story14「最高の願いごと」
田舎地区にある、廃工場。
神子食いに追いかけられ、レナたちが逃げ込んだ場所だ。
いや、正確には追い込まれたと言える。ここでは助けを呼ぼうにも呼べない。雫と瑠璃の携帯は丘で落としてきてしまった。
「う……」
「雫さん! 大丈夫……」
レナと瑠璃を必死に神子食いから守り、全身に傷を負った雫。もはや立っていることもできず、座り込んで肩で息をしている。
レナは今、そんな二人を庇うように神子食いと対峙している。スマートバンクを手に持ち、いつでも神力アイテムを転送できるようにして。
しかし、実際には転送できても神子食いを倒すことはできない。
神力アイテムは基本的に攻撃に使える物はない。Bランク以上の神子が持つ、戦闘用のアイテム以外には。
Fランクの神子であるレナでは、神子食いに対抗する術がないのだ。
「みこ……みつけた……たべる……みこぉ……」
「……」
神子育成学校で話には聞いていた神子食い。レナも実際に目にするのは初めてだった。
神界での異形の者。王神たちでさえ、束になると面倒だと感じるほどの力だと教わった。神力を求め、食べ、存在を維持する。神子がゼウスから神力を与えられるように。
出会ったら逃げろ。
そう教わっていた。
戦う術のない神子にとって、脅威以外の何物でもない。
だからなんとか逃げようとしていたのだが、もう逃げられない。雫は怪我で動けない。瑠璃は恐怖で震えている。逃げ切れる要素がどこにもないのだ。
でも、大丈夫だ。
レナはこの場を収める術がわかっている。
そしてそれはきっと……。
葉介にとっても、一番苦しくない結果になると思っていた。
「瑠璃」
怯える瑠璃に優しく声をかけるレナ。なにかを決心したかのように。
「レナさん……?」
「私が囮になります。神子食いの狙いは私ですから、その間に逃げられると思います」
驚きを隠せず、瑠璃は目を見開く。それは雫も同じだった。
「レナ……駄目……よ……」
雫の弱々しい声に、レナは笑顔を向ける。そしてスマートバンクから神力アイテムを転送する。
「『元気になぁれ乾電池(単一)』と『スキルアップル』です。完全には治らないと思いますけど、怪我を少しでも回復して、スキルアップルで脚力を強化すれば、なんとか動けると思います」
雫はそんな話は聞きたくなかった。
それは、レナが犠牲になる前提の話なのだから。
「葉介に……謝っておいてくれますか? 恩返しができなくて……ごめんなさいって」
「レナさん!」
レナは神子食いに向き直り、もう振り返らなかった。なにかを言おうとした雫。だが口がうまく動かない。口でどう言ったところで、今の自分にはなにもできないからだ。
「……」
レナは体にぐっと力を入れる。
逃げ出してしまわないように。せめて、雫と瑠璃が逃げるまでは。
この感覚は前にもあった。よく覚えている。
前に人間界に実習に来たとき、神子であることに自信を失くし、逃げてしまおうと思ったとき。必死に逃げないように、自分に言い聞かせていた。
(あのときは……)
人間の男の子に救われた。
心細く、一人、丘に座っていたときに、声をかけてくれた男の子。
「みこ……たべる……みこぉぉっ!」
神子食いが大口を開けて、レナに向かってきた。地獄の底のように、底が見えない大口。その瞬間、レナの体を恐怖が包み込む。
だが逃げない。
逃げるわけにはいかない。
七年前のあの日から、逃げることはやめたのだ。
『レナ! 今日から君の名前はレナ。だよ!』
名前をもらったあの日から――。
「レナぁっ!?」
「……え?」
俺の叫び声に、驚いているレナ。でもそんな場合じゃない! 俺は手に持った鉄パイプを両手で握り締め、振りかぶる。そのまま力いっぱい振り抜いた。
「――!?」
神子食いであろう化物の頭に鉄パイプがヒット。神子食いも吹っ飛んだけど、俺の腕にも負担がかなりきた。くっそ。なんて硬い頭だ。
「葉介……」
レナはまるで幽霊でも見たかのような顔をしてる。ここにいるはずのない奴を見た。そんな感じ。確かに、俺がかけつけるなんて思ってもなかったのかもしれないけど。
レナはとりあえず怪我はしてないみたいだ。瑠璃も涙で顔がぐしゃぐしゃだけど無事。でも……。
「おい。雫。大丈夫かよ」
雫は見ただけで重傷だとわかる。これだけ弱ってる雫は見たことがない。神子食いから二人をずっと守ってたんだろう。無茶しやがって。
「……葉介にしては……良いタイミングで……来たじゃない……の……」
「いいから喋るなよ……って、うぉっ!?」
瑠璃が抑えていた感情を爆発させたかのように、大声で泣きながら俺に抱きついてきた。
「お兄ちゃん!?」
「……よしよし」
さすがに抱きつかれてラッキーとかそんなこと思ってるときじゃない。落ち着かせるためにとりあえず頭を撫でる。体がまだ震えてる。相当怖かったんだろう。
でも正直、俺が来たからって事態が好転するわけじゃない。これからどうするか。
「よ、葉介! 二人を連れて逃げてください!」
俺が来たことで、少し状況に対して意識が抜けていたレナが、頭をぶんぶん振ってから叫んだ。
「……レナを置いてか?」
「そうです! 狙われてるのは私です! だから早く!」
「そりゃ無理だな」
何度も言わせないでくれ。
俺は自分より他人の涙が気になる馬鹿なんだよ。
「俺はレナを置いて行くほうが百倍嫌だ」
「……」
そうだ。とりあえず、俺はレナに言いたいことがあるんだ。
この数日間、ずっと悩んで出した答えを。
「レナ。お前……今こう思ってるよな」
「え?」
「自分が神子食いに食べられちまえば、俺が願うことで、自分が消えることはない。俺が……レナを消しちまったって思うことはないって」
「……」
黙ってるレナ。どうやら当たりだったみたいだ。
でも、そんなのは違う。
「俺が願ってるのはそんなことじゃない。俺が……俺が心から本気で願ってることは――」
人間の願いを叶えることが、神子にとって最高の栄誉だったとしても……それが正しいことだとしても、それが俺たちにとって本当の意味で正しいことだとは限らない。
だったら俺は……。
俺がこうするべきだと思ったことを願うだけだ。
「レナ!」
「は、はい」
「これからもずっと俺たちと一緒にいてくれ!」
無駄に大きな声になる。
でも、そうでもしなきゃ言えなかった。
「え……え?」
レナも戸惑ってる。そりゃそうだ。俺は無茶なことを言ってる。
だってその願いは、レナに神子の仕事を放棄しろと言ってるのと同じだから。
つまりは神力を使わないで、ただ、俺たちと一緒にいてくれるだけでいい。
それが俺の願い。
俺がそうするべきだと思ったことだ。
神子の掟とかそんなのは関係ない。俺はそうしたいんだ。
「神子の仕事が大事なのはわかる。それでも俺は……割り切れない。レナが消えちまうのを黙って見てられない」
上っ面だけじゃない。
「消えないでくれ。レナ」
心の底から、本気で……俺はそう思ってるんだ。
だから俺はそれしか願えない。
「……」
レナは胸をぎゅっと押さえて、うつむいている。
俺も内心ドキドキしてた。レナの答えを聞くのが怖くて。
これで、レナに拒否されたら……俺は他の答えを見つけられる自信がない。
「みこ……みこ……みこぉぉぉぉ!」
「げっ!?」
俺が殴り飛ばした神子食いが起き上がってきた。もともとあんなので倒せるとは思ってなかったけど、もう少し空気読めよ! 今大事なところなのに!
「くっそ……」
鉄パイプを握り締める。けど正直こんなので倒せる相手じゃない。サンにも絶対に手を出すなって言われたけど、もう手を出しちまったからな。後はどれだけ手を出しても同じだ。サンにはさっき『お願いアンテナ』で連絡したから、なんとかそれまで時間を稼ぐ。
「瑠璃。雫を連れて逃げろ」
「え……嫌だよ! お兄ちゃんも一緒に……」
「俺は死なないっての。可愛い瑠璃を残して先に逝けるか」
無理やり笑顔を作る。瑠璃を安心させるために。
心臓バクバクだけどな。ぶっちゃけ逃げたい。
「みこ……たべる……みこぉ……」
やばい! あいつ、さっき攻撃した俺なんか見てもいない。レナだけをマジで狙ってやがる!
「こんの野郎!」
先手必勝で鉄パイプを横薙ぎに振りかざす。でも、俺はまだ攻撃のモーションに入ったばっかりだってのに、
「え?」
いつの間にか、神子食いが俺の腕を掴んでた。あまりの力に、俺は身動きが取れない。
「うわっ!?」
そのまま俺の体は軽々と持ち上げられ、鉄くずの山へと投げ飛ばされた。
「い……って……」
いままで感じたことのないほどの激痛。息をするのを忘れるほどだった。慌てて呼吸をすると、さらに痛みは増してくる。背中をおもいっきり打って、鉄くずで体のあちこちが切れてる。あーくっそ。一撃でこの様かよ。
「みこ……みこぉ……」
でも俺の必死の攻撃のおかげで、神子食いのターゲットが俺に移ったみたいだ。よし。これでひとまずは目的達成。あとは俺に時間を稼ぐほどの体力が残ってるかどうかだけど。
「みこぉぉぉ!」
あー無理かも。全然体が動かない。雫はあれだけボロボロになりながらも二人を守ってたのに、情けないったらありゃしねぇ。
「って、うおっ!?」
銃声と共に、神子食いの体を数発の弾丸が貫通した。でも、神子食いはなんともなさそうにしている。弾丸が貫通した痕も残ってない。これはもしかして。
「葉介から離れてください!」
やっぱり。レナの『黄泉送りの殺劇』だ。でもあれは人間の魂を抜くためのアイテムだから、殺傷能力はない。神子食いには通用しない。
「レナ! レナも逃げろ! 俺は大丈夫だって!」
「葉介! 私は……私は!」
『黄泉送りの殺劇』を構えながら、レナは必死に声を振り絞る。俺になにかを伝えようとして。
「私も……もっとみんなと一緒にいたいです! 願いを叶えて消えてしまうのが、使い捨て神子の運命だとしても……それでもやっぱり私は……みんなと……葉介と一緒にいたい!」
レナが力強く口にした答えは……俺が最も望む答えだった。
ずっと、それを聞きたかったんだ。俺は思わず笑った。嬉しさのあまり。
……それを聞いたら百人力だ!
「よっしゃあ! じゃあみんなで一緒に帰るぞ!」
「……はい!」
百人力とは言ったものの、体の痛みが引いたわけじゃない。なんとか起き上がるも、鉄パイプを握るだけで精一杯。さぁて。どうしたものか。
「葉介! 伏せて!」
「へっ?」
その声が聞こえたのと同時に、神子食いの体が俺の方に向かって飛んできた。あっぶねっ!? もう少しで巻き込まれそうになった。どうやら神子食いはなにかしらの力で吹っ飛ばされたみたいだ。
「……雫。お前、動けたのかよ」
なにかしらの力。それは雫の怪力だった。掌底の構えのままでいた雫がそれを物語る。
「レナにもらった『元気になぁれ乾電池(単一)』と『スキルアップル』のおかげ。でも、正直今の一撃で精一杯よ」
確かに、雫はなんとか立っているだけという感じだった。元気になぁれ乾電池は大怪我は治せないって言ってたからな。スキルアップルで腕力を二倍にしたことで、体にも負担が来たんだろう。
神子食いは吹っ飛んで一度ダウンしたものの、すぐに起き上がった。やっぱり、俺たちがいくら攻撃しても駄目みたいだ。
「みこ……みこぉ……」
さっきから神子神子言いやがって。一言言ってやりたくなった。
「お前みたいな奴にレナの神力はもったいねぇよ。使い捨て神子なんて言い方は嫌いだけどな。逆に言えば……使い捨て神子の神力は一度きりの力だ。他のどんな力よりも貴重で神聖なんだよ!」
「みこぉぉぉぉっ!?」
げっ!? 突っ込んできやがった! 逆ギレかよ! ていうかさすがにそろそろ俺じゃどうしようもなくなってきたぞ!
「「葉介!」」
レナと雫の声が重なって俺の名前を呼ぶ。俺の目に映ったのは、振り下ろされる神子食いの右腕――
「あれ?」
――じゃなくて、肩からスッパリと切断されて飛ぶ、神子食いの右腕だった。
おもわず座り込んだ俺の前にふわりと着地したのは……刀を抜刀して構えてるサンだった。た、助かった。
「……おい。天坂葉介」
「は、はい?」
あ、そうでもなかった。サンの背後にゴゴゴゴって効果音が見える。めっちゃお怒りになっている。
「神子食いには手を出すな。お前の手にはおえない。そう言ったはずだ。聞こえていたよな?」
ギラリ。と刀を光らせながら振り返るサン。さ、殺気だ……殺気を感じるぞ……。
「す、すいませんでしたぁ!」
殺られる。そう悟った俺はすぐに土下座した。
「……まぁいい。結果的に、お前のおかげで間に合った」
頭を下げてたからわからなかったけど、サンが少し笑った、ような気がした。
「使い捨て神子の力は一度きりの力。だからこそ貴重で神聖。確かにお前の言うとおりかもしれないな。少しだけ見直してやろう」
あれ? もしかして褒められてる?
俺が顔を上げると、サンは神子食いに向かって刀の切っ先を向けて構えていた。素人の俺が見てもわかるほど、隙がない構えだ。神子食いも攻めあぐねているのか、立ち尽くしている。
「大丈夫なの? 513号」
今頃やってきたカールがサンに言う。そして、
「問題ない。低級の神子食いだ。一瞬で終わる」
当たり前のようにそう答えるサン。
そこからは本当に一瞬だった。
「――!?」
俺に見えたのは、神子食いの四肢が切り離されたことだけ。そして、
「――死ね」
上空から刀を上段に構えて、四肢を失った神子食いを頭から両断するサンの姿だった。
「――!!??」
声にならない悲鳴をあげ、神子食いの体は光の粒になって、そのまま消えていった。
本当に一瞬で終わったよ……さすがAランクの神子。神子食いを撃退するために戦闘用の神力アイテムを持たされているだけある。
「『神力刀』は神力を斬る刀だ。低級神子食いなど、恐るるに足らん」
え? なんだと……名前がまともだ! ゼウスもたまにはちゃんとした名前を付けるんだな。
「513号。その刀の名前は『斬○剣はパクリになるから神力刀にしよう』でしょ?」
「前半と最後はいらん」
……なんだよ。サンが勝手に名前短くしただけか。前半と最後いらないってのは同意だけど。やっぱりゼウスのネーミングセンスは理解できない。
「はぁ~~~~……」
終わったと思うと、全身の力が抜けた。んでもってさっき吹っ飛ばされたときの傷が痛み出す。マジでやばかったな。
「……」
レナも安心して息をつきながらその場に座り込んだ。
「だ、大丈夫?」
俺の怪我を見て、瑠璃がおろおろとする。
「めちゃくちゃ痛いからぎゅっとしてくれ」
「……死ぬ?」
殺気。手負いのはずの雫が有り得ない殺気を放っている。さっきまでの弱々しさはどこ行ったんだよ。
「レナ! 大丈夫だったのかい?」
カールがレナに駆け寄って、周りをパタパタと飛びながらクンクン犬らしい声を出す。……犬らしい? いや、お前猫だろ。そんなカールの頭をそっと撫でながら、レナは笑顔を作った。
「大丈夫です。みんなが……守ってくれましたから」
真っ直ぐな目で見られて、ちょっと照れ臭くなる。実際、ここまでレナを守ったのは雫だし、神子食いを倒したのはサンだ。俺は大してなにもやってないけど。
「……まぁ、人間にしてはよくやってくれたんじゃない」
相変わらず生意気な黒猫だ。猫に人間にしてはとか言われたくないっての。
「……レナ」
和やかムードをぶち壊すかのような、サンの真面目で少し鋭い目。レナはなにを言われようとしているのかわかってるのか、またうつむいた。
「神子食いはいつこっちの世界に出てくるかわからない。戦う力のない神子は常に危険がある。早く……願いを叶えるんだ。でないと、神子としての生涯を全うできずに終わる可能性だってあるぞ」
「……」
レナは答えない。
「神子食いがこっちの世界に出ないようにできないのかよ?」
「神界とこっちの世界を繋ぐ扉はいくらでもある。王神様と言えど、全て把握するのは不可能だ」
「じゃあ人間が襲われる可能性もあるってことか?」
「基本、奴らは神子を狙ってしかこっちの世界に出てこない。人間に神力はないからな」
ああそっか。確かにこっちの世界に神力なんて存在しないから、わざわざこっちに出てくる神子食いはいないってことか。仕事中の神子がいない限りは。
「天坂葉介。お前はそんなことを気にしている場合ではない。さっさと願いを決めろ」
「……願いならもう決めたよ」
俺の答えに、サンとカールは驚いた顔になった。そしてレナを見る。
「レナ。俺の願い……聞いてくれるんだよな?」
「葉介……」
さっきは自分の気持ちを全て吐き出してくれたレナ。
でも、やっぱりサンとカールがいると躊躇うのか、すぐに答えてはくれない。
いいさ、いくらだって待つ。レナが答えてくれるまで――。
「……?」
突然、周りの空気が変わった気がした。
何でだ? 何だこの……変な違和感は。
それはすぐにわかった。
レナを覆う……大きな影で。
「!?」
ロープで吊られたまま放置されていた鉄骨が……ユラユラと揺れていた。
人間の危険予知能力とでも言うのか……それがどうなるか、俺にはすぐにわかった。
それを証明するように、鉄骨を吊っていたロープはシュルシュルと解け、ブツン! と切れた。支えを無くした鉄骨は……真っ直ぐに落ちて行った。
レナの上に――
「レナ!?」
悲鳴に近い、俺の声。
鉄骨は重力に従い、レナへと迫る。逆らえない……力で。
その時だけ、俺は体の痛みを忘れた。
気が付いたら体が動いていた。
遅れてサンも刀に手をかける。でも、間に合わない。
間に合うのは俺だけだ。
驚く程体が軽い。怪我でボロボロなはずなのに……一体どうしたんだ? 死ぬ気になれば人は痛みさえ感じなくなる。そんな事をテレビで聞いた。ああ……そんな感じか。これは……。
体当たりのようにして、レナの体を突き飛ばす。
けど……俺の体はそこで力尽きたように、ガクンと力が抜けた。
「葉介ぇっ!?」
俺を呼ぶレナの声が聞こえた。
でも……それを最後に、俺の耳には何も聞こえなくなり、目の前が真っ暗になった。
やっちまった。今回は本当に。
でも、これでいいんだ。
レナが怪我するほうが、俺は百倍嫌だ。
自分の涙より他人の涙が気になる馬鹿。
レナも言ってたじゃないか。
それが俺。
だから――俺はこれでいいんだ。




