異端者
真っ白な四角い部屋、バタバタと足音が近づいてくる。
「グフォッ!!」僕の上にそれなりの重量を誇るものが落ちてくる。
ひょこっとあの顔が微笑んでくる。守りたかった笑顔がここにある。
「…っノイ君!!よくやったね。本当に…」
「ミ、ミナさん…良かったぁぁぁ!!」
抱き合って大声で泣く。「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」」それはとても綺麗な涙だった。顔はぐちゃぐちゃで汚なかったけど、その光景はとても清らかで美しかった。
僕とミナさんは6階から14階まで落とされたらしい。
なぜ黒紅竜が14階何て上層に現れたのかは不明。
死傷者はいない。そもそもグラセスを見たのは僕たちのだけだそうで他にはいない。僕の右肩に負った火傷と握っていた荒角がグラセスの出現を裏付けた。その後、他のパーティーに発見された僕らはこうして今ギルドの医療施設で生きて再開を果たした。
サラさんが部屋に駆け込んできた。「大丈夫!!」そう言いながら近づいてくる。
「…はは…何とか無事です。」
「同じく、無事です。」
泣き止んだのは良いけどミナさんは抱き着いた状態から動こうとせず、内心凄い恥ずかしい。柔らかな感触が伝わってくる。
サラさんがはっとしたように人指し指を立てた。
「ノイ君、【計測腕輪】を見せてくれない!?」
カンカルとは着けている本人の情報が常時アップロードされるハイテク機械だ。ギルド登録時にハンターに普及される。
「カンカルですか?…わかりました。」
左手首にはめられた輪っかを手渡す。サラさんがカンカルを見せて唸る。
「ノイ君…きみ、スキルが発現してる。」
「…へっ。っえぇぇぇぇ!!」
カンカルを覗きこむ、本当に…スキルが。天にも昇る気分だ、欲して止まなかった力が手に入った。
【逆境勇護(ゼクティア=ディファクト)】
●護りたいと思った者に危害を加える敵が現れると発動。
●全能力向上。
●護るものの多さ、敵の強さによって効力の丈が向上。
「【逆境勇護(ゼクティア=ディファクト)】…やったやったぁぁぁ!」
喜びを隠せない僕に弾き飛ばされたミナさんの恨めしそうな視線に気づく。すぐにミナさんの元に駆けつける。「すみません!!」と謝る。
無言で僕の手を取るミナさん。その時だったサラさんが声をあげたのは。
「総合能力2万超えぇぇぇ!!」
僕の耳はおかしくなってしまったのだろうか。2万超えっ?
「何かの間違えですよ!昨日確認したときは総合5千少し超えたくらいでしたよ!」
「で、でも!ここの履歴見て、確かに2万超えてる!」
本当だ。グラセスとの戦闘中の総合が2万超えをしている。
急いで今の総合を確認する。
「あれっ?今は9千ちょっとしかない。」
ミナさんが横から口を挟む。スキルの欄を指差す。
「このスキルが発動したんだ。グラセスと言う強大な力に反応して、ノイ君の能力を今の限界値まで引き上げたんだよ。」
「ダンジョンに潜ってまだ1か月も経っていないのに、中級ハンターと同等の能力値なんて…」
確かに9千何て中級ハンターとためをはれる位の力だ。
それに…
「サラさん僕のタイプ<スピードタイプ>で間違って無いですよね?」
震える指でタイプの項目を叩く。サラさんは「…そのはずだけど。」と言いながらカンカルに目を向ける。
「なに…これっ?」
反応に間違えはない。タイプが書き変わっていた。
「<異端者>って?」