強化魔術
とりあえず俺とソフィアは冒険者ギルドに再度向かった。他の皆は《飛翔魔術》の練習をしたいだろうと思って置いてきた。襲撃の時までには使いこなせるくらいになっておいてもらわないと困るし、俺とソフィアがクルガンさん達に《飛翔》を実際に使ってみせれば大丈夫だろう。
冒険者ギルドに再び入ってプリメラさんと合流して、再びクルガンさん達の待つ部屋に案内される。
「すいません、お待たせしました」
「おかえりショウジ君、待ってたよ。それで何か成果はあったのかい?」
「はい。こんな感じです」
俺とソフィアは覚えたての《飛翔》を使って軽く浮くと、部屋の中を飛び回ってみせる。
「ははっ、まさかこうも簡単に対抗策を見つけてくるとはね。本当にショウジ君達は素晴らしいね。《飛翔魔術》だと貴族の魔法使い達が何か言い出すかもしれないけど、こっちの方でなんとかしておくよ」
「儂も坊主や嬢ちゃんには驚かされてばかりだぜ。嬢ちゃんは魔法の威力もあるから、今回の防衛戦では大いに期待してるぜ」
「分かってる。最高火力で魔法を撃ちまくれば良いんでしょ」
「ああ、あの時の《ライトニングボルト》みたいなのが放たれれば、いくらなんでも魔族だってひとたまりもないだろう。だけどそう何回も撃てるのか?」
「大丈夫、問題ない」
ブラームスさんの疑問にソフィアが即答する。魔力増幅を知らないブラームスさんは、きっとソフィアの魔力切れを心配してくれたのだろう。
「そいつは尚更助かるな。それなら嬢ちゃんには固定砲台をやってもらうか。他の奴らに嬢ちゃんを守らせる」
「必要ない。自分の事は自分で守れる。人が余っているなら私より他の後衛の護衛に回すべき」
「うん、ソフィア君の言う通りかな。僕は実際に見た事はないけど、ブラームスの言っていた通りの威力で、更に連続で放てるのなら、流石の魔族でも近付けないだろう」
確かに魔族の率いるモンスター位なら軽々と消滅させられるだろう。問題は魔族の方だ。どれだけ強いかが分からない。
いや、分かるな。イザリナの《ステータス》を見るか、模擬戦をすれば大体の実力が分かる。流石に全員同じ強さという事はないだろうから、イザリナより強い相手も居ると考えたとしても参考には出来るだろう。
「イザリナ、ちょっと鑑定させてもらっても良い?」
「ええ、構いませんわ」
イザリナが指に装着されていた指輪を外したので《鑑定》してみる。
やはりレベルや《ステータス》の能力値では若干劣っているが、その辺りは《スキル》の多彩さで補るだろう。
だが気になる魔法があった。
「イザリナ、この《強化魔術》って何?」
「これは魔族側ではよく知られている魔法ですの。魔力を使って装備や自分の身体能力を強化したり出来るのですわ」
そんな魔法があったとは……是非教えて欲しい。
そうなると魔族としての元々の身体能力の高さ、特に魔力が多い傾向らしいく、それを使用して更に装備や身体能力を強化されるとなると、こちらも《強化魔術》を使えないとかなりマズイ。
《ステータス》の能力値の差だけではなく、その《強化魔術》によって手も足も出なくなる可能性がある。
「そういえばイザリナに渡していなかったね。これプレゼント」
先程の《鑑定》をする時に思い出したのだが、イザリナにはまだミスリルの指輪を渡していなかった。これを渡すついでに教えてもらおう。必殺プレゼント大作戦だ。
「まあ!これをわたくしに?嬉しいですわ!」
「良かったらその《強化魔術》を教えて欲しいなーなんて」
「ええ、そんな事でしたら構いませんわ。詠唱は……」
イザリナ俺に《強化魔術》の魔法、《武器強化》の詠唱を教えてくれる。
それを唱えてみると、ツインエッジ改に魔力が流れていくのを感じた。
どの位強化されたのか《鑑定》して確認してみる。すると、《武器強化》されてない時に比べ1.5倍の攻撃力になっていた。
《強化魔術》のレベル2では《防具強化》、レベル3で《身体強化》に至る。もちろんスキルポイントも高めだったが、それを支払ってでも優先的に取得した方が良いくらいに強化されている。
一度使用したので勇者の恩恵により《スキル》の一覧に《強化魔術》ご現れる。俺は早速レベル3まで《強化魔術》を取得した。おかげでスキルポイントの余裕がなくなった。
だがそれ程までに価値の高いスキルだ。近接格闘する者にとっては必須と言っても良い。
ただ、ちょっと新しいスキルが増えすぎて、本番の日にまでは身体を慣らしておかないといけないだろう。今日から早速実践練習だ。
「クルガンさん、ブラームスさん。俺達は《飛翔魔術》と《強化魔術》に身体を慣らさないといけないんで、今からダンジョンに行ってきます。緊急時の連絡要員にヨシノっていう女の子を冒険者ギルドに寄越しますので、何かあったらよろしくお願いします」
「ああ、分かった。どうやらショウジ君達がこの戦いの鍵になりそうだ。頼んだよ」
クルガンさん達に作戦は任せ、ヨシノは冒険者ギルドで待機の指示とアペル達にはダンジョンに向かう為に町の南門で集合と《念話》で知らせ、俺達も南門へと向かったのだった。




