女心
ダンジョン付近の酒屋『Cat』。店員は女性限定、しかも全員美少女。極め付きは全員キャットピープル、男の夢である。
「特上エール2人前おまたせしましたぁ!」
「ありがとうございます!ジーニャさんっ!!」
エプロン姿でエールを運んできてくれた、この女性はジーニャさん。ブロンドの長髪、少し丸い大きな目。抜群なスタイルをメイド服の様な制服に包んでいる。
「久しぶりにお店来てくれて嬉しいよノイ君っ!」
「最近は金欠で…てへへっ。」
頭をかく手は震えている。当たり前だ、ジーニャさんは僕の憧れであり好きな人だから…な、ななななんてことを!?
「ふふっ、今日は楽しんでいってねノイ君!!」
ルンルンと厨房に入っていくジーニャさん。
(あぁ、今日も可愛いな…)
でれでれと厨房を見つめる僕に一喝。
「そぉれぇでぇぇ!ドラゴンボーイ、パーティーには入るのかい?」
「いやぁっ…それはちょっと…」
狼少女もとい、ゾティス=トラガルさん。先ほどダンジョンで助けられた。これもさっき知った事だが彼女、あの某有名パーティー【シルバーファング】のリーダー。所属ハンター32人、平均能力値12470と言う化け物パーティーである。そして最も恐るべきはゾティスさんの総合能力値47892。覚醒したときの僕の2倍以上、しかもぐんぐん成長中とのことだ。
「何故だい?1人でダンジョンに潜ると言うことは、パーティーに所属していないと言うことだろっ!?」
机を叩くゾティスさん、ほっぺを膨らましている。可愛らしいこの少女が5本の指に入るパーティーの長だとは到底思えない。
「ぼ、僕には一応パートナーがいて…だからパーティーにはっ。」
「じゃぁ、なぜに1人でダンジョンに?」
エールをぐびぐび飲むゼクティアさん、腰にてをあて親父のようだ。
「あっ!おねーさんエール追加っ!!」
(……まだ飲むのか??)
「今、彼女が知り合いに頼んで武器の調達をしてくるって…っお!!」
机にジョッキが勢いよく叩きつけられる。僕の手が在ったところが悲惨な状況に……恐る恐る顔をあげる。
「じ、ジーニャさんっ??」
表情が氷のように冷たい。ジーニャさんの後ろに黒い影が、ゴゴゴゴッと聞こえてきそうだ。
「彼女って……??」
「え、えっと何て?」
髪の下から覗く視線が突き刺さる。……こ、こわい。グラセスと対峙したときと同じ感じ。そう、これは死……
「……だから……彼女って…誰?」
口調は静かだけど迫力が凄い、やっぱりこわい。
「い、いやあの僕のパーティーの一員で…僕の家に居て、いそうろうミタイナモノデス…はい。」
「ノ、ノイ君の家に…嘘。そうこれは夢、夢なのよジーニャ。」
ふらふら消えていくジーニャさん。何だったんだいったい??
「君は女心がわかっていないな。」
深くため息をはくゼクティアさん。
「はぁっ…なにがなんだか。」
このあと3時間以上女心とは何か教えられた。