になる。迷宮主を倒すとダンジョンの外へ自動で送還され、ダンジョンは消滅する。


 暫く森の中を進んでいると《探知》に反応があった。そちらの方に向かうと、緑色の肌をした人型の魔物がいた。頭からは少しだけ角のような突起物が出ていて、耳の先も少し尖っている。小柄な体型だが頭が大きく、全体のバランスを見ると3頭身くらいだ。体は痩せ細っていて、よりアンバランス差に拍車を掛けている。


 どう見てもゴブリンだ。少しは知恵があるのだろう、3体で纏まって行動している。それぞれ短剣を所持していて、3体相手取るのは厳しいだろう。不意打ちで1体倒せるとしても、残りの2体に囲まれてしまう。できれば単独撃破していきたい所だ。


 待てよ、ブラームスさんと戦った時のあれを応用すればいけるかもしれない。俺は背後の方に回り込んで、できるだけ木々に隠れながらゴブリンに近づいていく。大分近付いたところで一気に飛び出した。


「スラッシュ!!」


 先ずは一番後ろにいたゴブリンに斬りかかる。同時に残りのゴブリン達がこちらに気づいた。


「アースシールド!!」


 続けて俺は《アースシールド》を残ったゴブリンの片方を囲むように複数展開させて閉じ込めた。ちなみに最初に斬りかかったゴブリンは、すでに灰になっている。一撃で死んでしまった。閉じ込めたゴブリンはとりあえず放って置いて、ゴブリンと1対1だ。これなら負けはしないだろう。俺は1対1を軽く制して、更に《アースシールド》を《採掘》で破壊する。再度ゴブリンと1対1だ。これも問題なくゴブリンを灰に変えて戦闘終了。ゴブリンなら1対1だと負けない事は分かった。これが複数になると、相手の攻撃を避けたりするのが一気に難しくなる。もし複数のモンスターにまた出会ったら、今度は1対2で戦ってみよう。


 俺はモンスターを探して森の中を進んでいく。再び《探知》が反応したが、今回のモンスターは1体だけみたいだ。近づいてみるとモンスターはゴブリンじゃなかった。茸のシルエットをしていて、大きさは1メートルくらいある。傘に比べて柄が太めだ。そして柄の部分に顔があるが、動くための足や手はなく、移動するために飛び跳ねている。


 ゴブリンも1撃で楽だったが、茸のモンスターは人型ではない分、ゴブリンより楽かもしれない。俺は奇襲せずにそのまま正面から攻め込んだ。しかし、この選択は不味かった。茸のモンスターは身震いすると周辺に胞子を撒き散らした。間合いを詰めて前に踏み込んでいた俺は、バックステップを踏めずそれを直撃で食らってしまい、胞子を吸いこんでしまった。すぐに身体に異常が現れ始め、視界の右側に髑髏マークのアイコンが表示された。


 身体が怠い。熱もありそうで寒気がしているのと同時に、全身に痛みが走り続けている。茸のモンスターが体当たりをしてきたが、体が思うように動かずまともに食らってしまう。これはマズイ、頭の中で警鐘が鳴り響いている。体が動かないならそれ以外で倒すしかない。


「ファイヤアロォォォォオオオ!!」


 《ファイヤアロー》を連続で放ち続ける。今使える魔法の中では、水や風より火の方が効果的だろう。相手は何て言ったって茸、植物は燃えるからね。何発撃ったかわからないが、いつのまにか茸のモンスターは灰になって消えていた。


 頭が上手く回らないなか、なんとか《道具》から毒消草を取り出して口に放り込む。毒消草を食べると身体から痛みが消え、だるさも無くなり髑髏のアイコンは消滅した。毒は無事に消えたようだ。しかし、今のは危なかった。手元に毒消草がなければ解毒できずに、死んでいたかもしれない。ダンジョンに来る途中で、受けていたクエストの薬草を採取してたら、毒消草もいくつか見つけたので採取しておいたのである。一応体力も減っているので薬草もいくつか食べておく。使った薬草はまた街に帰るときにでも採取しておこう。


 魔法を連発してしまったので少し休憩する事にした。体力は薬草で大丈夫だろうが魔力が怪しい。休憩ついでについでにスキルを確認すると、やはり新しく《回復魔術》が出現していた。回復は薬草を使ったので分かるが、解毒系のスキルが見当たらないのを見ると、《回復魔術》の中にありそうだ。そこでスキルポイントが増えているのに気づき、確認するとレベルが11に上がっていた。


 今まで気にしていなかったが、スキルポイントの増えた量が多い。冒険者ギルドでプリセラさんに聞いた話だと、1~5、6~10、11~15といった形で、レベルが上がった時のスキルポイント取得量が上がっていく。そのスキルポイントが聞いていた内容より5倍程多いのである。


 これもまさか勇者の称号の恩恵なのかもしれない。ちょっと街に戻ったら、勇者についてさりげなく聞いてみよう。


 スキルポイントが増えたが、今回は《回復魔術》だけ取得して他は残しておこう。ただ、もし本当に取得スキルポイントが他の人と違って5倍貰えるなら、色々なスキルを取得しても余裕が出そうだ。今はまだレベルが低いから総量が少ないが、レベルが上がっていけばかなりの差が出るはず。レベルの上限があるかわからないけど、もしかすると全スキル制覇とかもできるかもしれない。


《回復魔術》は《手当》と《解毒》が使えるようになる。レベルが上がるほど回復量が上がり、使える魔法の種類が増えるらしい。


 やはり《解毒》は《回復魔術》に含まれていた。これで茸のモンスターも怖くない、はず。毒を食らったとしてもすぐに《解毒》を使えばいいだけだ。だけど、できれば毒はもう受けたくないな、風邪みたいに上手く頭が回らないし、身体中怠いし痛いしでうんざりだ。


 そういえば《風魔術》に《換気》があったが、胞子を撒き散らされた後に使ったらどうなるんだろう。次に茸のモンスターに出くわしたら試してみよう。食らう前の《換気》と、食らった後の《解毒》の二段構えで大丈夫だろう。


 その後茸のモンスターに遭遇して無事リベンジに成功した。《解毒》を使わずとも毒の胞子攻撃をバックステップで避けた後、《換気》をすると毒の胞子が消えてなくなり、周辺の空気ごと綺麗になったのだ。しばらく茸のモンスターの動きを観察してみたが、胞子攻撃は連続で放てないらしく、使用後はずっと体当たりをしてきた。時間が経つと再び胞子を撒き散らしてきたので、やはりクールタイムみたいなのがありそうだ。次から初対面のモンスターに遭遇した時には、迂闊な行動をしないように気を付ける事にしよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ