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招集と作戦会議

 俺達はギルドマスターのクルガンさんに呼ばれ、冒険者ギルドまでやってきた。


 建物の中に入りプリメラさんの案内で奥の部屋へ通される。そこは昨日と同じ会議室のような部屋だった。


「いやあ、待っていたよショウジ君。急に呼び出して申し訳なかったね。襲撃まであまり時間もないから単刀直入に聞くけど魔族のイザリナさんはどちらのレディーかな?」


 部屋の中には既にクルガンさんとブラームスさんが待機していた。そして軽く挨拶をするとすぐに本題に入った。


 事後報告となってしまったが、冒険者ギルドに魔族の襲撃の事を伝えたと、イザリナには既に移動中に説明してあった。


「わたくしが魔王様の八柱将の1人、サキュバスのイザリナと申しますの。今はショウジ様のとお伝えした方が良いかもしれませんが、どうぞよろしくお願い致しますわ」


 イザリナが一歩前に出て帽子を取り、スカートを摘まみ上げながら優雅な仕草で、クルガンさん達に自己紹介をする。


「これはこれはご丁寧にどうも。まさか魔族にこんな見目麗しいレディが居るとは、魔族も捨てたものではないね。僕はここのギルドマスターをやっているクルガンだ。よろしく。それで早速で悪いんだけど、魔族の襲撃の情報を教えては貰えないだろうか?」


 時間がないのだろう。クルガンさんが単刀直入に本題に入った。


「ふふっ。そんなお世辞を述べれば私が情報を出すとでも?随分と甘く見られてらっしゃるのですわね」


 あれ、前に俺に教えてくれた時は自分から情報を開示してくれたのに、今はクルガンさんと駆け引きみたいなのをしている。……もしや楽しんでる?


 俺から話しても良いのかもしれないけど、イザリナの点数を少しでも稼ぐ為には本人に言わせた方が良いだろう。


「あまり時間もないし、俺に教えてくれた事をもう一度皆に教えてもらえる?」


「ああん、折角この冒険者ギルドのマスターさんと楽しくお話していましたのに……はっ、もしかして嫉妬してしまいましたの?」


「いや、違うから。それよりちゃんと説明をお願い」


 何を勘違いしたのか知らないが、すぐに否定して早く説明するよう先を促す。


「ショウジ様にそう言われてしまっては仕方がありませんわ」


 そしてようやくイザリナが皆に襲撃の内容を説明し、それに加えて八柱将の詳細も明らかにしていく。


 イザリナの情報からすると、八柱将の中でも攻め、守り、諜報と役割が別れている。もちろん全軍で突撃とかなったら攻めも守りも関係ないだろうが、今回の襲撃でやってきそうな八柱将は攻め担当の3人でまず間違いないだろうとの事だ。


 1人目はイザリナから良く名前が出てきていたドルチェという女だ。かなり好戦的な性格らしく、強い奴が偉いという事で魔王に従っている人物だ。見た目はライオンの獣人族に似ているらしいのだが、違うと本人は否定している。


 2人目はレヴィリアという下半身が蛇の女だ。イザリナが言うにはこのレヴィリアも出来れば関わりたくない人物なのだが、いつも細かい事でイザリナに突っかかってくるらしい。


 3人目はゼブロースという羽を持っていて空を飛べる男だ。残念ながらゼブロースに関しては、イザリナ自体があまり接点がないらしく、情報はあまり出てこなかった。


 基本戦術は地上をドルチェの部隊が、空からゼブロースの部隊が、そして後方からレヴィリアの部隊が魔法を使って攻めるらしい。もちろん八柱将にはそれぞれ魔族の部下が何人か居て、更にその下にはモンスターが魔族達によって統率されている。


 イザリナは諜報担当だったので部下は少なく、それが初見の時のダークネスウルフ達だった。


 それ以外で八柱将が出てくるとしたら、イザリナと同じ諜報担当のデビアスという男らしいのだが、イザリナは彼と遭遇したことがないとの事で、全く情報が皆無だった。他の八柱将の間でも謎の男で、デビアスの姿を知っているのは魔王とラゴモスくらいではないかとの事だった。


 イザリナはそんなデビアスは表舞台に出てこないだろうと推測していた。なので実際は3人の八柱将の相手をどうするかで話し合いが進んでいった。


「こんな時に限ってトップクラスの冒険者がヴァナガルド王国の方へ行ってしまっているのが痛いね」


「昨日の分かった時点で連絡を送っても間に合わない。今は現存する戦力でいかに戦うかを考えないとな」


 今のトップクラスの冒険者は不在らしい。余談だがその人達は今ダンジョンの44層の攻略を終えた所らしい。最高記録は52層で、それもかなり昔の話だった。


 そこから考えると俺達の31層というのは、中級を越えてトップまでは行かないまでも、十分上位の冒険者達と並べるレベルだ。


「今代の勇者達はまだ育成途中だから戦わせる訳にもいかないし、戦える冒険者達を確保してはいるが、正直厳しい戦いになりそうだね」


「最悪、儂も戦場に出ないといけないかもな」


「ああ、その時は頼むよ」


 敵の情報を得た後は、それにこちらの戦力をどのように当てていくか悩むクルガンさんとブラームスさん。戦略的な所では俺は役に立たないだろう。クルガンさん達を信じて駒として動くだけだ。そう決意しながらクルガンさん達との会議はまだまだ続くのであった。

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