第87話 休み明けの教室
「おはよう」
次の日、ボクは学院の教室へ。
今日は授業があるからね。
「ごきげんよう、ポラリス嬢」
令嬢の一人がボクに挨拶をした。
呼び方は普通で、一昨日のことは知っていないみたいだね。
他の令嬢だって、少年服を着て出かけたことを話している様子は無かった。
ボクはとりあえず適当な席に座る。
誰が来るか分からないので。
「ポラリスさん、おはよう」
と、ロランスがやってきた。
迷いもなくボクの隣に座っていて、ちょっと安心する。
この場所の方が良いかもしれないね。
「ちゃんと起きられた?」
「うん、寝坊しなかった」
ボクはいつもの時間に起きていた。
一昨日や昨日は遅めだったけれどね。
「えらい」
ロランスは微笑みながら、頭を撫でてくる。
「しょ、小学生扱いしないで」
「えっ?」
危ない危ない、今のボクは王立ルミナリエ学院に通う令嬢だった。
小学生だったのは転生前だから。
異世界だし、伝わらないよね。
ロランスもきょとんとしている。
「何でもない。ちょっと恥ずかしかっただけ」
他の令嬢には聞こえていなくて良かった。
「大丈夫、学院基準だから」
目が合ったけれど、逸らしちゃった。
恥ずかしかったからかな。
昨日なんて一緒に散歩していたけれど。
「二人とも、仲がよろしいのね」
「あっ、ゼナイド様!」
「ゼナイド様、おはようございます」
声を掛けてきたのは、ゼナイド様。
昨日もお会いしているけれど、黒髪を後ろで結んでいてポニーテールみたいにしていて、本当に綺麗だね。
扇子で口元を隠しながら話しかけてきた。
「よく貴女達は、隣同士で座っていますわね」
ゼナイド様は微笑んでいて、この光景を良く思っているみたい。
「うん、そっちの方が安心するから」
「ポラリスさんやアデリナ様が変なことにならないか、見ているの」
ロランスにとっては、そういう理由なの。
結構建前感が強いけれど。
「あら、そうでしたのね。まあ、もうすぐアデリナ嬢が来ますわよ」
そっか。アデリナ様はまだ来ていないんだった。
となると、どうなるんだろうね。
アデリナ様の心は大丈夫かな。
「ゼナイド様、ボクの隣にアデリナ様が来ても良いのでしょうか?」
何回か隣に座っていたから。
もしかしたら、そうなる可能性だって有り得る。
「それはアデリナ嬢の選択ですわ。その時には、無理に話しかけないようにしなさいな」
近いけれども、こっちから話しかけないようにすればいいのかな。
アデリナ様が話しかけたら話すけれど。
「授業が始まりますわね」
扇子を閉じる音だけが、少しだけ響いた。
「わたくしは近くで見ていますわよ」
そう言って、ゼナイド様は後ろの席に座った。
まるでボクやロランスを見張っているような感じ。
変なことは出来ないね。
「ポラリス嬢、ごきげんよう」
「アデリナ様、おはよう」
しばらくして、アデリナ様がやってきた。
ブランカ様も一緒に。
「おはようございます」
するとアデリナ様は、ボクの隣に。
予想はしていたけれど。
三人分の気配が近い。
でも、不思議と息苦しくはなかった。
「ポラリス嬢、見守っていてくださいな。アデリナは”ここ”がいいらしいの」
ブランカ様はボクにだけ聞こえるような感じで。
そして優しい目をしていた。
「うん」
ブランカ様はアデリナ様とボクを挟むように座っている。
この光景、ある意味最強の並びかもしれない。
「凄いわね、優秀な方達の並び」
「あそこだけ雰囲気が違うわね。エリートのオーラが漂っている」
この様子を見ていた令嬢達が噂している。
憧れの目をしながら。
(多分違うと思うけれど)
アデリナ様の心を守るためだから。
ボク、悪役令嬢ゼナイド様の取り巻きなんだけど、アデリナ様を見守る感じになっています。
「ポラリス嬢、今日は令嬢の制服姿ですのね」
「そ、そうだよ」
もしかして、アデリナ様も少年服でお出かけした事、知っているのかな?
とりあえず訊かないでおこう。




