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違和感というこの世界  作者: 音葵
1/3

始まり

初投稿です。

どうなるか作者もわかりませんが、よろしくお願いします。

 日野有紗ひのありさは、ずっと違和感を感じながら生きてきた。息を吸っただけで、この世界の空気に体が悲鳴を上げる。動けないわけではない。だが、重く澱んだ空気を体が拒絶する。

 それは、有紗の周囲の大人たちも気づいていたようで、そのことに有紗は申し訳なく思っていた。生まれた環境も、周囲の人たちにもなにも不満はない。むしろ、恵まれた環境だった。でも、身体ではなく、心が叫ぶ。ここは自分のいるべき世界ではないと。


朝、鏡を見ると、漆黒の髪と目を持つ自分が移る。有紗はその自分の姿すら違和感しか持たない。

「…私の髪と目」

この色は、日本という国において普通にどこにでもいる人間の持つ色彩だ。それなのに、有紗には、違和感しか与えない。

「私ってなに?」

毎日、自分が誰なのかわからなくなる。日野ひの 有紗ありさ、それは変わりようもないはずなのに、毎日確認してしまう。

「有紗。朝だよ」

自分とうり二つの双子の姉・清香さやかが顔を出す。

「うん。おはよう」

有紗は短く挨拶を交わすと、今日から転校する制服のセーラー服に腕を通した。


 台所に顔を出すと、母親・沙綾が朝食の準備をしていた。まもなく35になるとは感じさせない美貌を誇る彼女は、有紗を見ると優しく微笑んだ。

「有紗ちゃんおはよう。…どうしたの?不安そうな顔をして」

 彼女もまた、有紗がこの世界に対して違和感を感じながら生きていることを、初期の段階で気づいていた一人だ。

「不安そうな顔をしてる?そんなはずはないんだけど?」

 うつむく私に、沙綾は困ったように笑いながら、目の前に温めた牛乳を置いた。

「大丈夫。そんなに不安にならなくても、あなたのそばには清香ちゃんがいるじゃない。だから、胸を張って、学校行ってきなさい」

「うん」

 不安はない訳ではない。でも、このつきまとう違和感は生まれてきてから抱き続けてきたものだ。

 有紗は、新しい学校に通うべく、玄関の扉を開けた。

 


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