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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第74話 少年服でのお出かけ6

 喫茶店の中に入って、テーブル越しの席に座った。

 店内はちょっとだけ賑やかだけど、落ち着いた雰囲気を出している。

 それでもロランスは話していた。


「途中までは気づかなかったフリをしていたのかな」


「そうだと思うよ。しかも、”楽しそう”って言っていた」


 ちょっと笑い出しそうにしながら、ロランスは話し続ける。


「言ったね」


「あれ、学院では見せていない顔だよ」


「やめて」


「それに”悪くない”は、褒め言葉の中で一番重いやつだから」


「重すぎるって」


「大丈夫」


「何が!?」


 流石にお店の中だから、声は小さめで。


「さっきの殿下、”からかわないで黙認する”って顔だった」


「それ安心なの!?」


 殿下が黙認してくれるって、良かったんだけど。


「でもね、少なくとも」


「…………」


「今日のポラリスさん、学院より自由で可愛かったよ」


 可愛かったって。

 この格好でも可愛いんだ。


「ロランス、追撃はやめて」


「ごめんね」


 でも、ロランスの表情は口元を押さえていた。

 完全に笑いをこらえている顔だった。


「ロランス、まだ笑っているでしょ」


「うん」


「即答やめて!」


 誤魔化しすらしなかった。


「だってさ、席についた顔」


「どんな?」


「『逃げ切ったと思ってる顔』」


「してないよ!」


「ううん、していたよ」


 気づかなかったし、ロランスが言っていることは本当なのかな。


「してないって」


「あとね」


 何個あるんだろう。


「まだあるの!?」


「殿下とすれ違った直後なのに」


「うん……」


「その格好で、普通に喫茶店へ入ってきた」


「だって、ロランスが行こうって言ったから」


 提案してきたのはロランスよね。

 その格好でも、問題ないって思っていたよ。


「まあね。でも度胸があるよ」


「必死だったんだからね!」


「でも」


 ロランスはくすっと、こらえていた笑いをちょっと出した。


「似合ってる」


「……さっきも言ったね」


「言うたびに更新されるから」


 嬉しそうにボクの姿を見ている。


「更新しなくていい!」


「ポラリスさん」


「なに……?」


「今、”少年服で一番自然な場所”にいるよ」


「喫茶店だから?」


 色々な人がいるから、自然になっているってことだね。


「そう」


「ロランス、それ褒めてるの?」


「褒めてる」


「本当?」


「うん」


 ロランスはメニューを開きながら、まだニヤニヤしていた。


「今日のポラリスさんって」


「えっ?」


「殿下に会っても壊れなかったし」


「それは……」


「街でも否定されなかったし」


「…………」


「今、あたしの前でちゃんと座ってる」


 自然に座っていただけだよ。


「だから」


 ロランスは一拍置いて喋った。


「楽しい」


「……もう」


「なに?」


「ロランス、ずっと楽しそう」


「だって」


 また笑いを抑えきれず、少しだけ声を落とした。


「こんな休日、滅多にないもん」


「確かにね」


「ほら、注文しよ」


「……うん」


(ロランス、絶対あとでまた思いだし笑いをする)


 そう思いながら、ボクはメニューを覗き込んだ。

 メニューを見ながら、ボクは無難そうなものを選んだ。


「えっと、ミルクティーとスコーンをください」


 店員がにこやかに頷いて、こちらを見る。


「かしこまりました、坊……」


 止まる。


(来た)


 やっぱりここでもこうなるんだ。

 視線が、服→顔→髪→服。


「……坊、ちゃん」


 口が開いたまま、声が消えた。


(迷ってる、完全に)


「……お嬢?」


 今度は逆方向に振り切った。


(振り切らないで!?)


 ロランスが横で、肩を震わせている。

 笑いを必死に殺しているのが分かった。


「……あの」


 店員が咳払いを一つ。


「……失礼いたしました」


 少し姿勢を正した。


「ご注文は以上でいいでしょうか?」


(敬語のレベルだけ上がった)


「はい、それで大丈夫です」


 ボクが答えると、店員はほっとしたようにメモを取る。


「では……お連れのーー」


 ロランスを見ていた。


「お嬢様で、よろしいでしょうか」


「はい」


 ロランス、即答。

 しかもにこやか。


「少々お待ちください」


 店員は深々と頭を下げて、厨房へ引っ込んでいった。

 少し沈黙が流れる。


「ふふっ」


 こらえきれなくなって笑っていた。


「ロランス?」


「ごめん、今の」


「なに」


「坊ちゃんって言いかけた口のまま固まっていたの」


「見てたんだ」


「完全にフリーズしてた」


「笑わないで!」


 ロランスはついに、口元を押さえて小さく笑い出す。


「でもさ」


「なに?」


「”お客様”で統一しなかっただけ、頑張ったと思うよ」


「基準、そこなの!?」


 頑張ったって、どっきかに行く方?


「今日の街、みんな必死だよ」


「ボクのせいみたいに言わないで!」


「でも」


 ロランスが楽しそうに、目を細める。


「坊ちゃんにも、お嬢様にも見えるって」


「うん」


「普通に、強いよ」


(強さ判定、そこなの!?)


 ボクはテーブルに肘をつきそうになって、慌てて姿勢を正した。


(もう、呼称は事故る前提で行動した方がいい気がする)


 そんな事を考えながら、ボクは出てくるミルクティーを待ったのだった。

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