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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第65話 ゼナイドとブランカの牽制

 このテーブルの周りでも、夕食の時間になっていた。

 やがて取り巻きの令嬢達は食べ終わったら、部屋へ戻っていく。

 最終的にゼナイド様やボクやロランスはまだ食べていたんだけれども、突然ゼナイド様の雰囲気が変わった。

 ブランカ様が食堂へやってきたから。

 それまで漂っていた食堂の温かさが、すっと引いていく。

 背中に冷たいものが走って、ボクは無意識にスプーンを持つ手を止めていた。

 淡々とした視線。

 口元には笑み。

 でもその微笑は温度を持っていなかった。


「お久しぶりですね、ブランカ・アクアエ・グランニ嬢」


 ゼナイド様はブランカ様が歩いてきたのを見て、席を立ち上がりブランカ様に近づいて、扇子で口元を隠して話しかけた。

 今のアデリナ様じゃなくて、ブランカ様だから牽制が出来るんだね。

 ブランカ様は足を止めて、わずかに首を傾げた。


「ええ、こちらこそ、ゼナイド・ヴィエンヌ嬢。ポラリス嬢の”主”と聞いています」


 ボクの事を話題に話しながら、ブランカ様も同様に。

 ブランカ様って、ボクが取り巻きって知っているんだ。でも、手紙でやりとしていたから知っているよね。

 ゼナイド様の眉がそれを聞いた途端に、ぴくりと動いた。

 その瞬間、廊下の空気がふっと張り詰めた。

 これは悪役令嬢としての雰囲気だ。

 『わたくしの世界に、無断で踏み込まれた』

 そう言っているかのような不快感が、ゼナイド様の瞳に一瞬だけ滲んでいた。


「随分と、鋭い耳をお持ちなのね。それに、わたくしの周辺事情まで随分とご存じのようで


「あなたの方こそ。アデリナの隣にいる者の顔ぶれを……よく把握なさっていたわ」


 微笑んでいるのに、どちらも一歩も引かない。

 見物していた令嬢達が、静かに息を呑む。戻る直前の取り巻き令嬢もその中にいた。

 ゼナイド様は扇子で口元を隠したまま、一歩だけ近づいた。

 静かだけれども、挑発的な動き。


「それで? わたくしに何か御用で?」


「いいえ。ただーーアデリナの心が乱れている原因を、少し確かめただけですわ」


 ゼナイド様の扇子がわずかに止まった。


「それがーーわたくしやポラリスに関係があると?」


「関係があるかどうかは、これから見させていただきますわ。アデリナの親友として」


 ゼナイド様の瞳に、初めて温度が宿る。


「……ずいぶんと大きく出るのね。ネーヴェラのお嬢様」


「あなたもね。”取り巻き”を従えて学院を動かすその余裕……悪くなかったわ」


 二人とも皮肉を言い合っている。

 そして二人は微笑んだ。

 誰から見ても”優雅に笑っているだけ”。

 でも、肌に刺すような冷たい緊張が揺らめく。

 そして最後に、ブランカ様が一言。


「念のために申し上げておきますわ。アデリナは私が守ります。例え、あなたの取り巻きに傷つけられたとしてもーーただし、学院の秩序を乱すつもりはありません」


 ゼナイド様はゆっくりと扇子を閉じる。


「面白いわ。ならば、貴女の”守りの実力”……拝見させてもらうわ」


「こちらこそ」


 ブランカ様は微笑んでいるけれども、目が笑っていない。


「ただこちらも取り巻きを不必要に傷つければ、容赦しませんわ」


「分かっていますわ」


 すれ違いざま、二人の制服の裾がわずかに触れ、火花のような冷たい空気が散った。

 これは凄い光景だね……アデリナ様以上に大変になりそう。

 でもこの二人の間に立つことだけは、絶対にしたくない。

 そう直感的に思ってしまった。

 だけど望んでいないのに、巻き込まれるんだろうな。

 ボクはまた、食べるのを途中で中断していた。見入っていたから。

 でももうすぐ食べ終わる感じだったから、会話が終わったらまた食べていったけれど。

 今日は中断してばっかりだね。


「ポラリス、明日は学院が休みですわ。ゆっくりとしなさいな。今は、巻き込むべき時ではありませんもの」


 ゼナイド様は席に戻ってきて、ボクに話しかけた。


「うん」


 一旦はこっちも落ち着けるのかな。

 遊びに行こうかな。それとも、部屋でゆっくりしようかな。

 迷うけれども、とりあえず部屋に戻って考えよっか。

 何とか食べ終わったから。ああ、美味しかった。


「ボク、男の子だったんだよね?」


 部屋に戻ったら、何故かそんな気持ちが浮かんできた。

 そう呟いた瞬間に、『だった』という言い方をしている自分に、少しだけ胸がざわついた。

 今日、殿下と一緒に補講した時にボクは変な気持ちになっちゃったから。

 あの時間、自分が”どう見られているか”を気にしていた。

 どれが一番、分からなくて、怖かった。

 どうしてなんだろう。髪がちょっと伸びたからかな。

 そうだよね。

 ベッドで横になって寝返りを打つとよく分かる。

 より肩に当たってちくちくする。

 今までだったらこんなの無かったのに。

 なのにーー不快なはずなのに、いつの間にかその感触を受け入れている自分がいた。


「う~ん……でも分からない方が良いのかな」


 これを突き詰めたら、余計に修羅場になりそう。

 もうなっているんだから。

 だってーー今のまま曖昧でいれば、誰も決定的に傷つかずに済む気がしたから。

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