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装備屋のおっちゃん

 無事ギルドカードを作った俺は、フィーリアの街を拠点にするために宿を探すことにした。だがその前に、街に入るのに所持金をほとんど使ってしまったので、お金を手に入れるためにギルドのクエストを眺めていると、そこへプリメラさんがやってきた。


「クエストなら最初は採取系を選んだほうが良いですね。ショウジさんなら討伐系も大丈夫そうです。あと、モンスターを倒したときのアイテムとかは冒険者ギルドで買取しますよ」


 との事で、アイテムを買い取ってもらうため《道具》を開いて手持ちのアイテムを確認する。スライムの破片×9とスライムゼリー×1、糸×15くらいしかなかった。聞いてみると単価でスライムの破片が鉄貨1枚、糸が鉄貨2枚、スライムゼリーがなんと銅貨5枚だという。スライムゼリーはちょっとしたレアアイテムみたいで、食用としてそこそこの値段で流通しているらしい。結果銅貨5枚と大鉄貨3枚、鉄貨9枚になった。


 ついでに採取クエストを受けておく。内容は町周辺の草原に生えている薬草の一種だ。後はプリメラさんに宿の相場を聞いてみた。まだ冒険者になったばかりの俺に泊まれそうな所は安宿しかなく、一泊銅貨3枚らしい。通常ならばもう少し高いらしいが、有難い事にギルドカードの提示で割引されるらしい。ギルドカードは他に店でも、提示すると同様に割引があるとの事だ、ギルドカード様々である。


 プリメラさんに別れを告げて、冒険者ギルドを出る。目的地は東の商業区域だ。装備屋や道具屋など見ておきたい。武器はあるが防具がないし、いざという時の回復薬とかも欲しい。買うお金はないけど、お金を貯める為に目標金額って必要だよね。東の商業区域に入るといろいろな店が其処彼処に見え始めた。俺は来るときに見た、装備屋を見つけると中に入って行く。


「いらっしゃい」


 入り口近くにあるカウンターから声がした。そこにはニット帽みたいな被り物をした、ちょび髭のおっちゃんが座っていた。店内を見渡すと他に人はいないみたいで、随分閑散としていた。


「この時間は大体どいつもダンジョンに行ったりしていねーよ。たまに装備の手入れで人がくるくらいだ」


 確かに今は昼前くらいだ。朝からダンジョンに行ったとして、大体戻ってくるのは夕方とかそのくらいなのだろう。明日の俺の予定もそんな感じでダンジョンに行くつもりだ。


「よろしければ買うお金はないんですが、少し装備を見させてください」


「おう、勝手に見て行け。だが、欲しいのがあったらそのうち頼むぜ」


 お言葉に甘えて装備を見て回る。武器は短剣・片手剣・両手剣・槍・斧・鈍器・杖があった。《剣術》は短剣・片手剣・両手剣の3つ用の戦闘スキルだから、他の槍・斧・鈍器・杖に関しても《剣術》と同じような戦闘スキルがありそうだ。スキル獲得は簡単だけどブラームスさんが言っていた通り、スキルポイントが厳しそうなので取らないけど、何かあった時いつでも取れるように、一通りの武器で一度戦ったほうがいいかもしれない。


 防具に関しては色々ありすぎてどれがいいのかわからない。冒険者ギルドで見た全身鎧もあれば、軽さ重視の軽装もあった。ここはおっちゃんにアドバイスをもらったほうがよさそうだ。


「すいません、さっき冒険者になったばかりなんですが、何か初心者におすすめとか伺ってもいいですか?」


「ふむ、あんちゃん冒険者になったばかりか。試験に合格しているからそれなりに動けるんだろうが、装備は今何を使ってるんだ?」


「防具はなくて武器だけ持ってますが、これです」


 俺はツインダガーを取り出しておっちゃんに見せる。おっちゃんは髭を撫でつつそれを眺めていたが、何かを発見したのか目を見開いて驚いていた。


「あんちゃんこの武器どこで手に入れたんだ?とても冒険者なりたてのやつが持てる物じゃないぜ」


「これってそんなすごい武器なんですか?」


「すごいのなんのって、この武器は《特別級(ユニーク)》かそれ以上の能力がありそうだぞ。うちにおいてある装備は《貴重級(レア)》も少しはあるがほとんどそれ以下の装備しかないぞ」


 おっちゃんはどうやら《鑑定》を使ったみたいだ。装備にはランクがあって、鑑定などでも表記はされていないが、能力値によって上から《神話級(ゴッズ)》《伝説級(レジェンド)》《特別級(ユニーク)》《貴重級(レア)》と区別されているらしい。そのなかでもツインダガーはかなり上位と言っていいくらいの《特別級(ユニーク)》並みの能力値だそうだ。


「武器はそれでいいな。防具はとりあえず何かあったほうがいいな。あんちゃんの戦闘スタイルはなんだい?」


「一応魔法剣士ですかね。前衛で戦いつつ魔法も使って戦うつもりです」


「魔法剣士とは珍しいな。魔法に剣術と取得するのが大変だろう。スキルポイントも厳しい大器晩成型じゃないか」


 魔法剣士は序盤は普通の剣士と一緒だが、中盤スキルポイントが足りなくてなかなか魔法のレベルを上げられない。だが終盤はレベルが上がってくると貰えるスキルポイントも増えるので、魔法のレベルにもスキルポイントが振れるようになり、強さが格段に伸びていくのだ、とブラームスさんに教わった。


 普通の冒険者は生死がかかっているダンジョンに行くのに余裕があるはずない。魔法剣士は後半から強くなるが、それなら最初から強くなれる別のタイプの方が良いに決まっている。


 まさかスキルポイントがそんなにキツイとは知らずに、《剣術》とか各属性の魔法を取っちゃって、後に戻れないなんて言えない。


「それならどちらかといえばスピードタイプか。重たくない皮製の装備が良いだろう。ちょっと待ってろ」


 そういうとおっちゃんはカウンターの奥へと消えていく。ガサゴソと何やら漁っている音が聞こえてきた。しばらくするとおっちゃんが何かを抱えて帰ってきて、それをカウンター広げた。


「おっちゃん、これって……」


「魔法戦士になるんだろ。冒険者なりたては何かと危なっかしいからな。ちゃんとした防具を着けてダンジョンへ行け。それで、必ず帰ってこい」


 カウンターには皮製でできた装備が広がっていた。どうやらおっちゃんは無償で防具を提供してくれるらしい。見た目はバラバラだがきちんとした防具である。全部合わせればそれなりの値段になるだろう。何故無償でこんなに手厚い行為をしてくれるのか聞いてみたくなった。


「そりゃああれよ、あんちゃんには貸しを作っておいたほうが良さそうな匂いがするんだよ」


 との事だ。まぁ、ツインダガーが《特別級》並みに強いらしいし、おっちゃんの商売人の勘は何かを感じ取ったのだろう。防具もないし、ここはお言葉に甘えておこう。


「それじゃあ、おっちゃん。これらはありがたく使わせてもらいます。またお金が貯まったら装備を買いに来ます」


「おう、期待してるぞ。とりあえず防具着けてみたらどうだ?」


 おっちゃんに勧められて装備してみる。皮製の防具はそこまで重くなく、動きを阻害しないように作られていた。見た目はバラバラだが守られているという安心感がある。これならまだ一度も受けてはいないが、多少モンスターに攻撃されても大丈夫な気がしてくる。


「おっちゃん、本当にありがとう。これでダンジョン行ってみる」


 俺はおっちゃんに挨拶をして店を出た。本来ならこの後街を見てまわり、アイテムの相場とかを調べる予定だったけれども、予定外に入手した防具を試したくなった俺は、予定を変更してダンジョンへ行くことにした。

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