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合成

 再び同じ場所に居たセイレーンを、今度は作戦通りに軽く体力を削ってからソフィアの一撃で安全に倒し、俺達は街への帰路に着いていた。しかし、セイレーンが同じ場所に居るとは驚きだった。もしかしたらサラマンダーみたいに岩場近くが生息地だったのかもしれない。サラマンダーも行動範囲が火口近くと狭かったのでそれもありえそうだ。


「案外早く終わって良かったね。これもアペルがセイレーンの歌声を聞き取って見つけてくれたおかげだね」


「でも、耳が良いせいで迷惑もかけちゃったです」


「そういう時は私達がフォローすれば良い」


「そうですよ、あーちゃん。あーちゃんのその優れた聴覚がなければセイレーンを見つけるのにもっと時間が掛かっていたでしょう」


 アペルがセイレーン戦で不覚を取ったのを気にしているようだったが、ソフィアとシェリーが気にする事はないとフォローする。


 そうこうしているうちに街に着いたので予定通りおっちゃんの所に向かった。貝殻は2体目のセイレーンも倒して4人分を確保出来た。これをおっちゃんに渡して、33層の海フィールドの水中を自由に動ける能力が付与されるという装備を作ってもらうのだ。


「おっちゃん、約束通り来たよ」


「おう、来たか。こっちも防具が完成してるぜ。早速装備してみるかい?」


 約束通り防具の方は仕上がったそうだ。おっちゃんはそれらをカウンターの上に並べていく。俺達はそれを受け取りさっそく着替えてみる事にした。同じ素材で作っているから全員がお揃いの格好である。まあパーティーとして同じ装備で統一というのも纏まりがあるか。


「うんうん、似合ってるんじゃないか。追加で染色とかも出来るぜ?」


ジャイアントサーペント自体が褐色に近かったので、その皮で作られた防具もそのままの色合いだ。


「それじゃ今の防具と同じ黒色でお願いしようかな」


「私も同じで緑に」


「私も今の装備の色合いに近くしてください」


「あたしは赤で」


 俺が希望の色を言うと皆も続けて希望をおっちゃんに伝えていく。着替え直して防具を染色してもらうために一度おっちゃんに返した。


「おう、んじゃちょっと待ってろ」


 おっちゃんはそれらを《道具》に収納し、何やらウィンドウを操作するような仕草を続けた。暫く待っていると染色が終わったようで、俺たちの前に各々の希望を出した色に染まった装備が並べられた。


「どうよ。良い具合の色合いだろ?」


「完璧!ところで今まで使ってた防具はおっちゃんが買い取ってくれるの?」


「まあ、そうだな。それでも良いぜ」


「今までの防具の付与されている能力とかを新しい装備に持っていく合成みたいなのって出来ない?」


 確か以前おっちゃんのスキルにそんな感じのスキルがあったのを見た気がする。《漆黒狼の寵愛》はなかなか相性の良いスキルだった。いくら防御面が心配で装備を変えるからって、スピードが遅くなったら今まで回避出来ていたものが出来なくなる可能性もある。まあ、回復魔法があるから即死を抑える方が重要なのだが、今まであったものがなくなるのは惜しい。これは人の性と言えよう。


「出来なくはないが、成功率はかなり低いと思うぞ。何しろその能力が付く事自体が貴重なんだからな」


「とりあえず成功確率だけでも見てみてよ」


 俺は今装備している防具を脱いでおっちゃんに渡した。


「あんちゃんの希望だから勿体無い気がするがやってやるよ。ただし今見た所だと成功確率は半分以下の30%だぞ」


「げっ、確かに成功確率低いね」


「だろ?能力があると一気に成功確率が低くなるんだぜ。ただ、スキルの《合成》以外にも能力を引き継げるやり方がある」


「おっちゃん、それもっと詳しく!」


「まあ待て。もう1つのやり方はまた時間が掛かるんだ。なんて言ったってスキルを使わずに組み合わせるんだからな」


 おっちゃんの説明によると装備同士を《合成》させた場合は、装備品自体の能力値の向上、付与されている能力の引き継ぎが出来るというメリットがあるが、成功確率が存在し、失敗するとベースは大丈夫だが、追加素材側の装備が消滅してしまうというデメリットがある。


 今回の場合で行くとジャイアントサーペントの防具をベースに今の防具を組み合わせるので、ジャイアントサーペントの防具は残り、今使っている防具が消滅する。付与されている能力があるので、売ればそれなりのお金にはなるのだが、それがなくなってしまう。新しい防具は消えないのだし、強化の為に使ってしまえば良いじゃないかと思うだろうが、普通の冒険者にとってはそのお金があるかないかでは死活問題らしい。


 《合成》を使わずに組み合わせる場合は、布や皮系の防具であれば繋ぎ合わせたり重ねたりする事により、失敗というデメリットなしで組み合わせが出来る。ただし、こちらにもやはりデメリットはある。《合成》したものに比べて能力値の向上具合は低く、付与されている能力も弱体化したものが付与される。よって《合成》で作ったものに比べて価値が下がる。


 この辺りの選択は結構ギャンブル要素が高い。俺は悩んだが確率が30%では失敗してしまう気がして、後者を選ぶ事にしたのだった。

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