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飛翔魔術と強化魔術の練習

 ティーリアの南門でアペル達と合流した後、俺達はダンジョンに向かった。


 目的の階層は少し手前の26層の草原だ。ここにはハーピーとグリフォンが居て、両者とも空を飛ぶモンスターだ。まさに《飛翔魔術》を試すのにはもってこいの相手だった。


 アペル達も屋敷で《飛翔魔術》の練習をして、自由自在とはいかないまでもゆっくりとだが動き回れるようになっていた。


 だがその前に《強化魔術》の練習もするべく、《武器強化》の詠唱を皆に教えた。常時《武器強化》しておけばそのうち《強化魔術》を取得出来るようになるだろう。


「では私も飛んでみましょう」


 シェリーが《飛翔》の詠唱を開始する。シェリーには冒険者ギルドに残ってもらっていた為、《飛翔魔術》はこれが初めてだった。


 合流した時には既にカトリーナとラウリーは《飛翔魔術》を取得していたので、2人にはセイン達の練習を見てもらい、ソフィアにはアペルの練習を見てもらっていた。


 シェリーの詠唱が完了するとふわりとシェリーの身体が浮き上がり、フラフラと少しずつ移動をし始めた。


「これは……なかなか……難しいですね」


 完璧超人っぽいシェリーでも、《飛翔魔術》の制御にはやや苦戦しているようだった。


 それでも俺よりは動けている。俺はすぐ解除してスキルの取得に走ったから、今ではもうスキルの補助によって自由自在に空を飛べる。本当に勇者の恩恵様々だ。


 暫く練習を続けているうちに、制御のコツを掴んだシェリーが《スキル》の一覧に出現した《飛翔魔術》を取得する。


 それに続いてアペルやセイン達も取得していき、全員《飛翔魔術》を取得する事が出来た。


「これが空を飛ぶって事ですかー。凄く気持ち良いですねー!」


「これだけで冒険者になって良かったと思えるな!」


 クレアがはしゃいで空中を飛び回り、それにセインも同意していた。


「2人ともはしゃいでないで移動開始するよ」


「「はーい」」


 はしゃいで飛び回る2人を注意し、俺達は《飛翔》に慣れる為にそのまま飛んで移動した。


 遠くに3体で行動しているハーピーを見つけ、距離を詰めると同時に空中戦を挑もうとするが、遠距離からハーピーが《ウィンドトルネード》を放ってきたので、散開してそれを回避する。


 そのまま前衛でハーピーを取り囲むように展開して攻撃を加えていく。


 ハーピーは前後左右と上を抑えられ、その場で戦うか地上へ逃げるしかない。後者は空中で戦いを挑むハーピーにとって地の利を差し出すようなものだ。だからと言って前者の空中で囲まれた状態で戦うのも部が悪いだろう。


 ハーピーは地上へ逃げる事なく空中で戦う事を決断したようで、爪の伸びた鳥のような足を繰り出してハワードに攻撃を仕掛けてきた。


 ハワードは盾を使いそれを防ぎ、カウンターで腐龍の骨剣を一振り。その一撃は容易くハーピーの羽を斬り落とした。31層のメタルリザードの装甲を容易く斬れる斬れ味を持った剣だ。その威力はハーピーでは軽く撫でるだけでも致命傷を負わせてしまうだろう。


「武器が強すぎてあまり練習にならないですね」


 ハワードに続いて他の2体も倒した所でセインが軽く不満の声を口にする。


「確かにそうかもね」


 代わりに練習が出来そうな場所はないだろうか。空中戦みたいに上下に前後左右の全方向を警戒するような戦闘……そうだ、33層は海のフィールドだったはず。水中戦なら空中戦と似たような感覚で戦えそうだ。28層のクラーケンの時に、触手の攻撃が様々な方向から繰り出されるのを体験している。あの感じであれば良い練習になりそうだ。


「よし、それならダンジョンの攻略をしつつ、33層に行こう。33層は海のフィールドだから感覚的には地上戦より空中戦に近いはずだし、ハーピーより強いモンスターが出るはずだから練習になると思う」


 思いついたら即実行と空を飛んでホワイトゲートを目指した。そして一度ダンジョンの外に出た所で俺は重要な事を忘れていたのに気付く。それを指摘してくれたのはシェリーだった。


「そういえば、クレアさん達の人魚の腕輪がないのでは?」


 そう、そうなのだ。クレア達は飛び級で31層から始めたので、間のサラマンダーやセイレーンから素材を入手しておかないと、この先のダンジョンに必須な装備がない。サラマンダーは後日で良いとしても、33層に行くのであれば人魚の腕輪は必須だった。


「忘れてた。それなら時間的にこのままハーピーを倒していた方が良いのかも……」


 セイレーンを倒しても貝殻は貰えるが1個で2人分だ。なので追加で必要になった数が5個、3体のセイレーンを倒さなくてはいけない。セイレーンは倒した後3時間程またないと再出現しない。すると時間的に今日は1体か2体しか倒せないだろう。明日もセイレーンに時間を取られるとなると今の状況では躊躇ってしまう。


「それでは私とクレアさん達でセイレーンを倒してきましょう。ショウジ様は33層へ行けるように32層の攻略をお願いします。セイレーンであれば海に落ちないように《飛翔魔術》を使って戦えば練習にもなるでしょうし、また別行動になってしまいますがどうでしょうか?」


 シェリーの提案の別行動、それはつまり俺とソフィアとアペルの3人で32層を攻略するという事だった。今の状態であれば大丈夫だと思うが、増えた人数がまた減ってしまうのに抵抗を感じる。とはいえ31層でシェリー達は3人で別行動をしていたのだから大丈夫そうか。


「分かった。それでいこう」


 セイレーンと戦うクレア達の事はシェリーに任せ、俺とソフィアとアペルは3人で32層へ向かったのだった。

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