新しい学校へ
「酷すぎる…有紗のバカ」
有紗の隣で息を荒くしながら、半泣きになっているのは、双子の姉の清香。
「ごめん。置いてくるつもりはなかったんだけど…」
「今日から、一緒に同じ学校に通えるのに、その冷めた反応は酷すぎるよー」
有紗の横で清香が怒っているのには理由がある。有紗が、トイレに籠もっていた清香を置いてきてしまったのだ。
「…それ以前に、有紗、私の学校の位置知らないでしょ?」
「…うん」
訳があって、有紗は双子の姉の通う学校に、五月という中途半端な時期に編入するということになってしまった。それは、自業自得ともいえるのだが。
「有紗、私はあなた。あなたは私。だから、心配しなくていい。私は有紗のことを否定したりしないから」
「頼りにしてる」
無愛想な有紗に対して、ご機嫌なのは清香だ。
「さて、有紗は私と同じクラスだと思うんだよね…有紗、大丈夫?」
下からのぞき込んできた清香に有紗は微笑む。
「大丈夫だ。清香は気にするな。…この違和感の正体を突き止めるのはもうすでにあきらめている」
「有紗のその違和感の正体を、有紗は知りたい?…私と有紗は同じ母親から、一ヶ月違いで生まれた。それって、本当にどんな意味があるんだろ?」
「本来なら、そんなことあり得ないのにな。私は、どんな存在なんだろうな?」
「…有紗、気にしなくても大丈夫だよ。私たちの学校は、魔法学園だよ。だから、絶対その違和感の正体がわかるよ」
「そうだな」
有紗は、目の前に現れた巨大な学校を見上げた。
その門柱には『国立 バーミリオン魔導師学園』と表札が掲げられている。
「バーミリオンって、色の名前だよな。確か、朱だったっけ」
「あたり」
「私の前いた学校は、適性を持たない者が入学するアンバー高等学校だったし。制服は茶系のセーラーだった。この学園は朱だから、そう思っただけ」
「じゃあ、そろそろ時間だから、いこっか」
有紗は清香に腕を引っ張られながら、 今日から通う新しい学校へと足を踏み入れた。