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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第73話 少年服でのお出かけ5

「次、あのお店に寄ってから帰ろっか」


 時間的に遅くなりそうだから、ロランスが言っているお店で終わりにしよう。

 ロランスが指さしたお店、それは喫茶店だった。


「うん、あそこ気になる」


 転生する前も喫茶店へは家族と行ったけれども、この世界の喫茶店は多少は違っていたっけ。

 男の子の時に入った喫茶店は、ジュースを飲んでいたけれど。

 それとパンを食べたかな。


「じゃあ行こ?」


「だね!」


 ボク達は喫茶店へ入ろうとした。


(あ、あの人、カッコいい)


 ふと、別の方向を見てみると背が高くて品がある男の人を見かけた。

 王都だからこういう人も居るよねって思っていた。


「……あ」


 急に同じくその男性を見かけたロランスのトーンが落ちた。

 どうしたのかなって思った。

 カッコいいから、止まったのかな。それとも知り合いかな?


「……失礼」


 男性はボク達とすれ違った。会釈して通り過ぎようとする。

 一瞬だけ、ボクに目線が止まる。


「…………?」


 ボクも会釈して、その男性を見てみた。

 貴族な感じの格好をしていて、無茶苦茶品がありすぎる。顔は見ていなかったけれど。


「ロランス嬢?」


 すれ違う次の瞬間に、その男性がロランスの名前を言ってきた。

 どうして知っているんだろう。

 結構限られるはずなのに。

 そう思ったけれども、ロランスの次の言葉で理由が分かった。


「殿下」


 もう一度この男性の顔を見てみた。

 そこに立っていたのは、リュカ殿下だった。


「えっ!?」


 ボクは声を出して驚いてしまった。

 何で一日で、二人も王都で知り合いに出会っちゃうの。

 それもブランカ様と殿下だよ?

 偶然にもほどがあるって!


「…………」


 殿下は視線を服→顔→髪→もう一度顔という順番に見ていった。

 誰もがしているね、この視線の動き。

 無言でボクをじっくりと。

 何この時間。緊張するって。


(やばい、見られてる)


「今日は学院が休みなので、街を案内していました」


 ロランスがフォローしているけれども、ここにいる理由しか説明していない。

 問いかけられていないから大丈夫だけど。

 何で少年服を着ているのか、という質問の返答にはなっていない。


「そうか。楽しそうだな」


 でも殿下は口元を緩ませながら、察していた。

 否定していないみたい。

 それがちょっとだけ安心する。


「えっ、あ、はい……?」


 条件反射で返事をしていた。


「ポラリス嬢」


 もう一度ボクの姿を見る殿下。

 じっくりと顔や服を。


「以前より、ずいぶん楽しそうだ」


「……っ」


 言い返せる訳ないって。

 この格好の方が、元々のボクに近いし楽しいから。

 ロランスはこの様子を見て、興味深そうにしていた。


「今日は良い休日だ。邪魔はしない」


 でも頷くように口元を緩ませたまま、一礼をする殿下。

 ボクも同様に一礼した。

 そして去っていこうとする。


「ポラリス嬢のその格好も、悪くない」


 去り際に一言残して。

 褒めてくれたのかな?


「「…………」」


 でも残ったボクやロランスは、一瞬だけ言葉を失っていた。

 言葉が思いつかない。

 時間だけが過ぎていったと思う。

 だけど、その沈黙を破ったのはロランスだった。


「……ふっ」


 ロランスは失笑していた。

 大笑いじゃなくて、吹き出し笑いを。


「え?」


「ごめん……今の、反則……」


 肩が震えていて、笑い出していた。

 ロランスの笑いはこらえようとしていたが止まらない。


(ああ、ロランス。笑わないでぇ!)


「ねえポラリスさん」


 笑いながらボクに話しかける。


「な、なに?」


「今のさ」


「うん」


「殿下、完全に分かってたよ」


 とりあえず、喫茶店に入ろう!

 で、落ち着こうよ!


(今の気づいていなかったの、ボクだけだよね!?)

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