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冒険者ギルド

 冒険者ギルドの中に入ってみると、たくさんの冒険者で賑わっていた。全身鎧の人や、要所だけを守る軽装の人もいた。俺はカウンターの方へ行くと中にいるお姉さんに話し掛けた。


「あの、すいません。冒険者になりたいんですけど」


「冒険者ギルドへようこそ。ギルド加入希望ですね、ではまずこちらの用紙にお名前と、ご希望の戦闘スタイルのご記入をお願いします」


 どうやら冒険者ギルドに加入するためにはこの用紙に名前とかを書かなければいけないらしい。見た所文字みたいな物が書いてあるが日本語ではなかった。しかし、意味は分かった。頭の中で自然に翻訳されているみたいだ。そのまま名前を書こうとすると手が勝手に動いてこの世界の文字っぽいものを書き始めた。一応戦闘スタイルは前衛にチェックを入れておいた。書き終わった物を受け付けのお姉さんに渡す。


「えーと、ショウジ・カグラザカ。であっていますか?珍しいお名前ですね。あとは前衛を希望ですね、少々お待ちください」


 日本の名前は珍しいのだろうか、受付のお姉さんが確認してくる。間違ってはいないので頷いておいた。受付が終わると次は試験があるらしい。受付のお姉さんにそのまま案内してもらって試験場まで向かった。道中話していた事からわかったことは、このティーリアの街は他の街より冒険者ギルドが大きく人も良く集まるのだとか。特に西の山々を超えると魔族領になるらしく、魔族との戦争時は人族の最前線の街になるらしく、戦える者の育成に力を入れているみたいだ。


 試験場に着くと中年くらいの禿頭で全身筋骨隆々の男が立っていた。どうやらこの男が試験官らしい。受付のお姉さんは男に引継ぎをするとがんばってね、と言って帰ってしまった。


「ショージ・カグラザカ、儂が担当試験官のブラームスだ。これから試験を始めさせてもらうが、冒険者というのはモンスターと戦うことが多い。強くなければまず死ぬ。そのために必要最低限の強さはなければギルドへの加入は認められない。まずは君の力を見せてもらおう、好きなようにかかってきなさい」


 そう言うとブラームスさんは拳を握り、腰を落として構えた。見るからに隙がない、滅茶苦茶強そうだ。しかし戦わないと力量が見られないというならば仕方がない、俺はツインダガーを取り出して構えた。こちらが準備できたのを見るとブラームスさんは手招いてこちらを誘ってくる。それじゃお言葉に甘えてこちらから攻めさせてもらおう。


 ブラームスさんに向かって駆け出す。ただ近付くだけでは対処されると思い、同時に《ファイヤアロー》を5個生成し時間差で放つ。ブラームスさんは少し驚いた顔をしたが、拳ひとつ振るうだけで《ファイヤアロー》を掻き消していく。だがこちらも《ファイヤアロー》が着弾しているタイミングで斬りかかるが、ブラームスさんは体を少し捻るだけで躱されてしまった。続けて何回か斬り込むが、難なくこれも躱されていく。外見からしてパワー型かと思ったら意外と素早く、レベル差等もあるだろうがこちらの攻撃が全く当たらない。


 せめて一撃くらい入れたい。何かいい手はないか模索するが、なかなか良い案が思い浮かばない。いや、ここはひとつ試してみよう。俺は一旦後退してブラームスさんとの間合いを取り、《ステータス》を開いて残っていたステータスポイントをすべてAGIに注ぎ込んだ。これで今までよりは速度が上がり一撃入れられる可能性も上がるだろう。後は相手の意表をどれだけつけるかだ。


 ブラームスさんは俺が何かを仕掛けてくるのを待っているみたいで、注意深くこちらを窺っている。これが通らなければもう何も策は思いつかないだろう。俺は一呼吸して先程と同じ様にブラームスさんへ全力で突っ込む。《ファイヤアロー》も5個生成し時間差で放つ、これもさっきと同じだ。だが急に速度が上がった俺に一瞬だけブラームスさんは驚いていた。相手の間合いに入る直前に急停止し、《アースシールド》を使い相手の視覚を遮断するのと同時に、更に《ファイヤアロー》を《アースシールド》の上から何発も打ち込む。その間に俺は《アースシールド》の右側に出てツインダガーの片方を投擲する。再び《アースシールド》の裏に戻り、更に左隣に《アースシールド》を繋げて出現させる。左から攻めると見せかけてターンし、再び右に出て渾身の《スラッシュ》を放つ。ブラームスさんは避けられないと判断すると手甲で防御した。結果一撃入れる事はできなかったが、相手に当てる事には成功した。


「がはは、いいぞ坊主。試験でこの儂が避けれずに防御させられるとは久しぶりだわい。試験はこれで終了としよう、合格だ」


 このまま続けてもどうにもならなかっただろう。俺は全力を出し切り、魔法も使い過ぎて魔力切れでフラフラだ。立っていられずそのまま仰向けに倒れ込んだ。


「それにしてもショウジと言ったか、確か申請書には前衛希望となっていたはずだが、魔法も火と土の二系統使えるとは、見た目の割にかなりの使い手だのう」


 試験中にもあったがブラームスさんは俺が火と土の魔法を使った事に驚いているみたいだ。レベルさえ少し上がれば、獲得はそう難しくはないと思うのだが。俺はブラームスさんにいくつか聞いてみる。


「魔法って二系統も使えるとすごいんですか?」


「まぁな。魔術師志望ならともかく、坊主みたいな前衛志望だと、魔法の取得をするとしたら中級者くらいになってからだな。何故かと言うと、スキルポイントに余裕がないからだ。低レベルの魔法なら取れなくはないが、高レベルに出来る程ポイントがない。それに加え、これは接近戦などのスキルにも同じ事が言えるが、魔法のスキルを取得するための修練に、かなりの時間が必要というのがある」


 つまりは、時間をかけて折角取得したスキルなのに、スキルポイントが足りないせいで、レベルをまともに上げられないという事か。あれ、俺あんまり労力かけずにスキル取得出来たけど、普通の人は取得するまで時間がかかるのか。これは勇者の称号がスキルの取得のし易さに、何か関係しているのだろうか。


「折角魔法が二系統も使えるんだ、魔法剣士を目指してみたらどうだ?先程の魔法の使い方といい、接近戦の身のこなしといい、良い線いっておったぞ。ギルドの決まりだから初級冒険者からだが、下級冒険者くらいの実力くらいはあるしのう」


 これは水と風の魔法も使えます、とは言い出せそうにない雰囲気だ。勇者っていうのも様子見でしばらく秘密にしておくか。そういえばこの世界の勇者って何をするんだろう。そのうち機会があったら調べよう。あれこれ考えているとブラームスさんが待ちくたびれた様で声を掛けてきた。


「ショウジ、いつまでも寝ておらんで、ギルドカードを作るから付いて来い」


 ブラームスさんは踵を返して部屋の外へ向かっていく。俺は体を起こして立ち上がりツインダガーの片割れを回収して、先を行くブラームスさんの後を追いかけて部屋を出た。しばらく歩いて着いた部屋には、最初に受付をしてくれたお姉さんが待っていた。


「ショウジさん、お疲れ様でした。無事合格したみたいですね」


「がはは、プリメラちゃん。この儂が一本取られていまったわい、ショウジはなかなかの逸材だぞ」


 受付のお姉さんはプリメラさんというらしい。プリメラさんはブラームスさんの話を聞いて驚いていた。冒険者ギルドに加入希望の新人で、ブラームスさんに攻撃を当てた人は極僅かしかいないらしい。期待の新人ですね、と言われてしまった。


「それじゃ登録始めますね。こちらのカードの置いてある装置に手を置いてください」


 そこにはカードが置かれた台座みたいなものがあり、その上に手を置く事によって、登録者の魔力をカードに記録する物らしい。魔力は人によって違いがあり、この世界では指紋や声紋の代わりになっているみたいだ。ギルドカードがあればギルドのクエスト報酬等は、これを通して持ち主の《道具》に自動で収納される様になる。


「はい、登録完了しました。これでショウジさんは初級冒険者です」


 俺は渡されたギルドカードを《道具》にしまう。これで街への出入りは無料になった。しばらくはこの街を拠点にして、あのダンジョンを攻略する事にしよう。

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