プロローグ
『人』や『亜人』その他の多くの種族が溢れ還っている、【ダンジョン】の聖地【アトラス】男の憧れ。そんな場所に夢を描いてしまった少年。そう、僕のことだ。
「まさかゴブリンにボコされるとは。…我ながら情けない。」
「「「おい、さっきからブツブツ言ってる奴、急に泣き出したぞ?」」」
「「「どうしたのかしらね?」」
あぁ、泣いてしまった。皆に見られてる。
(恥ずかしいな…)
悔しくてズボンをキュッと掴む。
「あのぉ、大丈夫ですか?」
おずおずと僕にハンカチを差し出す少女。
小さく華奢な身体の上に小さな頭がちょこっとのっている。鮮やかなエメラルドグリーンのくりっとした瞳に先の尖った耳、短めの白いサラサラの髪。
「『エルフ』…?」
小首を傾げた僕を見て桃色の小さな唇が揺れる。なんとも可愛らしい笑顔があどけない。
「ふふっ。今の時代、『エルフ』がそんなに珍しいですか?」
高貴な『エルフ』には似つかわしくないボロボロのローブを身に纏った小さな『エルフ』が悪戯っぽく言いながら僕に手をさしのべる。
「少年。宜しければ私と【ダンジョン】に挑戦しませんか?」
恥ずかしながら口から間抜けな声を出してしまう。
「へっ?」
僕は今さっき会った『エルフ』の少女に可笑しな事を言われた。
何だ【エルフジョーク】か?でも、『エルフ』って堅実な種族だしな…
でも真実を伝えないとな。可哀想だけど。
「【ダンジョン】に行くなら15歳以上じゃないと【ギルド】には登録できないよ。お嬢ちゃん。」
腰を折って僕の顔をぬっと覗き込む『エルフ』
「何を言うか!私は18歳だよ!何だ、チビだからか!胸が無いからかぁぁぁぁ…」
自称18歳の幼女『エルフ』に肩を掴まれるブンブンされる。
さっきまでの穏やかな口調からは想像できないほど声を荒げる幼女。
「ちょ!ちょっと止め…」
不意に顔が柔らかな物にめり込むムギュッと音がする。
僕の頭は瞬時にそれがなにか理解する。
(-お、おおおおおっ…!ぱxryjbf『自主規制』)
自分では小さいと言いつつ普通サイズながら華奢な身体のせいで大きく見える幼女『エルフ』の胸が顔に押し付けられる。
ーこのまま死んでもいいと思う。失礼ながら。
鼻血が湧き出てくる。ー意識が遠のくぅ…
「思い残すことはありません。さらば人生。…ありがとう幼女『エルフ』よ。」
顔が青ざめた『エルフ』が叫ぶ。頭を抱えている。
「ーしょ、少年ぇぇぇぇん!」
私は変な少年、もとい【挑戦者】
に声をかけてしまった。
(不思議な『縁』を感じたんだけどなぁ?勘違いかな…)
子ども扱いされたあげく何故か鼻血を出して倒れた少年は今、私の膝の上で寝息をたてている。
ー可愛い寝顔して。
真っ黒な長めの髪の毛。涼しげな一重のライトブルーの瞳。
「顔はなかなか…」
何て考えるのは不謹慎かな?
ぐぅぅ、少年がうめき声をあげだした、苦しそうだな。
鼻と鼻が触れ合う距離まで顔をちかずけてみる。
「…ゴブリンはもう良いよぉぉぉ!いやぁぁ!!」
「うぶほぁ!!!」
突然起き上がった少年に『頭突き(ヘットバック)』を食らう。
赤くなった鼻っ面を押さえずにはいられない。
痛い痛い痛い!ーっっつ!涙が。
(くぅぅぅ…痛っっっっ。)
「-少年…君は私を侮辱した挙げ句に暴力をふるうなんて。」
「す、すみませんっ!」
あたふたしながらペコペコと頭を何度もふる少年。
必死に謝ってくる少年が何となく可愛く見える。母性?
(いや違う…もっとこう、複雑な何か。)
違う違う!首を左右にふる。そんなことより私は何とか【ダンジョン】に行くために仲間がいるのだ、どうにかしてこの少年を…
良いこと思いついたぜ、口角が上がる。
「ー膝枕までサービスした挙げ句に頭突きまでして。…どう落とし前をつけるんだい少年♥」
少年の肩が揺れた動揺を隠せていないな。
ー押せば行ける。いや、やるしかない!
心でガッツポーズを決める私だった。
ノイ=アルテナ。16歳。男。そう僕は今、結構まずい状態にたたされている。色々と理由をつけられ今、僕はこの幼女もとい『エルフ』のギルド登録を手伝っている。なんと僕のパーティーに入るのだと言う。
(まぁ、パーティーと言っても僕一人だけど…)
肩を落とす。あぁ…どんどんネガティブになってるな。トホホ…
「ノイくん?今日は元気ないねどしたっ?」
「…あっ!だ、大丈夫ですよサラさん!」
僕のことを心配してくれているこの猫人はハンターとしての僕の担当者、つまりギルド職員。
腰まである黒髪。ふさふさの耳と尻尾。赭色の大きな瞳。
全体的に精巧な人形の様な容姿はハンターの間でも人気だ。
(理由はほかにもあるんですけどね。)
チラッとサラさんの豊かすぎる胸元に目を落とす。
「ミナ=カルチュア様ですね登録完了致しましたよ。それでは簡単な確認をさせて頂きますね。」
「わかりました!」
ミナさんは元気に返事をしている。
嬉しいんだろうな、敬礼までして。
「はい。お名前はミナ=カルチュア様で。種族は『エルフ』。えぇっと。タイプは…さっきの【選別】の結果、<スピードタイプ>と判明致しました。」
ミナさんがへにゃっと首をかしげる。
こう言う仕草可愛いよな。うん、可愛い。
「タイプとは…何でしょうか?」
「あ!すいません説明が足りなかったですね。すみません。」
サラさんが胸の前で腕を組む。
あぁ!そんなことしたら胸がつぶれてぇ!
自然と赤面してしまう。
(目のやり場に困る…でも、ダメだって!)
僕の視線に気がついたサラさんのジト目が痛い。
「えぇっと。…さっき行った【選別】は覚えていますよね。あれは人それぞれにあるタイプを見極めるものなんです。」
人差し指を立てながら説明をしているサラさん。
この人の癖だ。真剣なときはいつもこうする。
「その結果私は<スピードタイプ>と言うことで…?」
ムムムっと幼女が唸る。
可愛い女性の会話はずっと見てられるな。
「はい。…タイプには四種類ありまして。まず、ミナさんやノイ君の属する<スピードタイプ>。他には<パーワータイプ>に<バランスタイプ>。
最後に希に出現する<魔法タイプ>がありますね。」
「ちなみにモンスターにも今言った四種類の属性があってね、その属性に合った【経験値】が得られるんだよ!…ですよねサラさん?」
少し乗り出す感じでどや顔してみる。
サラさんは優しい微笑み返してくる、あぁ心が洗われる。
(…好感度Up??)
「ちょっと、ノイ邪魔だよ!まだ説明受けてるんだから!」
へぶっ!…ミナさんのパンチが左頬にクリーンヒットする。
「…………」
「…く…ぅん…」
誰かに呼ばれている。
(うっ…誰??)
瞼が重いっ。視界が戻って来る。
「…ノイ!!!」
「ミナ…さ…ん?」
幼女エルフが膝を抱えている。体育座りの体制だ。
(体育座りって…何かエロいよな。)
「説明は終わったから、もう帰ろう。」
「あぁ、はい帰りましょうか。」
んっ?帰る、どこに?僕の家に!!?
ばっ!!っと起き上がる。ミナさんの肩を掴む。
「か、帰るって僕の家に!えぇっ!!」
「ちょっと、ノイ君。こっち来て。」
ちょいちょいと手招きされる。
がっと肩を抱かれ小声で告げられる。
「ミナさん家出したみたいでね。…彼女エルフでしょ?だから帰れないらしくて泊まるところも無いんだって。…だからお願い!!!」
指先で僕の鎖骨の下あたりを押してくる。
上目遣いが珍しいな。
「それとも、私の胸をじっと見ちゃう狼くんには無料かなぁ?」
「ぐぅぅっ…わかりました。わかりましたよ!」
渋々承諾する。糞ぉぉ悔しい。
(サラさんが小悪魔だったなんて。)
「ミナさん!ノイ君がしばらおいてくれるって!」
「やったね!」
ばちぃんとハイタッチをする二人。
(こんなんで明日からやっていけるのかな?)
はぁ、大きなため息が出る。何て日なんだ。
皆さんに面白い!これからも読みたいと言う要望を受けれるように頑張りたいと思います。全部出しきって書きますので感想やアドバイス、ブックマークよろしくお願いします!