シネマ『レインツリー』へようこそ!
もし良かったら、作中に登場する少女がどの物語のキャラクターなのか一緒に考えながら読んでくださると嬉しいです。
ここは本と本の隙間の世界。
表紙もページも開かれる前。
栞が物語を待つ幕間の時間。
これはそういう世界のお話。
からんからん、とどんぐりの形をしたドアベルが鳴った事で、ミスルは作業の手を止めて顔を上げた。
ご来店したお客様は、不安そうにおどおどと周りを見回していた。金色の髪にまだあどけない顔をした少女は、寒さで鼻を赤く染めているにも関わらず靴を履いていなかった。付けている大きなエプロンは少女よりずっと年齢を重ねているらしく、あちこちシミだらけでほつれている。
ごく一般的なお店ならそんなつもりは無くても眉を顰めるようなお客様だが、ここは一般的なお店では無い。待ってましたとばかりにミスルはにぱっと笑顔を浮かべ、とととっと軽い足取りで少女に近付く。
「いらっしゃいませ! シネマ『レインツリー』へようこそ!」
さあさあこちらですお客様、寒かったでしょう美味しいコーヒーはいかが? ミルクとお砂糖たっぷりに、甘く甘く仕上げましょう。それとも紅茶派? それも素敵。お茶請けにクッキーをどうぞ、お客様は本当に運がいい、さっき焼き上がったばかりなんです!
にこにこと少女をカウンター席に案内して、ミスルは楽しそうに話しかける。いつだってお客様がご来店すると楽しくなってあれこれ一方的に話しかけて、兄から怒られているのにちっとも学ぶつもりがない。
「あの、ぇえと………」
少女は困ったようにミスルを見て、店内をきょろきょろ見回した。
来店されたお客様に親しみを持って欲しくて、ミスルが拘りに拘ったカフェ内装。赤いきのこで作られたランプからオレンジ色のぽかぽかした光がこぼれ、木で作られたカウンターやカフェテーブルは触れなくても温もりを感じる。大きな壁掛け時計の中には可愛いヤギの置物が置かれ、その牧歌的な雰囲気に少女はちょっとだけほっとしたような表情を浮かべた。内心、ヨシっとミスルはガッツポーズする。
「おぉっとすみません、ご新規のお客様のようですね」
まずはこのミニシアターのご案内からですね、とミスルはカウンターに入ると、席に座った少女の前にメニュー表を置いた。
手作りのメニュー表にはドリンクやサンドイッチといったカフェでよくありそうなものから、シアターらしくポップコーンやチュロスといったフードまで様々だ。ちなみに全部ミスル手作りで、評判は上々だ。
「申し遅れました。私、このレインツリーのカフェ部門を担当しているミスルといいます。以後お見知り置きを!
簡単に説明すると、このミニシアター『レインツリー』はお客様のような『どこへ帰るのか分からなくなったキャラクターのみなさんに、帰り道を教えて差し上げる場所』です!」
その説明に、少女はぱっと顔を輝かせた。
「そう! あの、そうなんです! 私、作家の方に呼ばれて彼の頭の中までお邪魔したのだけど、結局彼の新しい物語に使われなくて。没ネタになってしまって残念だなぁってしょんぼりしながら帰ってたら、私がどこの童話の出身だったか思い出せなくなってたのに気付いて……」
このままどこにも帰れなくなったらどうしよう。そう思ってたら、オレンジ色の光が見えて、それで歩いて来たらこのお店があって。
少女が身振り手振りを交えながら説明すると、ミスルはうんうんと相槌を打つ。
「よくある事なんですよ。作家の皆さんって童話や神話、伝説などをお話の土台にする方が多くいます。で、物語のキャラクターである皆さんは、そのたびに作家の頭の中に出張されるでしょう?」
「いつか読んで楽しんでもらえただけでなく、自分で新しく物語を作る時にネタにしようと思ってもらえるくらい愛してもらえたのは本当に嬉しいんですけど、そのぉ……」
「この物語のキャラクター、こうしたら面白いかな? ああしたらどうなるかな? って作家さんにコネコネされまくっちゃうと、『あれ? 私って元々どこの物語出身だったっけ?』って分からなくなっちゃうんですよね。そういう方多いんですよ〜」
まさに今その状態らしく、少女は「いっぱいお着替えしてたら、元々どこから呼んでいただけたのか忘れてしまって……何せ機関銃を持って暴れたりなんかしましたから……」としょぼしょぼの状態で言葉を紡ぐ。こんな可愛らしい少女に、銃。どうやら少女を呼んだ作家は随分とバイオレンスな話を考えていたみたいだなぁとミスルは苦笑いを浮かべる。そういう作家も、まあいます。
「迷子になってしまったキャラクターの皆さんに、自分の元の物語を思い出してもらう。それがこのミニシアターのコンセプトという訳です。ここまでは大丈夫ですか?」
「な、なるほど。分かりました。ですけど私自身がどこから来たのか忘れてしまったのに、店員さんはもっと分からないんじゃないかしら……」
「ご安心を! そこはもう一人のキャストが……おっとちょうどいいところに」
あちらをご覧下さい、とミスルは少女の視線を店の奥へと誘導する。ちょうど店の奥にある大きなドア──映画館にありそうな、重厚な赤いドアが、大きく開いた。
そこからミスルに似た顔立ちの青年と、大きなオオカミが出て来た。オオカミの彼はこの店の常連客。何せオオカミといったらあらゆる物語で大人気の悪役キャラクターで、当然作家の頭にもしょっちゅう出かけるし、帰ろうにも似た作品は多いしで、帰り道が分からなくなる事がたびたびよく起こるのだ。
「いや〜ポアロさん。いつもありがとうございます。そうだったそうだった。僕が食べなきゃいけないのは赤い女の子でも子ヤギでもなくて、豚さんだった。思い出したよ」
「いえいえ。いつもご利用ありがとうございます」
「まあ子豚さん達は思い出さないでもらった方が嬉しいかもしれないけどねえ」
「まさか。三匹の小ぶたはオオカミさんがいないと物語すら始まりませんよ。あなたがいなくなったらみんな困ってしまいます」
そんな軽口を叩き合いながらポアロはオオカミを出口まで案内し、「ではまた、パンの道が分からなくなったらご来店ください」と見送る。尻尾をふりふり、オオカミはご機嫌な様子でドアをくぐった。からんからん、とどんぐりのベルが退店を告げる。
お客様を見送ったポアロは、すぐにカウンターまで歩いて来た。にこりと微笑んで、会釈を一つ。お客様にはいつだって、敬意を持って。
「いらっしゃいませお客様。ミスル、ご案内した?」
「した! 任せてよお兄ちゃん!」
えへんと胸を張ると、調子に乗るなと言わんばかりにデコピンされた。妹に対する扱いが雑じゃないのー! と文句を言うが、聞こえないフリで流された。
ポアロは少女の隣に座ると、「シアター部門担当のポアロです。よろしくお願いします」と声をかける。少女は何も分からない様子のまま「よろしくおねがいします……?」とおずおずと返していた。
そんな少女に、ミスルは先ほどの彼女の疑問に答えるため口を開く。
「このポアロがこれからお客様に何個か質問をしていきますので、お客様はそれにお答えして下さい。そうしていけば、自然とあなたがどの物語の登場人物だったのかが分かります! 例えば『寒い日が舞台の物語でしたか?』」
そう言われて少女はうーん、と考えた後に、自身の鼻をちょんと触る。今はもう店内で温められたそれがさっきまで寒さで赤くなっていたことを思い出し、「うん、きっとそう」と分からないなりに答えを返した。
「寒い日が舞台の物語となると、暖かい地方の物語ではまずありませんね。あなたが靴を履いてないのは何故だか思い出せます?」
その答えを聞いて、今度はポアロはうんうんと相槌を打った後に少女に続けて尋ねる。少女はまた少し考えて、
「……お金が無い家だったんです、多分……」
と、ひどく曖昧な答えを返した。しかしポアロには充分だ。分からなかったら別の角度で質問していけばいい。
要は、ポアロはその莫大な物語知識から忘れてしまったお客様の僅かな記憶を頼りに絞り込み検索をする人間検索エンジンなのだ。似た物語は世界中に沢山あれど、全く同じ物語は無い。選択肢を少しずつ狭めていけば、残るものは一つだけ。
絞り込んで特定した物語を映画として上映し、お客様に観て自分は誰でどこの作品からやって来たのか思い出してもらう。この『レインツリー』はそういったお店で、自分の物語を忘れてしまったキャラクターの為に、普段物語を見てもらう側に物語を届ける、そういうちょっとだけ不思議なミニシアター。
映画を観るなら軽食は欠かせないでしょ! という妹のミスルの提案でカフェを経営して、美味しい軽食や飲み物を楽しんでもらう事も。楽しい時間を彼らに過ごしてほしいから。
ここは本と本の隙間の世界。
表紙もページも開かれる前。
栞が物語を待つ幕間の時間。
また笑顔で読者の前に立てるように。
「そのマッチは? お客様のものでお間違いない?」
少女のエプロンからひょっこり顔を出していた、どこかで落としてしまったのか濡れてしまったマッチ箱。それを指差しながら尋ねたポアロに、少女は頷く。
「……マッチを売らなきゃいけないんです。そうしないと、生活が大変な世界だった、ような……」
おぉ、とミスルは思った。これは、私も知ってる物語の主人公かも!
ポアロも同じ事を思ったのか、「はい。ありがとうございます。分かりました」とにこりと微笑んだ。そして恭しい態度で少女の手を取ると、席を立たせる。
「あなたは『マッチ売りの少女』ですね」
場合によってはタイトルを聞いて「あぁそうだ! 思い出した!」となるキャラクター達もいるのだが、少女はどうやらそうでは無いらしい。まだピンと来てない顔で、不思議そうにポアロを見上げている。
しかしマッチを売る生活苦の少女。これはもう一つしか思い当たる物語が無い。ポアロは確信していた。
「それでは、劇場までご案内します。悲しい結末なので、忘れた状態ですと少しだけショックを受けるかもしれませんが、あなたの物語は世界中で愛されています。どうか、あなたもあなた自身の物語を楽しんで下さいね」
「これ、私が登場した物語じゃないです」
数分後、劇場から出て来た少女をにこにこと出迎えた途端、少女の口からまろび出た言葉にポアロもミスルも「……え?」と固まった。
しかし少女は申し訳なさそうに、しかし追い討ちのように「私、この物語出身じゃないです」と続けたのだった。
…………………………。
えーーーーーーーーーーっと。
数秒固まった後、素早くお互いがお互いの服の裾を掴んでびゅんっとお客様から見えないようにカウンターに引っ込む。兄妹揃って滝のように冷や汗をかいていた。
まずい。絶対にマッチ売りの少女だと思っていたのに。違うって!?
「どどどどどういうことお兄ちゃん、お客様から違うって言われたの初めてなんだけど! 忘れすぎちゃうと映画として自分の作品観ても、もう自分の物語だって思い出せなくなっちゃったのかな!?」
「いや、キャラクターが「これは違う」って言ったらマジで違うんだあれは本能的なモンなんだから! だからシンプルに俺が作品を間違えた! でもマッチ売りの少女じゃない!? マッチを売ってるのに!?」
動揺動揺。大動揺である。見かねたのか後ろから「あの〜……すみませんご迷惑おかけして……」と少女が申し訳なさそうに声をかけるが、兄妹の綺麗な「いえ全然ご迷惑とかそんな事では決してなく!!」という大きなユニゾンにひぇっと小さく悲鳴をあげて、そのまま黙り込んでしまった。
それにはっとしてポアロが慌ててカウンターから出て来た。違う、怖がらせたい訳じゃなくて。
「失礼な真似をして申し訳ありません。お客様がお求めしている物語とは違うものを上映してしまい、なんとお詫びすればいいか……」
すると少女は慌てて首を横にふるふると振る。
「あの、本当に近いところだと思うんです。マッチ売りの少女を観てる時、そうだ私こういうキャラクターだったって気持ちになりましたから。だけど途中から『あれ、違うな』っていう違和感が消えなくなっちゃって……」
「成る程……」
うーん、と少し考え込んだ後にポアロは「立ち話もなんですから、一度座りましょう。ミスル、お茶を用意して」とカフェテーブルに少女を案内する。
三人分のティーカップから暖かい湯気が立ち上る中、ポアロはもう一度少女の物語を特定する為に質問に入った。
「先ほどお客様は途中から違和感が消えなくなったと仰ってましたよね。つまりお客様が近いと思った箇所は冒頭でお間違いありませんか?」
「は、はい! 私、絶対にマッチを売ってました! そこは確信を持って言えます!」
「……ねえお兄ちゃん、マッチ売りの少女以外にマッチを売る物語ってあったっけ?」
「……存在しなかったはずなんだけどなぁ……」
うーん、とポアロは右手の親指と中指でこめかみを揉む。
「マッチを売っていたのは間違いない。ではお客様、お客様が抱いた違和感についてお尋ねしても?」
「えぇっと、実は最初の……ポアロさんが『悲しい結末』って仰ってた時点から引っかかりがあって」
「そ、そんな前から!?」
予想外の言葉にちょっとショックを受けた。お兄ちゃんさぁ……という妹からの冷たい視線が追い打ちをかける。
こほんと咳払いを一つ。仕切り直し。今はお客様の帰り道を真剣に特定しなくては。パンの道で帰り道が分からなくなるのは、ヘンゼルとグレーテルで充分だ。
少女は言うべきか言わないべきかちょっとだけ迷った様子で、しかし彼女が感じた違和感を兄妹に伝える。
「私、そんな悲しい終わり方してない気がするんです。どこから来たのか思い出せないけど、でもきっと幸福だった。そんな確信めいたものがあるんです」
少女のまっすぐな瞳に嘘はない。そもそもキャラクター達に嘘などない。彼らほど純粋な存在などこの世に無い。
しかし困ったぞ、とポアロはあどけない少女を見つめながら、内心頭を抱えた。マッチを売っていて靴も買えない生活苦の少女が幸福な結末? 確かにマッチ売りの少女のあまりにも悲劇的な結末を憐れんで、または魅了され、沢山の作家達が彼女をオマージュした作品を作った。しかし、目の前の彼女はオマージュにしてはあまりにも本家本元『マッチ売りの少女』なのだ。オマージュされた作品が彼女の家、という可能性は正直低い。
いよいよポアロは悩みに悩んで、あれでもないこれでもないと頭の中の本棚をひっくり返していた。頭から湯気が出そうな兄を見かねた妹は、「私からも質問いいですか?」と少女に尋ねる。
「他に何か思い出した事とかありませんか? どんな些細な事でも構いませんから」
「些細な事……」
あの、自分でもなぜこれを持っているのか全然分からないんですけど。
「ポケットにこれが入ってました。なんだか分かります?」
そうしてポケットに手を突っ込んで取り出したものを兄妹に見せる。
それを見てミスルは「わー! 綺麗ですねぇ!」と歓喜の声を上げたが、ポアロはあぁっと驚きの声を上げた。女性二人が揃って思わず、といった様子でポアロを見やるが、それに対して上手く返答出来ない。何せそれが、あまりにも重要なヒントだったもので。
ああ成る程。額に手を当てて、納得のため息をつく。なんだそういう事か!
どんぐりのベルが鳴ってお客様が退店されたのはもう随分前。ちょうどお客様が誰もいなくなったカフェの中、ミスルが用意してくれた手作りドーナツをかじりながら、ポアロは本当に良かったと安堵のため息をつく。
「いや〜〜久しぶりに苦戦するお客様だった。良かったどこの物語か分かって〜〜」
ありがと助かった妹よ、そう言って隣に座るミスルの頭をわしゃわしゃ撫でれば「髪ぐしゃぐしゃになるんですけどー!」と文句を言う。そう言う割には楽しそうだし嬉しそうだし得意げだったので、兄妹の微笑ましいじゃれあいだ。
「まさかここまで来てもらったのに帰り道はこちらでも分かんないです、なんてお客様には言えないもんな」
「ね。ちゃんと帰り道分かって良かったねぇ」
少女がにこにことシアターから出てきて「本当にありがとうございます! これで帰れます!」と口にした時は心底ほっとしたものだ。彼女がシアターから出てくるまで、また「これ私が登場する物語じゃないです」なんて言われたらどうしよう、と上映時間が終わるまで二人してハラハラが止まらなかったのはここだけの話。
マッチ売りの少女にしか見えない彼女がポケットから取り出したのは、青いガラス玉だった。まん丸のそれは店内の光を受けてきらきらと輝き、思わずため息を漏らしてしまうほど美しい。そして、それはまるで誰かの瞳のように小さく、小鳥でも運べそうな大きさだった。しかし、『マッチ売りの少女』という物語に、こんな青いガラス玉は存在しただろうか?
答えはすぐに分かった。というより、それを見たポアロの頭の中に、ある一つの物語が浮かび上がってきたのだ。青いガラス玉──いいや、サファイアの大きな塊と、マッチ売りの少女が登場し、しかし彼女が雪の中で冷たくならずに物語が終わりを迎える作品が。
『幸福な王子』
「主人公は王子とツバメで、マッチ売りの少女はツバメが運んだ王子のサファイアを持って笑顔で帰っていく。そこで少女の登場は終わり。その後どうなったかは書かれてないから、幸福な終わり方と言われればその通りだ」
「色んな作品に出てくるそれぞれ別のオオカミさん達がいるって分かってたのにね、それと同じだって気付けなかったね〜」
「ていうかなんでマッチ売りの少女モチーフで物語を考えようって時に、幸福な王子に出てくるマッチ売りの少女を呼ぶ奴がいるんだ。その作家マジでどんな物語書こうとしてたんだよ」
「そんなの分かんないよ〜。私たち作家にはなれないじゃない」
けらけらと笑う妹に、それもそうだなと兄はため息混じりに笑う。これは流石に考えたところでどうしようもない。
まあ、作家が何を考えているとかは正直どうでもいいんだ。あくまで自分たちはキャラクターに寄り添いたいだけ。その為にこのシアターを作ったし、これからも道に迷ったキャラクターたちの為にシアターを開き続ける。
今日も帰り道が分からなくなった登場人物一人一人に帰り道を示すだけ。この世にある沢山の物語は、幸福な結末を迎えるものもあれば悲しい結末を迎えたりと様々だ。そしてその結末を、彼らは決して変えることは出来ない。オオカミはオオカミのままだし、少女はいつまでもマッチを売り続けなければならない。それでも物語を愛してくれる読者のために、新しく物語を紡ごうとする誰かの為に、キャラクター達はまたページの隙間と隙間に帰っていく。そんな彼らを労りと共に送り出す為に。その為だけに、今日もミニシアターは赤いきのこのランプを灯す。
白い石もパンのかけらもどこにも落ちてはいないけど。オレンジ色の光を辿って、どうぞここまで。
ドーナツの最後のひとかけらを飲み込んだところで、からんからんとどんぐりのベルが来店を告げる為に鳴る。どこか心細そうな顔をしたお客様に、兄妹はいつものように来店を歓迎する声をかけた。
「いらっしゃいませ。シネマ『レインツリー』へようこそ!」
幸福な王子を読むと、当然ですと言わんばかりにマッチ売りの少女が出てくるのが毎回不思議でした。幸福な王子は冬が始まったばかりの頃、マッチ売りの少女は大晦日のお話なので、オスカー・ワイルドなりのマッチ売りの少女前日譚なのかなと勝手に考えています。
何も考えずに兄の方にポアロという名前を付けてしまいましたが、我らがエルキュール・ポアロとは何も関係ありません。
レインツリーの花言葉→「胸のときめき」「歓喜」
もし良かったら評価・感想などいただけると嬉しいです。




