今日は失敗デー
狭い部屋に二人。
檜には、今の状況が理解できずにいた。
「咲……?ど、どうし……」
「悪い……もう、我慢できそうにねぇ……」
荒い息づかいで答える咲。抱きつかれていて顔は見えないが、おそらく真っ赤になっているだろう。声のトーンがいつもより低いから分かった。
「檜……ちょっと……行ってくれないか……?」
「えっ……?行くって、どこにゃ……?」
「決まってるだろ……オフトゥンだよ……」
「さ……咲の不埒者ぉぉぉぉぉぉ‼‼」
檜は咲を引きはがし、そのまま一本背負いを食らわせた。
「……本当にスミマセンデシタにゃ」
檜はおずおずと謝罪を口にする。
「気にすんなー……あっしがいきなり抱きしめたからだろ……悪かったな」
布団の上でお見舞いの粗品(洋梨ゼリー)をしゃりしゃりと食べながら、独り言の様に返答した。
「姉貴、ちゃんと檜に伝えなかったんだな?咲が熱出した事……」
返す言葉もない、とクロトは呟いた。その表情は、何か微笑ましいものでも見たかのようだったが……。
「で、体調は大丈夫なのか?咲」
「おかげさまでな……食料も増えたしの」
そう言って見舞いの品を指さす。何故か全て洋梨ゼリーであったが。
「って、洋梨ゼリーばっかり食べてちゃダメだよ!?偏った食生活じゃ風邪も治らないよ」
相変わらずお母さんみたいな事を言ってくれるなぁ、と千絋は笑った。
「皆さんにご迷惑をおかけしたおわびに、咲に宛てて子守唄をおくるにゃ。」
檜がすくっと立ち、腰に手をあてる。
「何歌うの?」
「エーデルワイス」
「いや確かにゆったりとした曲で子守唄っぽいけどさ!?」
意外と渋い選曲に、満場一致でどよめいた。
「抗生物質にはチョコ味‼」
「もはやCMソング‼」
咲はこの日、ひたすら「寝かせてくれ……」と愚痴をこぼしていた。
ちょっと短めです。熱出しネタは有りがちですが、そういやまだ咲の熱ネタは見てないなぁーと思って作った話です。檜の扱いすみません。。。