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しあわせ荘の日常  作者: 五月蓬
第一部『春、しあわせ荘のひとびと』
6/48

その6 『荷物を運ぼう』

今回は新しい住人紹介ではありません




 挨拶を終えた→荷物がきた→荷物運ぶぞ→手伝ってやろう←今ココ




 以上、簡単な現在のシチュエーションである。

 手伝ってくれるのは以下の方々だ。


「たまには運動しなくちゃと思っただけだからっ!」


 あくまで善意を否定する瓜子さん。


「力仕事は任せな!」


 燃えている(ファイヤー的意味)リンさん。


 早速女性二人とお近付きだぜひゃっほう! ……と喜ぶ程、真は異性との交流には飢えていない。


「ありがとうございます」


 お礼を言いつつ真顔である。




 ちなみに今、しあわせ荘に居る他の二人、吸血鬼のシャルルと座敷わらしのきっこさんは手伝いメンバーにいない。


 きっこさんは面のベンチでお昼寝中。子供だし仕方ない。


 シャルルは家のドアをお札で封印して封じ込めた。真的には吸血とかマジ勘弁。ちなみにシャルルの冗談の誤解はまだ解けてない時の事である。ダシテクダサーイ!という叫びが聞こえる。しらんぷりである。


 何はともあれ、荷物運びに思わぬ助けを得た真は、正直一人でも大丈夫だったのだがありがたく話を受けたのである。




 すぐに後悔した。




「なあ! エロ本とかないか? エロ本とか!」


 運んできたダンボールを早速開封し、頭を突っ込んでいるリンさん。発想が完全にアレである。この人、善意で手伝いに来た訳ではない。興味本位で手伝いに来たのだ。


「ありませんよ」

「つまんないな、オイ!」


 真は突っ掛ってくるリンさんを見ないふり聞かないふりで無視しつつ、自分もせっせと荷物を運ぶ。箱を開けるのはあとだろうが。

 箱を必死で漁るリンさん。しかし、見られて困るものもないので、真はスルーし作業を続けていた。

 一方の瓜子さん。彼女は意外と真面目に働いてくれている。


「この箱は何処に置けばいいの?」

「あ、それはそっちの部屋に……」

「別にあんたの為にやってるわけじゃないんだからねっ!」


 いちいち面倒臭いが。


 荷物を漁っていて、むしろ邪魔なリンさん。働いてはくれるものの、何だか突っ掛ってくる瓜子さん。

 妖怪って不思議だなぁ、と真は勝手に納得して頷いた。


 しかし、妖怪というものはやっぱり不思議なもので。面倒な二人ではあったが、その怪力とも言うべき力には真も守護霊のヒカルも驚かされた。

 どこか逞しそうなリンさんはともかく、普通の女の子、むしろ華奢な瓜子さんまで真が腕で持ったら一個が限界のダンボールを、二、三つ纏めて持ち上げられる。リンさん曰く、「瓜子はこれでも鬼だから」だそうだ。鬼は結構力持ちらしい。

 そういって、リンさんは五個積み上げて運んだ荷物を、ドアの上にぶつけて崩した。皿が割れた。




 そんなこんなで、邪魔者ひとりに、ひねくれ天邪鬼の有難い力を借りつつ、荷物運びも終盤。真は気付かなかったが、彼の荷物、人からすれば結構多いようだ。


 ちなみにこれは、幽霊が見えちゃう体質の真だからこその問題であることは、本人も気付いていない。ちょっとした幽霊関連グッズはかさばるのだ。


「うおっ! これ、すげえ!」


 荷物運び終盤、そんな時に響く声。なんだ今度は、と真はダンボールに顔を突っ込んだまま声を上げるリンさんの方に向かう。ぎゃー、と叫び声を上げるリンさんは、頭を引っこ抜いて一冊のアルバムを取り出した。


 変な写真あっただろうか?


 真は不思議に思いながら尋ねる。


「何かありました?」

「これっ! これやべぇよ!」

「何かあったんですか、リンさん?」


 瓜子さんも駆けつけてきた。リンさんは、珍しく顔を青くして、その写真を指さした。


「ああ、友達ととった写真ですけど……何かあります?」

「この写真が何か…………あ」


 瓜子さんも何か気づいたようで、口を塞いで顔を青くした。真はますます首を傾げる。


「何もおかしいところないじゃないですか」

「お前……ばっかか!? お前の目は節穴か!? これ見ろ! よく見ろ!」


 リンさんが、あわあわしながら写真を指さす。指差したのは、真の友達、弘さんと花子さん、清兵衛さんにマルコさん。びしびしと、片っ端から真の友達を指さす。指をさされなかったのは真と真の幼馴染のれいだけである。


「それがどうしたんですか」


 ごくりと息を呑んで、リンさんは声を上げた。




「だってこれ、透けてるじゃねーか!! 心霊写真だ! 心霊写真!!」


 それと同時に、顔を覆って瓜子さんも声を上げた。


「やめてくださいリンさん! 寝れなくなっちゃう!」

「うわあああ! やべえ! 初めて見た! こええ! こんなにはっきり写るのかよ!」

「うわああん! 怖いいいい!」


 涙目で喚く妖怪女子二人。

 真は不思議そうに首を傾げた。


 妖怪って幽霊とか見えんのか?


『それが特殊ケースだとお前は知ったほうがいい』

「そうなのか。心得た」


 ヒカルの有難い世間常識を受け止めて、真はうずくまってアルバムを放り出している二人の妖怪をまじまじと見つめた。


「お焚き上げだ、お焚き上げ! 神社持ってたほうがいい! ほら、瓜子! 持ってけ!」

「やです! 触ったら呪われるっ!」

「呪っ……!? あたし、触っちゃったぞっ!!」

「お祓いに行った方がいいですよ!!」


 わーわー、きゃーきゃー……


「なんの騒ぎですか!?」

「あ、きっこ! やべえ、やべえよ! これ見ろ!」

「え? その写真がどうしたんです……ひゃあっ!」

「怖い怖い怖い怖い怖い!」


 庭で寝ていたきっこさんも飛んできた。そして写真を見た途端に大騒ぎ。




 ナニゴトデスカー!と響くシャルルの声に耳を傾けつつ、真とヒカルは互いの意思を確認しながらぼそりと呟いた。




『「妖怪が幽霊怖がるなよ……」』





妖怪だって、怖いものは怖いのです。ちなみに、妖怪女子不人気幽霊ナンバーワンは清兵衛さん。頭から血を流していて怖い、が理由だそうです。このあと、結局うやむやになって、心霊写真の件と引っ越しの件は軽く流れる事になりましたとさ。真の幽霊見えちゃう体質発覚は持ち越し。


あと、シャルルは買い物から帰ってきた真が封印を思い出して解放しました。封印から三時間後のお話です。




次回は再び住人紹介の予定。現時点の住人全員が出揃ったら、ちらほら学校のお話も登場予定。でも、メインはしあわせ荘です。

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