第45話 朝の晴れ時々曇り
「おはよう!」
「ポラリスさん、おはよう」
朝、教室に向かう廊下でロランスに挨拶をされた。
微笑みながら落ち着いた感じで、昨日のことは気にしてはいないのかな。
ボク自身も一晩寝たから、気分が多少良くなった感じがする。
「昨日より顔色が良いね、安心した」
「えへへ……」
ロランスってこういった所よく見てくれるよね。
嬉しくなっちゃう。
「……おはようございますわ、ポラリス嬢」
アデリナ様が後ろからやってきた。
小さめの声で、ボクにだけ聞こえるかのように。
「お、おはよう……」
でも気まずそうに、そんなにボクの目を合わせない。
目が合ってもすぐに逸らしていて、モヤモヤとしているのかな。
「……昨日は、失礼をしましたわ」
アデリナ様がふと、囁くように謝罪をしていた。もしかしたら、自分の中で言わなきゃって思ったのかもしれない。
「う、うん。気にしていないよ。でも、ちょっとびっくりしたけれどね」
ボクも小さめの声で、アデリナ様をフォローする。
「二人とも、今日も頑張ろうね!」
こんな状況を知っているのか、知らないのか、ロランスは明るく挨拶をしてくれた。
昨日の事を気にしないかのように。いや、アデリナ様の様子を見ているからこそ、励ますかのようにこんな感じなんだ。
「……昨日のこと、気にしすぎないですね。ポラリスさんも、アデリナ様も」
するとそこまで大きくない声で、ロランスが話した。
気を遣ってくれているんだね。ロランスって凄いね。
「……ロランス嬢、ありがとう」
アデリナ様は安心したのか、微笑みながら歩いていく。
「でもアデリナ様……今日は追い詰めないでね」
「ええ……分かっていますわ」
離れる直前にロランスは牽制するように、伝えていた。
ボクを守ろうとしているかのように。
アデリナ様、心はまだまだ不安定っぽいけれど、今日は大丈夫なのかな。
むしろ一人になりたいのかもしれない。
「あっ……」
ふと後ろを振り返ってみると、ゼナイド様が立っていた。
さっきからこっちを見ていたのかな。
微笑んでいたから。
「ゼナイド様、おはようございます」
ボクは急いで挨拶を行う。ゼナイド様にお会いしたら挨拶をしないと。
取り巻き失格だよね。
「ごきげんよう」
扇子でゆっくりと開き、口元を隠しながら返事をしてくれた。
良かった……
「あら、気にしなくても良いですのよ」
「そうなの?」
「わたくし、朝は廊下を歩くのが日課ですの。空気が澄んでいますから」
初めて知った気がする。
むしろ実技試験一位だから、こういった余裕があるんだ。
「ついでに、貴女の様子も見ておきましたわ」
(むしろそっちじゃない!?)
でも日課の部分から、見ているかもしれないけれど。
ボクやロランスを。
「アデリナ嬢、少しは落ち着いたようですわね」
微笑みながら呟いていた。
口元をあえて見せるように。
「そうだよね」
「わたくしが、口を挟む必要はなかったようですわね」
再び口元を隠して、呟いた。
「だけど……まだまだ曇り空かも」
「朝は心が揺れやすいものですわ。特に、あの方のように完璧を求める令嬢には」
「ゼナイド様以上だからね」
「ですが、彼女自身というのもありますわ」
ゼナイド様は、この状況を傍観する形で分析しているんだ。
状況が変わったら介入するかもしれないけれど。
「ポラリス、そろそろ授業が始まりますわよ」
「う、うん!」
ロランスも先に行っちゃった。
遅れたら先生に怒られるかもしれない。
だから教室へと向かうことに。
ゼナイド様も行かないと間に合わないような気がするけれど。そこは大丈夫なのかな。




