とある冬の日
Border-Arriveの非公式なお話です。
キャラ崩壊はしないように頑張りましたが、していたら本当にごめんなさい。
「……はぁ。」
裁縫道具を片手に、ため息をつく。
事の始まりは、淋が大きめな段ボールを抱えていた事だった。
「お兄にどうぞって。」
中には大量の黒い毛糸が入っていた。
「……え?うちは仕立て屋じゃないよね?」
「なんかね、トランが……鍋を買ったらおまけに貰ったって」
鍋のおまけが大量の毛糸とは、どういう買い物の仕方をしたのだろうか。
あとでトランには問い詰めるとして、問題は……
「この毛糸、どうして僕に……?」
こういう女子っぽいものは、千絋にあげるべきだと思うのだが。
そう言うと、淋は首をかしげて笑った。
「お兄がこれで何か作ってあげれば?」
……なるほど、そういう手があったか。
「とは言ったものの……。」
とりあえずマフラーを編むことにした。が、毛糸の色が黒という暗い色であり、もっと淡くて可愛らしい色なら良かったのになと頭を抱えた。
でも……千絋なら、何色でも似合う、かな。
「こういうのは、大切なのは見た目じゃないよね」
自分に訳の分からない理屈を言い聞かせ、さくさくと編み始めた。
編み始めてから1時間でマフラーを編み終えた。
なかなかの力作ができ、頬が緩む。
「さて、と。手っ取り早く、渡しちゃうか……」
可愛い包装とか、したほうが良いのだろうか。
いや、かしこまったプレゼントではないのだから、そんなものは必要ないか。
外に出ると、ちょうど千絋が帰ってきたところだった。
いざ渡すとなると、かなり緊張する。
ただ、差し入れを渡すだけじゃないか。そう思いつつも、手汗が止まらない。こんな下手な手作りマフラーで、彼女は笑ってくれるだろうか。
「ただいま。……と、いうか、……そんなところで何してるの?」
千絋は僕の顔を覗きこむと、不思議そうな顔をした。
「い、いや。おかえり。」
なんとなく話をそらしてしまった。
早く渡してしまえ。早く渡してしまえば良いのだ。
変に緊張しながら、マフラーを差し出そうとすると……
「千絋おかえり。」
ひょっこりと時紅が現れた。
「……これ。」
時紅は不器用に何かを千絋に手渡した。
見ると、それは淡い水色の綺麗なマフラーだった。
「え、え、え、どうしたの、これ?時紅……」
「何って、差し入れだけど……」
「…………。」
時紅に先を越されるとは思っていなかった。
目の前で微笑ましいドラマが繰り広げられ、今すぐ逃げたい気持ちになった。だが……
「何、それ」
時紅に手元を指さされ、自分が握りしめていたマフラーを隠す。
「こ、これは……」
「……千絋にあげるのか……。」
「う……。」
時紅には何もかもお見通しなんだ。
あまりの恥ずかしさに千絋から目を背ける。
「……でも、黒だし下手だし。千絋には合わないから」
「下手ぁ?……そんな高いクオリティで何言ってんだよ」
時紅は相変わらず、千絋の前だとよく喋るなぁ……。
ため息をもらす時紅と戸惑っている千絋。気まずい空気が流れる。
しばらくして、千絋は僕をみかねた様に、僕の手からマフラーを取った。
「……これ、可愛いから貰う。何か問題あるか?」
千絋は笑っていた。
「……いや……問題ない。……貰ってくれ……」
時紅は「よくできました」とばかりに僕の頭をぽんと叩くと、静かに部屋へ向かって歩き出した。
「……あ、ありがとな。」
千絋は時紅と僕が作ったマフラーをリボン結びして合体させ、満足そうに首に巻いていた。
最近クロトが可愛いなと思って書いただけです。
……それだけです。