信念の咆哮
『ゴガァァァッ!?』
死神の不意な叫び。ドガっとかなりの重量の者が倒れる音がする。
ゆっくりと目を開く。さっきまで僕のいたところがドロドロに爛れている。
「何で貴女がいるんですか…逃げてっていったのに。」
僕の肩を抱く細い指に見覚えがある。その瞳に安堵する。
僕が守りたかった人。
「…私は君に死んで欲しくないんだ。ここは私に任せてくれ。」
凛々しい顔には明らかに緊張と恐怖が混ざっている。
「僕も戦います。戦わせてください!」
ミナさんが僕の右肩から腕にかけてを見て首をふる。
僕の右肩から腕にかけてやつの生み出した焔に喰われていた。
「…っっ、大丈夫です。だから戦わせてください!」
「駄目だ。それに君にはもう武器もない。」
口論のあいだにグラセスが立ち上がる不意を突いただけで傷ひとつついていない。死の顔は怒りに燃えている。
『ゴァァァァァッッ!!」
裂けたようにぽっかり空いた無数の牙が迫る。瞬間。
金属音。彼女と同じ姓を持った武器『カルチュア』がそれを阻む。
「…ぐぐぐぐっ!!」
僕よりも小柄な体が強大を止める。<スピードタイプ>には苦以外の何者でもない力比べだ。
「キャッ!!」
吹っ飛ばされる光景が目に映る。走り出そうとする。
「ミナさんっ!!!」
そんな僕を死が睨む。「あぁぁぁ。」腰が抜けてしまった。
無力だ僕は無力だ。
「ミナさん、ミナさん、ミナざぁぁぁぁん!逃げて!」
死が守るべきものを飲もうとする。止めろ止めろ止めろぉぉぉ!
何だって良い!悪魔の力でも、何だって良い!あの人を守れる力を!
燈し火を絶やさない絶対を退ける力をぉぉぉぉ!
『なぜ、力を欲する?』
「守るべき存在がいるからか。」
『なぜ、守りたい?』
「女の子を守のに理由がいるか!」
『なら叫べ。ちっぽけな心の壁なんてぶっ壊してみせろ。』
目を見開き、信念の咆哮をぶちまける。
「あああああああああああああああああああああああっ!!!」
死が振り向く。その顔が歪んだように笑った。