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執筆!となりの晩ごはん(意味深)

トランの話を書くって?そんなこと言いましたっけねぇ……?

変な色の空をしていた。

どんな色かと聞かれたら、説明するのが困難だ。天気としては曇りに属するのだろうが、ただの曇り空ではない感じだ。どうにかして言葉を繋げたとしたら、それは暗黒のような白昼夢のような血の沼のような朝焼けの空のような……とにかく色々とカオスな空の色だった。

きっと他の人に聞いたとしたら、誰一人同じ言葉が出ないだろうという具合に、人によって違く見える混沌。そう、どう説明するのが正解だろうか。

「なんだか変なポエムみたいなこと考えてるじゃねーの。ちょいと手伝って欲しいんだが」

目線を下に戻すと、草むらにしゃがみこむようにして、あの金色の狼の様な耳がふわふわと動いていた。見慣れた訳じゃないが、見たことはある。……名前までは覚えていなかったが。

「……えっと」

「久しぶりぞな、時紅君」

時紅君……?

呼ばれ慣れない呼ばれかたをして、肩がくすぐったく感じた。


そいつはマントを引きずりながら、草むらをかき分けて何かを探していた。

「なーなー、おまいさんも手伝ってくれよ」

「何を」

両手の人さし指を立て、両手の間に短く空間を作り自分の目の高さで示した。

「このくらいの長さのペンを落としちったんだ」

「何色だよ」

「それが、もともと色はついてたんだが俺氏が透明にしちまってだね」

色を消した?ブツの色を?……そんなことが出来るのか、こいつは。

もやもやとしながらも雑草をかき分け、色のないペンを探すのを手伝う。

は?待て。

「透明なのに、どうやって探せっつーんだよ」

「色はないけど触れば形はあんの。だから苦戦してんの。アーユーオーケー?」

しゃくにさわる言い方をされたので軽くはたいてやった。


「ねーなぁ、どこにあんだろーなー、ここら辺に落としたと思ったんだがなぁー」

カミサマも落とし物なんかするんだな、そう呟いたら「俺氏がカミサマだってこと、信じてくれたのかい?嬉しいねぇ」と笑われた。

「なんで透明になんかしたんだよ。」

レリーユーズは手もとから目を離そうとしない。しばらくして、ゆっくりと唇を尖らせた。

「なぁんでか、思い出せないんだよな。まあ嘘だけどな」

嘘かよ。ただ教えたくないだけなのか。

「まあ、色々嫌になっちまってよ」

「……あっそ」

「なんだそれ、興味なさそうじゃねーの!さては飽きたな!?この飽きっぽバカチンが!」

「終わりの見えない探し物ほど面倒なことはないだろ」

既にこいつと会ってから20分が経過していた。こんな地道な探しかたしかないのか。魔法使いなら魔法を使え……

「使えてたら使ってるってーの」

「勝手に心の声を読むな」

いつになったら探し終わるんだかな。

「本当にここら辺にあんのか?」

「間違いなくここに落とした、間違いなくここにな!」

「なんだよそれ、意図的に落としたのか?」

「そ、それは……おまいさんのご想像にお任せするナリ」

目を泳がせてダブルピースをした。……意図的に落としたんだな。でも何故なのか。

「変な色のペンなら落ちてたんだけどな……」

今日の空の色に似た、ハチャメチャな色使いのペンをつまみ上げた。持ち手は金属で出来ているがやや錆びが付いていて、赤茶色くなっていた。そしてボディには色がついている、これは探しているものではないか……。そう思いポケットにいれようとしたその時。

「おっ!?それだーー!!」

変な色のペンを指差した。

「はぁ?色ついてるじゃねえか……なんなんだよ……」

「んー……まあ、ちょっとの間、手離したかったんだよ。世界を作ること」

そいつの手に握られたペンは色を変えた。

本当にこいつのまわりに起こることは、理解しがたいことばかりだ。やたらへんてこな演出ばかり起こる。

「で、じゃあもう立ち直れたのか?」

「……。」

「……いや、言いたくないなら良い、大して興味はない。」

膨れっ面で顔を覗きこんだあと、マントの裾についた土ぼこりをはたき、1本のステッキを出した。

「おまいらには、一生懸命にこの世界で走ってもらいたいだけ。そんで、しっかりと歴史を刻み込む。一連の動作をただこなしてくれればいいんだい。ま、自然とつまらないことにはならないだろーに」

ステッキを一振りしたが、なにも起こらなかった。

「……魔法、不発か?」

「いんや、帰ればわかるやんね」

にっこりと笑って姿を消した。


変な1日を過ごした。


やたらと疲れた足を部屋に向けると、扉の前に大量のペンが散らばっているのが目に入った。数えてみると366本もあった。……これが、レリーユーズの餞別か……。

全部同じ柄に見えたが、千絋やクロが言うには全部それぞれ少しずつ違った色合いらしい。やはりそういうのは女の方が判別できるものなんだろうか。

俺も千絋たちと同じ色を見たいと思った。

今日の空の色を見てもきっとあいつらは綺麗だなんて言うんだろう。そう見えるんだろう。俺には混沌にしか見えないのに。

不純に見える世界もあいつらには、少しはマシに見えているんだろうか。


なんだかむしゃくしゃしたのでレリーユーズから貰った大量のペンを使って新しい武器を作ってみたが、失敗作に終わった。視界はますます淀んでしまった。

魔法が使えなくなったりするスランプに一瞬でも陥る、不完全なカミサマが書きたかったんです。完璧に見えて、完璧なんだけど、自分が少し目を離した隙に、何かを忘れてしまう。そんなよくあるアンニュイな話が書きたかったんです。言葉が所々足らないのはあえてです。想像にお任せしたかったのです。

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