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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第97話 並んでの朝

 次の日。

 目が覚めた。

 寝坊じゃない。


(少し早い)


 布団の中で、しばらく動かない。

 頭の中は静かだった。

 昨日の音楽は、もう鳴っていない。


(でも、嫌じゃない)


 身体を起こす。

 重さはなかった。

 眠気も、引きずっていない。

 窓の外は、淡い朝の色。

 空気が澄んでいる。


(ちゃんと眠れたみたい)


 ベッドを降りる。

 制服に手を伸ばす。

 袖を通す。

 鏡を見る。

 そこにいるのは、いつものボク。


(大丈夫)


 髪を整える。

 寝癖はついていない。

 

(今日は、普通の日)


 廊下に出る。

 寄宿舎は静かだった。

 足音が点々と聞こえる。

 令嬢とすれ違った。


「おはよう」


「ごきげんよう、ポラリス嬢」


 それだけ。

 誰も、昨日の話はしていない。


(いいな、この感じ)


 階段を降りる。

 少しだけひんやりした空気。

 より頭がはっきりとしていく。


(良い匂い)


 食堂へやってきて、パンとスープを。

 スープはアスパラガスのポタージュ。

 パンだけを食べたり、ポタージュに浸しながら。


「ポラリスさん」


 少ししたら優しい声。

 聞き慣れた調子。


「おはよう」


 ロランスだった。

 いつもの距離。

 いつもの顔。


「ロランス、おはよう」


 彼女もトレイにパンとスープを載せて、隣の席へ。

 ゆっくりじゃないけれども、穏やかに食べていく。

 最初は会話は無くて、ただ食べる音。

 周りでは、令嬢達のにぎやかな声が聞こえる。


「二人ともごきげんよう」


 すると、目の前の席にゼナイド様が座った。


「おはようございます」


「ゼナイド様、ごきげんよう」


 ぼんやりじゃないけれども、気がつかなかった。

 周りの声だけを聞いていたからだと思う。


「昨日の音楽会は良かったですわね」


「うん!」


「そうですね」


 ゼナイド様は音楽会に関する話をしてきた。

 音楽会の翌朝だからっていうのもあるけれど。


「舞踏会で演奏されるものとは、及ばないものでしたけれど、間違いは無かったですわね」


「うん」


「そうだよね。チューニングも出来ていたから」


 ボクもロランスも同意するだけ。

 ロランスはともかく、ボクはそこまで詳しくないから。

 ゼナイド様との会話をしていって、朝食の時間が流れていく。


「さてそろそろ、授業の時間になりますわね」


 先にゼナイド様が席を立ち上がった。

 ボク達も食べ終わったから、食堂を出ていって、並んで歩き出す。


「ね」


 その一言。

 口癖みたいな言葉。


「ちゃんと起きてる顔だね」


「それ、どういう意味?」


「寝不足じゃないって意味」


 くすっと笑う。

 さっきゼナイド様もいたからね。


(見てるなぁ)


 でも、嫌じゃない。


「ね」


「うん?」


「歩く速さは、いつも通りだね」


「そうだね」


 ロランスと並んで歩いているから。

 変わらないかも。


「今日は、静かそうだね」


「うん」


 それだけで十分だった。

 校舎が見えてくる。

 朝の光が差している。


(いつもの)


 日常は続いている。

 非日常は毎日起こるわけじゃない。

 でも日常が明日も続くわけじゃない。


(今日は、授業を受ける日)


 それでいい。

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