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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第90話 アデリナ様とブランカ様と一緒に昼食

「結構混んでいるんだね」


「だね」


 お昼の時間になって、ボクは食堂へ行く。

 ロランスも一緒に。

 席が空いている場所をきょろきょろと見回しながら、まずは料理を受け取ろうとする。


「あら、ポラリス嬢にロランス嬢」


 トレイを受け取った辺りで、声を掛けられる。


「アデリナ様にブランカ様!」


 振り返ると、二人も同じタイミングで食堂へやってきていた。

 笑顔が綺麗で、アデリナ様は微笑みながらボクやロランスを見ている。

 先日までの不安定さは見せていなかった。

 ブランカ様も合わせて、まるで二人がヒロインとそれを守る女騎士みたいな感じを出していた。


「よろしければ、ご一緒に食べませんか?」


「は、はい!」


「もちろんです」


 ロランスも肯定していた。

 しかもロランスの方が自然に返事を出来ていた。


「ふふ、感謝するわ」


 という事で、ボクはアデリナ様と向かい合わせに座りながら食事をすることにした。

 パンを食べてスープを飲む。

 スープの中にパンをちぎって、食べていく。

 食堂のざわめきはあるけれど、この席の周りだけ少し静かだった。


「今日は、随分と賑やかですのね」


 アデリナ様が周囲を見渡しながら言っていた。

 声は穏やかで、張り詰めた感じがしない。


「音楽会の話、広まっているみたいですね」


 ブランカ様がそう補足した。


「そうだね」


 思い出したように、ボクは頷く。


「明日、礼拝堂であるって聞きました」


「ええ。生徒主体だそうですわ」


 アデリナ様はそう言って、スープを一口飲む。

 所作が綺麗で、でも気負っていない。


「ポラリス嬢は、行かれるの?」


「行く、つもりです」


 少しだけ間を置いてから答える。


「静かそうなので」


 それだけ言うと、アデリナ様は微笑んだ。


「あなたらしいですわ」


「そうなの?」


「ええ。賑やかな場所より、音が整っている方がお好きでしょう?」


 図星だった。

 だけど、指摘されても嫌な感じがしない。


「アデリナは、演奏する側ではありませんけれど」


 ブランカ様はさらりと言った。


「聴く専門ですのよ、この子は」


「ブランカ……」


「事実でしょう?」


 二人のやり取りは軽くて、余裕がある。

 昨日までの張り詰めた空気が、もう無い。


(よかった)


 ボクは胸の内で、そっとそう思った。


「ロランス嬢は?」


 今度はアデリナ様がロランスに向けて声をかける。


「あたしも行きます」


「演奏は?」


「聴く側です。今日は」


 ”今日は”と付け足したのが、少しだけ意味深で。

 でも、それ以上は言わない。


「四人で並んで座ることになりそうね」


 アデリナ様がそう言って、ほんの少しだけ楽しそうに笑った。


「混みそうですけれど」


 ボクが呟く。


「それなら」


 ロランスが自然に続けた。


「端の方で、静かな席を探しましょ」


「ええ。それが良いわ」


 アデリナ様もすぐに同意する。

 それぞれが食事に戻る。

 フォークの音。

 スープをすする音。

 遠くに笑い声。


(普通だ)


 殿下の事は出てこない。

 噂も、評価も、ここにはない。

 ただ、一緒に食事を取っているだけ。


「美味しいですわね」


 アデリナ様がぽつりと言った。


「うん」


 ボクも、同じくらいの声量で答える。

 そこまで大きい感じじゃないけれど。

 だけどそれだけで、この時間は十分だった。

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