【逆境守勇(ゼクティア=ディファクト)】
確かに笑っていた死神の顔が。僕に迫る闇。
「ミナさん、『カルチュア』借りますね。貴女は休んでいてください。」
グラセスが目を見開く。目の前の障害を潰すためそこに向かった。
その障害が目で追えなかった。いつの間にか己の背後にいた。
グラセスは初めて笑った。
障害いや、ちっぽけな少年が剣先を向けてくる。さっきの姿からは想像できないほどに落ち着いている。静かすぎる。
「…いくぞっ」
ゴッ!!後頭部に強烈な蹴りを喰らわす。長く太い首が沈む。
「らぁぁしゃぁぁぁ!!」
同じように回転して加速をかける。同じでは無かった。
剣腹がグラセスの波打った角に食い込む。今まで自分に傷をつける者はいなかった、自慢の角が宙を舞った。
「ふんっ!これで終わりだっっ!」
少年の放った突きが流星のように降り注ぐ。
敵に敬意をはらった事などなかった。久しぶりに真意を解放した。
鈍い音がした。「なに…がっ!」グラセスは少年に触れていない。
本来ならば触れる必要などない。こんな虫けら少し魔力を使えば簡単に消すことが出来る、だが死はそれをしなかった。成長した虫けらと戦ってみたかった。死が低く言った。
『…我、力欲する…我、強きもの望む…我、我を越える者待つ。』
それだけ言い残すと死は闇に消えた。
「…ミナさん。」
少年の意識も消えた。