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しあわせ荘の日常  作者: 五月蓬
第一部『春、しあわせ荘のひとびと』
4/48

その4 『吸血鬼のシャルル氏』

☆注意☆

この物語はフィクションですよ!実際の東京はこんな場所じゃないですから間に受けないでね♪




 204号室の挨拶を終えて、一応203、202とインターホンを鳴らしてみる。しかし、やはりしろさん、だいくんという二人の住人が出て行った部屋は留守らしい。どちらも一人暮らしかと、ふむと勝手に納得する。

 仕方ないなと真が次に向かうのは201号室。二階の最後の部屋である。


「え、英語?ちゃ、ちゃーるず……んん?ヒカル、読める?」

『無理』


 何と名前は英語?らしい。外国人さんかと真とヒカルはごくりと息をのむ。ちなみに二人とも日本人。英語とかは、教科書英語しか分からない人達である。日本の英語教育は全く……英会話のが重要だろうよ!と、道で出会った外国人さんに話しかけられて答えられないと、国の教育のせいにしちゃう程度に英語とか話せない人である。


 に、日本語通じるかなぁと不安になる真。ちなみに鍵を渡して満足したのかきっこさんはとっとと降りて行った。ちゃんと別れ際のいい子いい子は忘れていない。


「……と、とにかくやるっきゃない!」

『おお!お前勇者か!』

「大丈夫!ボディランゲージでいける筈!」

『通用しないって歌ってる歌があったな』

「い、いいからいくぞ!多分、日本に住んでるから多少はいける筈!」


 真は意を決してインターホンを鳴らす。


 ぴんぽーん。


 ハーイ、どちら様デスカー?


 片言だが日本語である。真は少しだけほっとして声を発する。


「今日205号室に越してきた遠野です」


 アー、チョト、待っててクダサイネー!


 がちゃり。


 どどどどどど。


 ギィ。


 ドアが開いた。姿を見せたのは、やっぱりパツキンの男性だ。何やら整髪料で髪をオールバックで固めており、色は白い。中々凛々しい顔立ち、高身長のスタイル抜群。しかしそんな事よりも特徴的なのは、その真っ赤な瞳と何故か着る青い浴衣。何故、浴衣?お祭り気分?


「ハーイ!ハジメマシテー!ワターシ、シャルル言いマス!『Charlesシャルル Chevalierシュヴァリエ』。シャルルと呼んで下サーイ!」


 チャールズじゃなかったのか……と一安心の真。かなりフレンドリーな印象のシャルルに、真はほっと一息ついて挨拶した。


「遠野真です。今後ともよろしくお願いします」


 お辞儀。すると、「オーウ!」と拍手するシャルル。


「イッツ、ジャパニーズ、ドゲザ!」

「ど、土下座じゃないよ!お辞儀だよ!」

「ハーイ!ハクシュ、ハクシュー!」

「あ、は、はい……」


 手のひらを前に差し出したシャルルに、戸惑いながらも真は手を叩く。


 ぱちぱち。


「ノンノン!それはアクシュ、ネ!ハクシュー!」


 あれ?と真。この人、握手と拍手間違えてないか?と一応手を前にだす。するとギュッと手を握り、シャルルはブンブン手を振った。


「ヨロシュー!マコト!」

「よ、宜しくお願いします……シャルルさん」

「ノンノン!シャルルでおk!」


 フレンドリーだけど、漫画に出て来るエセ外人のようでなんか喋り辛い人である。


「ワターシ、ニッポン文化に興味シンシンで留学してきマーシタ!ゼヒ、知らない事あったら御教授願いたいデス!」

「留学?おいくつですか?」

「イターチ!大学生デス!」

二十歳はたち?」

「そう!ハターチ!早速の御教授、感謝デス!」


 少し話し辛いが、しかし話し易いとも真は思う。親しげにドンドン話題を振るタイプ。言葉が不自由でも、慣れれば良い付き合いができそうだ。


「ニッポン文化イイですヨネー!このユタカもチョベリグデース!」

浴衣ゆかた、ですよ」

「ソウ!ユカタ!」


 何だか付き合いのコツを覚えてきた真。ついでに浴衣の謎も解けた。

 単に日本好きなだけだ。


 変なコスプレで街に繰り出そうとした時は止めてあげよう、と真はどうでもいい決心をした。




 ところで気になるもう一つの謎。


 シャルルはなんの妖怪なのか?


 赤い眼に金髪、すらりとした長身、きりりとした顔立ち。喋らなければ絶対モテる。これが妖怪としての彼の特徴なのだろうか?それより海外に妖怪っているのだろうか?


 純粋に気になり、真は親しげに尋ねる。


「シャルルはなんの妖怪なんだ?」

「ヴァンパイア!『吸血鬼』、と言ったらイイんデショーカ?」


 真は自分も名前をよく知るその種族におお、と驚いた。吸血鬼、その響きにロマンのようなものを感じる真である。

 まあ、目の前の浴衣姿の吸血鬼に多少幻滅はしたが。イメージぶち壊しである。

 そんなロマンを目の前に、真は多少ワクワク質問した。


「血とか吸うの?首筋がぶりと」

「大概レバーとか喰ってます」


 がっかりである。

 レバー喰ってる吸血鬼、なんかがっかりである。まあ、血を吸う人が近隣住民というのも嫌だが。


 そんな感じで微妙な表情を浮かべる真に、シャルルははぁと溜め息をつく。そして不満げに語り出した。


「マコート……君が吸血鬼にナニを期待してるのかは分からへんケドも、勝手なイメイジを押し付けないで下サーイ」


 シャルルに注意された真は思った。


(分からへん……?関西弁?)


 あんまり真面目に聞いてなかった。


「ワターシだって、血を見ればクラッとシマース。夜十時には眠くなるし、毎朝講義がある時は五時起きデース。なのにナンデ勝手に『吸血鬼は夜の眷属』みたいなイメイジ押し付けトンねん」

(がっかりな上に……何故エセ関西弁?)


 真はあんまり注意が耳に入らなかった。


「いいデスか?勝手なイメイジの押し付け、ヨクナイ!吸血鬼は、ニッポンみたいに、スシ、ニンジャ、サムラーイでは語れないのデース!」




 真は思った。


(あんたのも勝手なイメージじゃねーか!)


 ヒカルが言った。


『おい!萌えが抜けてるぞ!』

「お前も黙っとけ!」


 最後にシャルルが言った。


「……全部ウソデース!」

「おい!」


 真は突っ込んだ。


「だから、夜中にちょっと血を吸わせてもらいにいくかも知れませんのでヨロシクー!」








「……え?」




 シャルルはバタンと扉を閉めた。


















 あとで「あれウソデース。イッツァジャパニーズジョーク!現代吸血鬼は血とかあんまり吸いまセーン!」と言いながら、部屋にシャルルが尋ねてきたのは、真がニンニクをスーパーで買ってきたあとのことである。


 真は無言で買ってきたおろしニンニクをシャルルの目にぶち込んだ。


 悶えるシャルルを見て、真は確認した。




「ニンニクは吸血鬼に有効、と」




 多分、その攻撃は誰にでも有効である。よい子は真似しちゃいけない。二人が仲良しだから許されるのだ。いや、仲良しでも許されない。



 要はよい子も悪い子も真似しちゃいけないよ♪





~本日の現代妖怪辞典~

【吸血鬼】

毎度お馴染みの西洋妖怪。夜の眷属、血を吸う悪魔、昔からよく知られる大妖怪。しかし今ではすっかり落ち着き、血を飲まなくても、日光があっても、流水があっても怖くない。弱点が大分そげ落ちました。現代の医療は凄いのです。でも個性が欠けて、代わりに貧血気味な人間みたいになりました。それでもやっぱり力持ち、なかには変わった力を持つ者も?血を吸うと本性を表す吸血鬼も居るとか。やはり腐っても大妖怪。いえいえ腐ってませんけど。




※これは現代妖怪辞典です。実在の妖怪とは何ら関係はありません。本当の吸血鬼はこんなんじゃないよ!




吸血鬼のシャルル氏。エセ外国人の不思議さんです。ちなみに、英語っぽいこと話してますが、名前はフランス語読みです。ニンニクは臭くて駄目で、十字架は先っぽが尖っているから怖いそうです。先端恐怖症です。吸血鬼あんまり関係ないですね。


しばらくは登場人物紹介的展開。でも、そのしばらく内に住人全員が出るわけではないですね。

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