末路
僕は初めて死に出会った。自分とは圧倒的に違う存在。圧倒的な死。
ガタガタと膝が笑う。ぜぇひゅぅ、呼吸が荒い。
(恐い恐い恐い恐い!!)
グラセスがそっと僕らに近づいた、その一歩一歩が鼓膜を揺らし心臓を叩いた。
「ノ、ノイ君…どうしよう!?」
「僕が…僕が!き、気を引きます。だからミナさんは逃げてください。」
泣きそうな顔を精一杯ひきつらせて笑顔を作る。
そっと頬に手がそえられる。その手を握り返して言う。
「ぼ、僕頑固だから絶対退きません。これだけは譲れません。」
ミナさんがゆっくりと頷く。僕を見据えるエメラルドグリーンの瞳は
「生きて帰って。」そう告げている。
「早く行ってください!」
涙を拭ってミナさんが逆方向に走って行く。そう、それでいいんだ。
死がすぐ目の前に迫る。水晶のような真っ暗な瞳に吸い込まれそうになる。
震えるからだに鞭を打って、グラセスにナイフを構える。
「絶対に通さない…ミナさんが逃げるまでぇ!」
グラセスの殺気にあてられる。まるで自分(死)になれと言われている気がする。
『ゴォォォッ!!』
ゆっくりとグラセスの爪が空気を裂く。いや、ゆっくりと見えた。
死への恐怖が全てを置き去りにしてしまった。
「あぁぁぁぁっ!!」
横に転がって寸でのところで何とか爪を避ける。轟音。
空間が爆ぜる。…軽く叩いただけでこの威力!?
「何なんだよ。ふざけんなよぉぉ!!」
水平に回転して武器を持つ手に加速をかける。
「く…らえぇぇ!!」
渾身の一撃も儚く散る。僕の生命線が砕ける音がフロアに響いた。
『ガァゴオァァァ!!』
グラセスの体が深紅に染まる。勝負をつける気だろう。
いや、勝負にもなっていない。こいつにとって僕は蚊のような存在なのだろう。つまり僕の末路は虫けらと同等なのだ。
「もうミナさん逃げたかな。無事だといいなぁ。」
目を瞑って死を覚悟する。…もっと強くなりたかった。お前を倒せるくらいの力が欲しかった。
「…さっさと殺せよ、糞ドラゴン。」
グラセスの喉から聡明なドドメの渦が巻き起こる。
「次、生まれ変わったらもっと格好よく女の子を守れるようになりたいな。」
僕の視界はその色に塗り潰された。
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今後も『ダンジョンと僕とエルフ様@ドラゴンロード』をよろしくお願いします!!!