表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しあわせ荘の日常  作者: 五月蓬
第三部『夏、おもいおもいで』
44/48

その44 『しあわせ荘の外の日常いろいろ』

ショートショート回



その44.1 『死神のひみつ』



 小柄な体躯とどんよりとした目を持つ闇背負う少女、『氏神魂しのかみたま』は『死神しにがみ』である。

 彼女の正体は、実は秘密で、知っているのはごく一部。

 その数少ない一人である『見えちゃう系女子』、人間の原石ゆうこはふと気になって魂に尋ねた。


「そういえば、漫画とかでは死神って大分イメージ違うけど、どれが近いの? それともやっぱり全く違うものなの?」


 魂が億劫そうにゆうこを見上げた。

 

「……漫画とか読まないから、どれとか言われても、困る」


 そっか、とゆうこ。考えつく限りで、死神要素をあげてみる。


「うーん、たとえば……鎌を持ってるとか、ノートを持ってるとか、刀を持ってるとか……なんかそんな感じ?」

「……間違ってはいない、かも」


 魂はぽん、と手に刀を持った。手品のように出現した刀に、ゆうこがわっ、と声を上げる。


「ほい、ほい、ほい」


 ぽんぽんと、次から次へと鎌やらノートやらを出していく魂。

 最初は驚き目を輝かせたゆうこが次第に困惑していく。


「え? え? ちょ、何コレ」

「死神はノートに名前を書くだけで人を殺せる。そして、鎌とか刀で魂的なものを切り取って殺す事もできる。他にも見るだけで殺すこともできれば、言霊で操り殺す事もできる。死神が人を殺すのに用いるのは、そういった能力や道具じゃない。死神は人を……」


 珍しく流暢に喋る魂が結論を溜めると、ごくりとゆうこが息を呑む。

 果たして、死神は、何で人を殺すのか?

 ドヤ顔で魂は言った。


「ノリで殺す」

「タチが悪い!」


 最悪の神さまである。



   ~~~~



その44.2 『青行燈の青安藤さん』



 ―――『青行燈あおあんどん』。

 ―――それは百物語の最後に現れるという妖怪である。

 

 ―――その青行燈もまた、現代妖怪として社会に溶け込んでいた……


 夏休み。

 成績不良の真と瓜子のクラスメート、普通……ではない人間、自称『萌の求道者』の『清湖萌きよしこもえ』が、ふらりと真の家を訪ねた。

 成績不良で補習中である筈の彼女だったが、基本補習は午前中のみのようで、午後には自由になれるとの事である。


「で、なんで来たんだよ」

「実はまこちんに相談があってさ!」


 どうせロクな事じゃないと思いつつ、話を聞かなきゃ帰らないので、はいはい、と適当に真は聞く。


「実は、うりりんにキャーキャー言わせたい作戦を考えてて……」

「いや、懲りろよ」

「それで今度、企画してるイベントがあって……」

「いや、聞けよ」


 お構いなしに萌が、ドヤ顔で言った。


「その名も……『ドキドキ! 真夏の夜の百物語大会!』」

「待たせたな!」


 バン!と真の部屋のドアが勢いよく開かれる!

 青い髪をなで上げて、現れた彼は……


 青行燈の青安藤あおあんどうさんだ!


「誰!?」

「誰!?」

「百物語と聞いて!」


 百話どころか一話を待たずにすぐ登場!

 忙しい現代社会の青行燈は、大分せっかちなのである!


 ちなみにこの後、青安藤さんは警察のご厄介になった。




   ~~~~



その44.3 『貧乏神の金欠さん』



 姓は『貧乏神』、名は『金欠』。

 薄幸系少女、貧乏神金欠はその名の通り貧乏神である。


 貧乏神とは一概に、不幸をもたらす神ではなく、幸福を司る神でもある。


 そんな彼女の家は結構な大きさで、彼女の家に誘われたゆうこは目を丸くした。


「も、もしかして、金ちゃんってお金持ち?」

「……貧乏神一族は、日本経済を裏から牛耳る黒幕だから」

「ちょっと魂ちゃん人聞きの悪い事言わないでよ」


 貧乏神一族はお金持ちである。

 しかし、そうなると若干気になる事のあるゆうこ。


「でも金ちゃん、確か学校だと結構ボロ……じゃなくて、古い制服を着てるよね?」


 普段は繕った後のある古い、というよりボロい制服を着ている金欠。

 貧乏神という名の通り、てっきり貧乏なのかと思っていたゆうこ。

 魂がたまに金欠を財布扱いしたり、集ろうとするブラックジョーク(ジョークだよね、魂ちゃん?)もあったが、まさか本当にお金持ちだったとは思っていなかったのだ。

 うーん、と少し悩ましげに唸って、金欠が口を開いた。


「結構うちの家族倹約家で、持ってる衣類は大体お古だったりするんだ」

「へぇ、そうなんだ」


 やはりそういう所に気を使える人が豊かになるものなのかな、と感心してゆうこが頷いた。

 すると、にやりと不敵な笑みを浮かべる小さな死神、魂。


「嘘はいけない金ちゃん。金ちゃんがボロを纏う理由は他にあるでしょ」

「た、魂ちゃん?」


 金欠が焦る。どうやら話せない理由があるらしい。

 聞かれたくない事情があるのか。しかし気になって、ゆうこはそのまま耳を傾けた。


「金ちゃんがボロを待とう理由、それは……」

「魂ちゃん、ちょっと待っ……!」


 止めに入ろうとする金欠だったが、時既に遅し。

 その慌てぶりから、それは間違いなく真実である事が分かった。


「キャラ付け」


 割とどうでもいい理由だった。





しあわせ荘と関係ないようかいまたはかみさま達のお話でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ