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レベル上げ

 28層まで戻ってきた俺達は、亀達を見つけては速攻で倒すという行動を繰り返していた。全力での攻撃により、一瞬で亀達が消えていくのはちょっとやり過ぎたかなとは思うものの、殲滅速度優先で経験値を荒稼ぎしていた。


「やったです。レベルアップして《死鎌術》を取得したです」


 亀達を倒し続けて数時間が経った頃、アペルが目的の《死鎌術》を取得したと報告が上がる。早速アペルは取得した《死鎌術》を亀相手に試していた。《死鎌術》のレベル1では《ソウルイーター》という技が使えるようになるらしい。


 技名はなんとも《霊体》持ちのゴースト系モンスターに有効そうだったが、残念ながらそういう能力を有した技ではないらしい。《デスハート》は一撃必殺という感じのに対し、《ソウルイーター》は強烈な一撃を4連続で敵に叩き込む技だった。


 《死鎌術》も取得した事だし今日は終わりにして帰る事にした。だがホワイトゲートの近くでソフィアとアペルが俺を呼び止める。


「またクラーケンと戦いたい。ショウジはガーゴイルで楽しんだんだから、次は私がクラーケンで楽しむ番」


「あたしもちょっとボスで《死鎌術》を試してみたいです」


 2人のリクエストに対してどうするか考える。クラーケンなら海に入れば勝手にやってきそうで、こちらから探す必要はなさそうだ。実際前回は海に入ったらすぐに襲ってきた。それに倒す時間もそんなに掛からないだろう。他の人達が倒しているかもしれないから居るかどうかは分からないが、28層に来てからというもの他の冒険者は見ていない。多分倒されているという事はないだろう。


「分かったよ。ただし、あんまり時間は掛けないでね」


「任せておいて」


「頑張るです」


 既に帰ろうとしている所に、ボスとの戦闘に時間を費やすとなると、帰りが遅くなってしまう。そうなると俺達の帰りを待っているヨシノに心配を掛けてしまうだろう。早めに済ませるようにソフィア達に伝えて2人の戦いを見守る事にした。


「どっちが先にやる?」


「それじゃ先にやっても良いです?終わったら止めまで全部任せるです」


「うん、分かった。それじゃ先で良いよ」


 2人が相談して先攻と後攻を決めていた。


「それじゃ、行くです!」


 アペルが海に入るとすぐに、前回の時と同じような高波が発生してアペルを飲み込んだ。前回はソフィアが《ウィンドトルネード》で風穴を開けてくれたから高波を回避出来たが、アペルはそのまま波に攫われ、俺達はその姿を見失ってしまった。


「アペル!?」


「ショウジ様、大丈夫です。あーちゃんはそんなにやわではありません」


 慌てた所をシェリーに窘められてしまう。だがそう言ったシェリーも、若干そわそわしていた。言葉では大丈夫だと言っていても、これでは心配しているのが丸分かりだ。


 クラーケンが姿を現わすが、アペルの姿が未だに見当たらない。本当に大丈夫なのだろうか、と思っていた所にようやく水面からアペルが顔を出した。呼吸は水中でも出来るし、水面に顔を出さなくても問題ないのだが、多分俺達が心配しているだろうと考えて一旦顔を出したのだろう。まるでその考えを肯定するかのようにアペルはこちらに大丈夫だと合図を送ってきた。その後はすぐに水中へと戻り、クラーケンと戦い始めた。俺達はそれを見守る為に海へと入っていく。


 アペルとクラーケンの戦闘は激戦だった。前回は3人で囲んでいたから触手自体も3分の1と考えると、アペルはあの時の3倍の触手相手に戦っている訳だ。触手の回避に重点を置きつつ、少しずつカウンターでダメージを与えていく。暫くしてその戦闘に満足したのか、アペルが俺達の所まで後退してきた。


『ソフィ、お待たせしたです』


『大丈夫。それよりもう良いの?』


『はいです。大分感覚は掴めたので、後はいろんなモンスターと戦って実践あるのみです』


『そう、それなら後はこっちで片付ける。アペルは下がって見てて』


 《念話》で2人が会話する。今初めて知ったが《念話》はパーティー内だったら誰か1人でも取得していれば、その人を中継役として会話が出来るようだった。イメージとしてはトランシーバーみたいなものだろうか。パーティー内のチャンネルがあって、2人の《念話》での会話は俺にも聞こえているし、シェリーにも確認したら聞こえているとの事だ。俺はてっきり1対1で周りには聞こえてないものかと思ってた。でもこの仕様であればどんな状況でも連携が取りやすくなる。取得しておいてよかった。


 そしてアペルと入れ替わりでソフィアがクラーケンに挑んでいく。ソフィアは俺達がクラーケンを倒した時と同じように触手を斬り落とす作戦のようだった。ただ、手持ちのスティレットでは根元から斬り落とすには長さが足りず、《ウィンドトルネード》でもって触手に巨大な穴を開けて、徐々にその数を減らしていく。ソフィアは触手の本数が減った事により、クラーケンの攻撃を回避しやすくなった為か、触手を数本だけ残して本体への攻撃に切り替えた。だが《雷魔術》は水中に居る俺達にも被害が出るため使えない。


 《風魔術》も《雷魔術》に比べて威力は落ちるが相性抜群だ。上位魔術の《氷魔術》でも良い。さて、ソフィアはどのようにして決着を付けるつもりなのか楽しみだ。するとソフィアがクラーケンの攻撃の回避に専念しだし、何かウィンドウを操作している。それが終わるとソフィアが《アースシールド》を使用して、それを足場にして水上へと飛び出していく。どうやら水上で決着を付けるらしい。俺達も水中から浜辺に戻って戦いの行方を見ると、空中に舞い上がったソフィアがクラーケンの真上から降下している所だった。


「ウィンドトルネード!!」


 空中に跳躍している間に魔力循環をしたのだろう。水中で放たれた《ウィンドトルネード》とは比べものにならない竜巻がクラーケン目掛けて伸びていく。クラーケンが残った数本の触手で防御しようとするが、《ウィンドトルネード》はそれらを巻き込みながらクラーケンの脳天から垂直に風穴を開けた。


 元はクラーケンだった灰が海に飲まれながら消えていく。そしてソフィアは今もなお、水面に向かって落下中だ。俺が見た時の高度からだと水面に衝突したときの衝撃はかなりものになるだろう。しかしソフィアは《ウィンドスフィア》で周囲に空気を纏うとそれをクッション代わりにして海に着水した。それを見てほっと一安心。多少時間は掛かったが、まあ許容範囲だろう。


「お待たせ」


「お疲れ様。そういえば水中でウィンドウを操作してたのって何してたの?」


「ショウジの好きな《アースシールド》を使えるように《土魔術》を取った。水中じゃ詠唱出来ないから」


 ああ、なるほどね。俺の小さな疑問も解決し、俺達は今日のダンジョン攻略を終えて帰る事にしたのだった。

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