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まさかこんなことになるとはね…

作者:

ふと思いついて自ブログにアップした『二度と…(仮)』の第1話の改造版です

きゃーきゃー騒ぎながら歩いてくる団体の存在に思わずため息が出る

学園を出ればあの光景を見なくてすむと思っていたが甘かったか…

時間ギリギリまで図書室で時間をつぶすか、さっさと帰ればよかった


ため息をつきながら正門を出ると一人の男の子が駆けて来た

「お姉ちゃん!」

「玲君?どうしたの?」

玲君は最近、近所に引っ越してきた青柳家の一人息子だ

たしか、小学校2年生と言っていただろうか

どうやら、うちの両親と青柳家の夫婦は知り合いらしく、挨拶に来た青柳家の面々に両親が驚いていたがものすごく歓迎していたのを覚えている

玲君は最初は緊張していたけど、毎日朝夕と挨拶を交わしているうちに懐かれたのだった

「あのね、お姉ちゃんに相談したいことがあるの」

「相談?」

「うん」

「じゃあ、歩きながら話そうか」

後ろからくる団体と玲君を鉢合わせたくない

あの団体はご近所でも有名な迷惑団体だ

何度も彼らの親の顧問弁護士と我が学園の教師がご近所様に謝っているが本人たちはどこ吹く風…

全く反省をせず騒いでいるのだ

自分たちはセレブでエリートだから何をしてもいいとか何とか言っていたな…

うん、その話を聞いた時にあいつらを殴らなかった私のことを褒めて欲しい

いいかげん、学園側も迷惑団体の全員に罰を与えてくれないものか…

まあ、多額の寄付を貰っているから難しいだろうが…

我が学園の評価は急下降中だ…

良家のご子息・ご令嬢が通っているセレブ校として有名だった我が学園も今では地に落ちたものだ…

ご近所の方たちも慣れたのか、諦めたのかクレームは減ったという

以前に比べて減ったがなくなったわけではない

いや、もしかしたら裏で金銭のやり取りがあったのかもしれないな

この迷惑団体の中心にいる人物は悲しいことに私の幼馴染だ

以前、何度も周囲に迷惑をかけていると忠告したが無視されたので私もそれ以上は放置した

話を戻そう…


私が手を差し出すと一瞬きょとんとした表情を浮かべた玲君だったが、すぐに嬉しそうに笑うと私の手をぎゅっと握り締めた

「えへへ、お姉ちゃんと一緒に帰れて嬉しいな~」

ブンブンと腕を振りながら笑っている玲君に私も自然と笑みが浮かぶ

玲君の笑顔にとても癒されるのだ

弟がいたらこんな感じなのかな~


横断歩道で信号待ちをしていた時、信号が変わるまであと少し…という時

騒いでいる連中の一人が玲君にぶつかり、玲君が横断歩道に突き飛ばされた

「玲君!」

私はとっさに玲君の手を引っ張った

信号無視をして猛スピードで走行してくるバイクが視界に入ったからだ

玲君はビックリした表情を浮かべている

「お姉ちゃん!」

玲君の声と急ブレーキの音とぶつかる衝撃音が当たり一体に響いた


何かが当ったと思った次の瞬間、強烈な痛みが体全体を貫いた


ああ、撥ねられたんだ


どこか冷静な自分がいた

私の側に玲君が走り寄ってきた

「お姉ちゃん!お姉ちゃん」

と泣きながら私にすがり付いていた

周りは騒然としている

誰かが『救急車を呼べ!』『警察に早く連絡を!』と怒鳴っている

騒いでいた連中も目の前で起こったことにパニックを起こしているみたいだ

「・・れい・・・くんは・・・・だい・・じょうぶ?」

息をするのも辛い

でも、玲君の無事だけは確かめたかった

玲君は大きく何度も何度も頷いた

「そう・・・・・・よか・・・・・・った」

私の意識はそこで途切れた




次に私が目にしたのは


自分の葬式だった


私は空に浮かんでいた

空に浮かびながら自分の葬儀を眺めている

私の隣にはやたらイケメンの青年が同じように葬儀を眺めている

このイケメンは私を天界に連れて行く役人だという

本来ならすぐにでも天界に連れて行く手はずだったらしいが手違いでもうしばらくここにいなければいけないらしい

まあ、自分の葬儀を見れるなんてある意味貴重よね~と他人事に思っている私

「こじんまりとした式だな」

「当たり前よ、親族だけなんだもん」

「友人たちは?」

「………知らせてないみたい」

こじんまりとした親族だけのささやかな葬儀だ


葬儀が終わりに近づいた時

私が通っていた学園の制服を纏った人が数人、葬儀会場に入ってきた

驚いている私の両親に深々と頭を下げている

父が先頭にいた男子生徒の胸倉を掴んでいた

「なぜ…なぜ…お前が!二度と私たちの前に姿を現すなといったはずだ。だから学園側にも葬儀の日付は生徒たちには教えないでくれと頼んでおいたのに…」

胸倉を掴まれている男子生徒は抵抗せず父の怒声を受け止めていた

「……すみません」

小さくつぶやく彼の声は涙声だった

父は彼から腕を離すと

「これが最後だ」

父はそういうと席に戻った

母は黙って焼香する彼を見つめていたが、焼香を終えた彼が前に立つとすっと立ち上がり


パチーン


思いっきり彼…氷川駿の頬を叩いた

会場にいた人たちが驚いたように母を見た

母は涙を浮かべながら

「あなたは…娘が何度も周りに迷惑をかけていると忠告したのに無視をして……あげくに私たちの娘を殺した」

「かあさん、やめないか」

父が母を抑えようとしているが母はやめなかった

「返して…返してよ!私の娘を返して!私たちの宝を返して!」

怒り狂う母に私は思わず母のもとに駆け出した

『お母さん、もうやめて!』

もちろん、私の声は母には届かないと分かっている

だけど必死に母を抱きしめながら

『お母さん、私は幸せだったよ。お父さんとお母さんの娘に生まれて幸せだったよ。先に死んじゃってごめんね。親孝行できなくてごめんね』

必死に母にしがみついて叫ぶと、母が急に静かになった

「桜ちゃん?桜ちゃんなのね」

見えていないはずなのに私をじっと見つめている

『少しの間だけ、お前の姿が見えるようにした。言いたい事があるなら伝えておけ』

イケメン役人が私の後ろに立って囁いた

『うん、ありがとう』

私は両親のためにすっと立つと深々と頭を下げた

『お父さん、お母さん。今までありがとう』

「桜」

「桜ちゃん…」

『それから、ごめんなさい』

謝る私に母は手を伸ばしてきた

「桜ちゃん…桜ちゃん…」

何度も私の名前を呼ぶ


『準備が整った…時間だ』

『うん』

イケメン役人の声に私はもう一度、母を抱きしめた

『ありがとう、お母さん。もう行かなきゃ』

「桜ちゃん!行かないで!桜ちゃん!!!」

『親不孝の娘でごめんね。それから彼を…氷川君を許してあげて』

「桜…どうして…」

『最後に会いに来てくれたから…かな?』

床に崩れ落ちる母を父が支える

『お父さん、お母さん、18年育ててくれてありがとう。またね』

最後は笑顔で…

父と母の頬に軽くキスをすると

父と母は驚いたように私を見つめた

「もう逝くのか…」

つぶやく父の言葉に小さく頷き、うつむいて立ち尽くしている氷川君の前に立った

『…私のことは忘れて幸せになってね。氷川君に出会えてよかったよ。今だから言えるけどずっと好きだったんだ。短い間だったけど幸せな時間をありがとうね。じゃあね』

驚いたように私を見つめる氷川君に背を向け、イケメン役人の手を取る


『いきましょう』

『もういいのか?』

『うん』

イケメン役人が小さくつぶやくと私の意識は消えた



私が【南川桜】としての人生を終えた瞬間だった



次に【私】の意識が戻ったのは生まれ変わって【佐久良美南】として生きている時だった


そして、まさか、彼もまた『生まれ変わって』再び私の前に現れるとはその時は思わなかったのだった…





一応続きの構成はありますが、続きを書くかどうかは未定です

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