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神子の恩返し  作者: 天天
『共通』パート
19/63

story1「直談判」

「……」

 夏休み最後の日。学生諸君は、なんとまぁ言いようのない憂鬱な気分になっていることだろう。

 宿題が終わらない。朝早く起きるのがだるい。一生夏休みならいいのに。などなど、ネガティブ発言しかない、最悪の一日を過ごしているのだろう。

 だが、俺は違う。

 明日から学校が始まるってのに、俺は全く憂鬱じゃない。むしろ早く行きたい。学校が俺を待っている! 宿題だってちゃんと終わってるし。夏休みは遊びまくった。一生夏休みだといい? 馬鹿め。学校生活の素晴らしさは長い休みなんかじゃない。青春だぞ? 人生に一度しかない青春の時期だぞ? ずっと休みだといいなんて思う奴の気がしれないぜ。

 なんて、うざいほど俺のテンションが高い理由は、

「葉介~。似合ってますか?」

 レナと一緒に学校に行けるからだ。

 明日からの登校が待ちきれない新小学生みたいに、制服を来てはしゃぎまくってるレナ。可愛い。おもわずニヤける。

「もちろん」

 レナに向かってグッドサイン。レナに似合わない物なんてないだろう。よく格好よければ、可愛ければなんでも似合うなんて言うけど、あれは嘘じゃないな。

「レナさん。明日持っていく物用意した?」

 レナがはしゃぐ小学生なら、瑠璃は母親ってところだな。世話焼きな性格もあって、学校指定の通学鞄をレナに手渡しながら確認した。

「ばっちりですよ~。持ち物はあんまり育成学校と変わりませんからね」

 神子育成学校は寮みたいな所があって、ずっと住み込みで授業を受けてたらしい。だから通学なんて言葉すら、レナには馴染みのない言葉だ。いちおう、ウチの学校も寮はあるんだけどな。でもわざわざ寮の費用を払ってまでレナをそこで住ませる必要は皆無。ウチから通えばいいんだから。

「制服に似合うリボンはやっぱり黒か白ね。レナだと黄色も似合うけど」

「……お前は当たり前のように朝からウチに来てるんじゃねぇよ」

 いや、そもそもこいつ、夏休み中はほぼ毎日ウチに来てた。レナにべったりだった。消えたレナが戻ってきたんだから気持ちはわからんでもないけど、そのせいで俺はあんまりレナにべったりできなかった。夜は夜で瑠璃と女物の雑誌で盛り上がってたし。俺、寂しい。

「うるさいなぁ。昼寝の邪魔だよ」

「黙れ黒猫」

「僕は猫じゃない!」

 ソファーで寝てたカールが俺に向かってフシャーと威嚇の声を出す。それこそうるさい。大人しく寝てろ。猫らしく。ペットらしく。

「ていうか、私は一つ気がかりなことがあるのよ」

「は? なんだよ」

 雫のことだから、レナ瑠璃関連のどうでもいいことじゃないだろうな。そんなの聞き飽きたぞ。大概どうでもいいことだし。

「レナが私たちと同じクラスになれるかどうか、よ」

「……」

 それを聞いて俺も固まる。

 そうだ。そうだった。ウチの二年生はクラスが六つある。ABCDEF。俺たちはC組だ。確かに、レナが同じクラスになれるとは限らない。同じクラスがそうじゃないかで、学校生活は全然変わるぞ。そもそも、別のクラスにレナを任せるなんてできない。

「瑠璃! いますぐ母さんに電話だ! 校長にレナを俺たちのクラスに入れるように頼んでもらってくれ!」

「えっと……今からで間に合うのかな?」

 確かに、明日の今日で間に合うのかどうかわからない。それに、母さんは親父の仕事手伝いで忙しいから、こっちから電話してもなかなか連絡つかないし。

 ……よし。

「ちょっと学校に行ってくる」

「はぁ? 学校は明日からよ? 頭沸いたの?」

 ちげーよ。いくら暑いからって、そんな馬鹿発言するか。

「明日から学校だし。たぶん、校長は学校に来てるだろ? 直談判に行ってくる」

「あんた。校長先生と面識あるの?」

「ない」

 全校集会とか朝礼とかで見るだけで、直接話したことなんてない。でも母さんの名前を出せばなんとかなるだろ。元教え子の息子だし。

「それなら私も行くわ」

「わ、私も……」

「私も行きます~」

 全員で? いや、レナは張本人だからあれだけど……こんなに大勢で押しかけて大丈夫か? ていうか、夏休み最後の日だってのに暇人ばっかりだな。



★☆★☆★☆



「やっぱり閉まってるよな」

 当たり前だけど、校門は閉まってた。でもそれは想定内だ。裏門から侵入すればいい。

「ちょっと待ちなさい」

「ぐえっ!?」

 裏門に移動しようとすると、雫に襟を引っ張られた。く、首が……。

「なんだよ……」

「そんな不法侵入まがいのことして、話を聞いてもらえなくなったらどうすんのよ」

 た、確かに。今日はただ入れればいいわけじゃない。校長に話をしに行くんだ。こんな非合法ルートで入ったら、話を聞いてもらえないかもしれない。

「ちゃんと守衛さんに話をして入れてもらいましょ。ついでに、校長先生が来てるか確認もできるし」

「守衛なんて居てもいないのと同じようなもんだろ? あのおっちゃん、いつも寝てるし」

「話を通してるのと通してないのでは大違いよ」

 まぁ、雫が正論だな。ここは雫の言うとおりにしよう。

 雫は「ちょっと待ってて」と言うと、携帯で守衛室に電話をかけた。一言二言、事情を説明する。

「校長先生、やっぱりいるってさ。今開けてくれるって」

「話が早いな」

 待つこと数分。見慣れた守衛のおっちゃんが門の鍵を開けてくれて、俺たちは校内へと入った。

 うーん。朝の誰もいない学校ってのもなかなか新鮮だ。普段じゃ有り得ない。

「ここはなんですか?」

 昇降口から中に入って、俺たちが手馴れた靴を履き替えるという作業をしていると、レナがきょとんと下駄箱を見渡す。

「ここで靴を履き替えるんだよ。レナさん。室内用の靴が学校から支給されるの」

「そうなんですか。育成学校では外も中も関係なかったんですよね」

 まぁ今は俺たちも室内靴は家に持って帰ってるから、来客用のスリッパだけど。俺、スリッパってぺったんぺったん音がするから苦手なんだよな。

 えっと、校長室は職員室の隣だったな。普段は前を通るだけで、中に入ることなんてない。ちょっと緊張するな。

「守衛のおっちゃん。校長に話を通しておくって言ってたよな?」

「そうね。だからさっさと乗り込みましょ」

 乗り込むって。お前は殴り込みにでも行くつもりか? なに臨戦態勢になってるんだよ。

 職員室の前を通ると、他にも先生が何人か来てるみたいだった。明日から学校ともなると、やっぱりいろいろ準備があるんだな。先生も大変だ。

「失礼しまーす」

 ノックをしてから校長室の扉を開ける。基本、学校の扉って引き戸なのに、校長室は普通の扉だ。重い……無駄に豪華な作りだな。

 校長室に入ると、中には歴代の校長であろう写真がずらりと飾られて、来客用のソファーが二つ。真ん中には大きなテーブル。そして奥には校長の机と椅子。床……これ絨毯か? なにこれ……他の教室と違いすぎるだろ。なんかスリッパで絨毯の上って歩きづらいんだけど。そもそもスリッパで歩いていいのかも疑問。

「……いないわね」

 そうだそうだ。部屋の作りなんてどうでもいい。

 肝心の校長の姿が見えない。守衛のおっちゃんはいるって言ってたのに。職員室に行ってるのかな? それともまさかもう帰ったとか……。

「わぁ~……すごいですねぇこれ!」

 レナが見上げていたのは、めちゃくちゃでかいトロフィーだった。中心にはこう書かれている。『全国高等学校栄誉賞』と。なにこれ? 聞いたことない賞だな。

「こんな賞あんのか?」

「ようするに、学校のためにこれだけ貢献しましたよってことじゃないの?」

 ウチの校長って、実はけっこう凄かったりするの? 俺にとっては、ただ朝礼とかで話の長いおっさんなんだけど。あの顔で実はできる人間だったのか。いやまぁできる人間だから校長なんて立場になれるわけなんだけど。

「お兄ちゃん。校長先生がいないなら仕方ないよ」

「むー……明日の朝一でまた直談判に来るしかないか」

 いないものは仕方ない。今日は帰ろうと言う雰囲気になったときだった。

「……あなたたち、ここでなにしてるの?」

 入口から女の人の声がした。

 振り返ると、腰まである長い黒髪で、女物のスーツに身を包んだ、美人だけど、どこか冷たい印象を受ける表情をした女性が立っていた。眼鏡の奥にある、少し尖った黒い瞳が俺たちを順番に見てくる。

「私服でなにをやっているのかしら? 今は夏休み中よ。生徒が校内に入るのは許されてないわ」

 容姿と同じで、声も冷たい感じがする。でもその口調から、この人が先生であろうと予想はできた。

 でも、こんな先生いたか? 学校にいる先生なら、一度は見たことがあるはずだけどな。新しく来た先生かな。

「あ、あのあの……私たちはその……」

 瑠璃が慌てて弁解しようとするけど、口が回ってない。こういうことが一番苦手な瑠璃が、なんで一番最初に口を開いたんだか。仕方ない。助けてやろう。

「俺たち、校長先生に会い来たんすけど。ちゃんと話が通ってるはずですよ。守衛さんに確認してください」

「そうですよ。私たちが勝手に入ったみたいに言うのはやめてください」

 俺と雫の一斉攻撃にも、女性は眉一つ動かさず、手帳を取り出してなにかを確認した。動じない、というか……俺たちをなんとも思ってないって感じだな。

「……ああ。そういえばそんな報告がありましたね」

 手帳をしまって、女性は手に持っていた書類を校長机に置くと、そのまま椅子に座った。

 いやあの……そこ校長の椅子なんだけど。

「あの、校長先生はいないんすか?」

「私がいるでしょ」

「いや、そうじゃなくて。俺たちが用あるのは校長先生で」

「だから私よ」

 ……話の通じない大人だな。

「俺たちが用あるのは朝礼で話の長い白髪の顔がしわくちゃなおっさんの校長先生です」

「それは前校長ね」

 ……は?

「前校長は、一学期限りを持って退任したわ。二学期からは私が校長です。前校長の娘である私がね」

 なんだって?

 前校長が退任? そんな話、夏休み前は聞いたことないぞ。そんなに突然退任とか決まるもんなのかよ。本当にそうなら、終業式とかでなにかしら報告があったはずだ。

 こそこそと、俺は雫と瑠璃に小声で喋った。

「そんな話聞いたか?」

「私は聞いてないわ」

「私も……」

「娘とか言ってるけど、本当か? 成り済まし詐欺とかじゃねぇの?」

 そもそも、見たところまだ二十代。こんな若さで校長とかなれるの? いくら娘だからって。経歴とかいろいろ関係あるんじゃないのか。校長の後釜を狙ってた教頭先生が涙目になってるぞ。

「あのー。あなたは成り済まし詐欺なんですか?」

(((レナァァァァ(さん)!?)))

 そんな直球で聞いたら駄目だって! もしこいつが本当に成り済まし詐欺だったら、急に口封じで襲ってくる可能性だってあるんだぞ! 雫がいるから返り討ちできると思うけど。

「……」

 女性は無言で俺たちをひと睨み。それから机の中からなにかを取り出した。

 これは……教員免許? 正式名称は教育職員免許状だっけ?

 そこにある名前は……五十嵐瞳。

 確か俺が知ってる一学期までの校長の苗字も……五十嵐だったな。

「これで信じられるかしら? 一学期までは別の学校で教頭をやっていたわ」

 教頭って。その若さで? もしかしてエリートなのか。

偽造の可能性もあるけど……そこまでして疑う理由もとくにない。大体、他にも先生は来てるんだ。そんな不審者がいたら見逃すわけないし。この人は本当に前校長の娘と見ていいだろう。

 問題は……なんで前校長が退任したのかだ。

「前の校長先生はどうしたんすか?」

「……昔治療した腎臓癌が転移して再発したの。だから今後は治療に専念するために退任したのよ。もう歳だから。だから私が引き継いだの。前から決まってたことよ。他の先生方も知ってらっしゃるわ」

 どうやら全ては俺たちの考えすぎだったらしい。

 ということは……もはや俺の母さんの顔はきかないってことか。これは厄介なことになった。この人、融通きかなそうな顔してるもんよ。

「それで、なにかしら? 私は忙しいのよ。用なら手短に」

「私は二年C組の鳥海雫です。単刀直入に言います。ここにいるレナを、私たちと同じクラスにしてください」

 本当に単刀直入に言いやがった。もうちょっと前フリとかあってもよかったんじゃ……。

「同じクラス……?」

 校長先生はさっき持ってきた書類の中から、一枚の紙を取り出した。その後、レナのことをまじまじと見てくる。

「明日から編入する、レナさんね。苗字がないなんて珍しいわね……外国の人かしら?」

 いえ。神界出身です。

「それで、あなたたちの要件は、レナさんを鳥海さんたちと同じクラスに編入させてほしいってことね?」

「はい」

「無理ね」

 即答。表情を一切変えないまま。

「なんでですか!」

「レナさんは二年A組に入ると、もう決まっているからです。いまさら撤回できません」

 優等生の模範解答。これは覆すのが面倒だぞ。真面目系を相手にするとこれだから。

 明らかに、雫はイライラしている。手を出さないかヒヤヒヤする。それだけはやめてくれよ? 校長に掌底とか洒落にならないから。

「レナは私たちが面倒見ます。だから同じクラスにしてください!」

「そ、そうだそうだー」

 小さく俺も応援。瑠璃はオロオロ。レナはきょとん。なんだこの状況?

 それでも、校長先生は、やっぱり表情も変えず、いや、そもそも俺たちを見てもいない。興味が全くない様子。それが雫のイライラをさらに加速させる。

「聞いてるんですか!?」

「聞いています。そして聞いたうえで、駄目だと言ってるの」

 これが女の戦いか……俺の目には、龍と虎が相対してるようにしか見えない。すっげぇ迫力。

「特別扱いは許されません。クラスは全生徒公平に、教師が選定して決めているの」

「別にクラス替えとかじゃないんですから! 編入するクラスをお願いしてるだけです!」

「同じことです」

 どっちも譲らない。なんか俺、帰りたくなってきた。

「瑠璃瑠璃! これ本当に大きいですよね~」

 おまけに話の中心人物であるレナは、さっきのトロフィーに夢中だし。その間にいる俺はどうすればいいの? こういうのって間の立場が一番辛いんだけど。

「生徒の意思も少しは尊重したらどうですか!」

「それは意思じゃなくてわがままと言うの。わがままを言わないって、両親から教わらなかったかしら?」

「そんなこと言ったら生徒の言うことは全部わがままってことで片付けられちゃうじゃないですか!」

「そうですね。あなたみたいな生徒が言うことは特に」

「そんな硬い考えだと生徒は付いて行きませんよ!」

「付いて行くか行かないかじゃないの。付いてこさせるの。それが教師の務めよ」

「話が通じない人ですね!」

「お互いにね」

 校長室は完全に修羅場と化した。一方はヒートアップ。一方は常にクール。この正反対同士の戦いは終わるのか?

 これは職員室から先生を呼んできたほうがいいんじゃ……なんて思ってると、

「あ~~~もう……」

 レナが肩にかけてた鞄が、声と共にもぞもぞと動き出した。

 こ、この声は……。

「うるさいなぁ! 昼寝ができないって言ってるだろ!」

 ガバッ! と鞄から勢いよく飛び出してきたのは……やっぱりカールだった。おまっ……付いてきてやがったのかよ! ていうか昼寝してるなら家でしてろ! 鞄で寝てるんじゃねぇよ!

「きゃあっ!」

 いきなり飛び出してきたカールに驚いて、レナがよろけて棚に体を盛大にぶつけた。

 トロフィーが乗ってる棚に。

「「あ」」

 俺と瑠璃が同時に声を出したときにはもう遅かった。

 レナがぶつかった衝撃で、縦方向に長いトロフィーはバランスを崩して、そのままグラリと床へ落下。

「させるかぁぁぁぁ!?」

 俺はスライディングでトロフィー確保へと動いた。

 絶妙のタイミングだ! これならいける! トロフィーは守れる!

「あ」

 タイミングは絶妙だった。だがしかし……俺の反射神経が、トロフィー落下の速度に追い付けなかった。

 結果。トロフィーは床に落ちて、完全に大破。

「……」

「……」

「……」

 しばし、床で大破したトロフィーを無言で見つめる俺、瑠璃、レナの三人。

 やっちまった……。

「な、なにをやってるのあなたたち!」

 校長先生が初めて表情を崩した。慌ててトロフィーの欠片を拾い集め、呆然とする。

 ……弁償。できないよな? トロフィーだもん。過去の栄光はさすがに弁償対象じゃない。

「……これは、父の努力の結晶なのに……」

 泣きそうなぐらい、校長先生は声を震わせていた。すごい罪悪感……。

「そんなに大事なら金庫にでもしまっておけばよかったんじゃないですか?」

 そんな校長先生に、容赦ない雫の辛口言葉。雫……この状況だとお前が悪者だぞ。

「……なに? この状況は?」

「黙れ黒猫」

 俺はとりあえずカールをレナの鞄に押し込んだ。そもそもこいつのせいだ。ちょっと強めに押し込んでおいた。しっかりとファスナーを閉める。今度出てきたら窓から放り投げよう。

「……」

 校長先生は無言。無言でその場に座り込んだままだ。

 相当ショック受けてるぞ。ど、どうすればいいんだ? これ。

「ごめんなさい! すぐに直しますね!」

 レナはスマートバンクを取り出して、指先で操作。

 あ、そっか。レナならこれぐらいすぐに直せる。神力アイテムを忘れてた。

 『あの頃に戻りたい手榴弾』を転送したレナは、校長先生の持ってたトロフィーの残骸に向かってぽいっと投げた。レナ、相変わらず説明もなしにアイテム使うなって。初対面相手だと、なかなか凶悪なイメージのアイテム多いのに。

「え?」

 校長先生、驚愕。そりゃそうだ。目の前で手榴弾投げられたんだもん。驚いた顔も、さっきまでの表情を考えると想像できなかったから、なんかちょっと可愛く見えた。

「きゃあっ!?」

 きゃあ。なんて声出せるんだなこの人。意外。

 手榴弾から煙が飛び出して、トロフィーを包み込む。それからほんの数秒。煙が晴れたときには、

「……!?」

 トロフィーは元通りになっていた。

 直ってよかったけど……これはこれで問題だ。神力アイテムを見られた。どうやって説明すればわかってもらえるか……。

「せ、先生……これは新手の手品みたいなもので、実はトロフィーは壊れてなかったんですよ~的な」

「神力アイテム……」

「え?」

 校長先生。今神力アイテムって言った? なんでその単語を知ってるんだ?

 神力アイテムなんて、一般人は知らないはずなのに。

 校長先生はさっきまでの尖った冷たい目じゃなくて、好奇の目でレナを見上げた。

「レナさん。あなたもしかして……神子?」

 校長先生の口からでた、神子という単語。

 校長先生は……神子のことを知っているのか?


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