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戦闘指導

 扇子を構えるイザリナに無策で斬り込む。無策とは言ってもイザリナがカウンター狙いなのは分かっているのでそれを警戒しつつ攻撃を繰り出していく。


 流石はアダマンタイト製の扇子なだけあって、現時点ではかなり攻撃力が高いと思うツインエッジ改も見事に受けきっていた。


「もっと!もっとですわ!でないとわたくしの防御は貫けませんですの!」


 艶のある声でもっと攻めてこいと要求してくるイザリナ。俺は出来る限り攻めているつもりなのだが、イザリナは左右の扇子を上手く駆使してこちらの攻撃を完全に防いでいる。二刀流の点で手数はほぼ一緒のはずで、カウンターをされないようにしてはいるが、それを凌ぎきっているイザリナの実力はかなりのものだった。流石は魔王の幹部、八柱将と名乗るだけはある。


 だがイザリナが諜報メインだとするのならば、戦闘メインの他の八柱将達はどれだけ強いのやら。そしてそれらが3人も攻めにやってくるというのだから先が思いやられる。全軍で攻めてこられていたら確実に負けていた気がする。


「ちゃんと集中してくださいまし!何か考え事をしながらわたくしの防御を破れると思ったら、それは甘過ぎですわ!」


 その通りだ。今は余計な事を考えている暇はない。イザリナの防御をどうやって崩すかを考えなければ。


「イザリナ硬すぎだよ!どうやったら崩せるか全く皆目見当が付かないね!」


「ふふっ。わたくしの防御の腕は魔族の中でもトップクラスではないかと言われてますの。ですからこの模擬戦でわたくしの防御が崩せれば、他の方達にもショウジ様の攻撃は通じると思って頂いても大丈夫ですわ」


 魔王、そんな重要な人物を手放して良かったのか?と一瞬思ってしまったが、戦闘中なのを思い出してそんな思考を頭から追い出す。


「それなら何が何でもその防御を崩させてもらわないとね!」


「ええ、是非そうして頂きたいですの!」


 剣と扇子が幾度となく交差し、その度に激しい金属同士の衝突音が部屋の中を木霊する。


「ライトニングテンペスト!!」


 このままでは埒があかないと俺の使える最上級の技を繰り出す。だがイザリナは高速で繰り出されるその連撃をものともせずに防いでいく。


「技に頼っては駄目ですの。モンスター相手ならまだ良いでしょうが、対人で相手が熟練者ですとその技は知られているものと思った方がよろしいですわ。ですからこうやって全て防ぐ事だって造作もないのですわ。そして隙が出来る所も知ってますからこうやって!」


 《ライトニングテンペスト》の攻撃の繋ぎ目、その一瞬の隙をイザリナは逃さずに攻撃を繰り出してくる。俺はそれを避けられるはずもなく、イザリナの攻撃をまともに喰らってしまう。


「がはっ!」


「攻撃も簡単に入れられるのですわ」


 内容としては単純で簡単に言っているが、それって難しいよね。でもなんとなく分かった。ダスルフ達とやった事と同じだ。俺が連携のパターンを見つけてそこでカウンターで仕掛けたように、相手の戦い方の癖等を見つけて、そこから勝機を見出す。それまでは防御に徹するというのがイザリナの戦闘スタイルなのだろう。


 という事は俺が攻撃するという主導権を持っているわけだから、それを防御するイザリナの行動を予想して避けられないような体勢を作り出し、そこを決めるしかない。


 うん、無理。そういう先の先を考えて行動するやり方は俺苦手なんだよね。ソフィアのほうがそういう搦め手系のやり方は得意なんだよ。だからといってここで諦めてはイザリナの防御を崩すのは出来ないだろう。


 そして俺は閃いた。地上では体勢を支える為に足をあまり使えないが、ここは空中だ。体勢の制御は全て《飛翔魔術》がやってくれる。俺は自由に《体術》で足の攻撃を繰り出せば良い。そうすれば手数でイザリナを上回り、その堅牢な防御を突破出来るのではないだろうか。


 やってみる価値はある。


「攻めてこないのを見ると、降参でもされますの?」


「いや、今突破口を思いついたばかりでね。まだ付き合ってもらうよ」


「まあ、それは楽しくなってきましたわ」


 ニヤリと笑う俺に対して、イザリナも扇子で口元を隠してはいるがその口角は上がっている事だろう。


 再び間合いを詰めてツインエッジ改をイザリナに水平に叩き込む。もちろんイザリナはそれを対処し、更に続く上から振り下ろしたもう片方のツインエッジ改をも完全に防いでみせる。だがここで同時に下段の蹴りを放つ。意識が完全に上に行っている所を突いてみた。これはイザリナも完全に予想外だったのか、俺の蹴りはイザリナの足を完全に捉えた。 


「ふふっ、素晴らしいですわ。完全に想定の範囲外からの攻撃でしたの。体術系のスキルもお持ちでしたのね」


 一旦イザリナが間合いを取って仕切り直し、今の攻撃を褒めてきた。


「俺も剣でばっかり戦っているから忘れてたんだけどね。空中なら両足とも攻撃に回せるし、流石に分かっていたとしても防御が間に合わないんじゃないかな」


「かもしれませんわ。ですがやってみないとどうなるかは分かりませんわ」


 イザリナが手招きして俺に攻めてこいと促してくる。それを受けて俺はイザリナの希望通りに攻めに行くのだった。

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