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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第42話 ロランスの感情

「間に合ったね……」


 アデリナ様との会話があったけれども、授業には間に合った。

 多少の余裕がありながら。

 でも、遅れたら恥ずかしいし怒られるから……


「ポラリスさん、どうしたの?」


 教室に入るとロランスから話しかけられた。

 ロランスはボクを見て、ちょっと気になっているような感じだった。


「ううん、何でもないよ。遅れそうだっただけ……」


 ボクは一応平然としながらロランスに答える。

 でも、彼女はそれで納得していないような感じだった。じっとボクの顔を覗き込んで訝しんでいる。


「本当? あたしにはポラリスさんの顔が強張っているように見えるけれど……」


 胸が少しぎゅっとなる。

 やっぱりロランスには分かっちゃうのかな。

 ロランスはいつも、ボクの変化にすぐ気づくから。


「……実はさっき、アデリナ様に話しかけられたんだ」


 誤魔化せなかったから、彼女へ話すことにした。


「やっぱり……どんな事を言われたの?」


 それを聞いたロランスは考えているような表情をしている。

 だから彼女はその表情のまま続けて訊いてきた。


「えっと……殿下のこと、どう思ってるのかって言われて……」


 ボクは思い出しながら、ロランスに話した。


「っ……あの人……!」


 すると考えているような表情をしていたロランスの眉が、ほんの少しだけ吊り上がった。

 普段あまり怒らない彼女が、表情に出すなんて珍しい。

 笑うことはあるんだけれど……隠したり隠さなかったりして。


「アデリナ様、思い詰めているんだよ。ポラリスさんに八つ当たりーーじゃなくて、焦っているだけだよ」


 ロランスは言葉を変えてまで、アデリナ様への怒りを見せていた。

 そんな事は無いはずなんだけれど。


「焦って……るのかな?」


 実技試験では二位だったし、ゼナイド様との二大巨頭みたいな存在だから。

 余裕がありそうなんだけれど。


「うん。今日のポラリスさん、ほんとに綺麗だったから。目立つのも仕方ないよ」


「綺麗……なのかな?」


 ボクは気にしたことなかったけれど。

 男の子だったから。


(小学校ではサッカーやゲームで遊んでいたんだけど。あっても綺麗よりもカッコいいの方が似合うような……)


 真逆だよね、前と考えたら。


「そうだよ! 昨日からずっと綺麗なままだよ」


 ロランスが言ってくれるならそうなのかもしれない。

 だったら嬉しいかな。


「ねぇ、嫌なことがあったら言ってね? ポラリスさんの事、守りたいから」


「えっ……!」


 ほんの一瞬、ロランスの温度に息を飲む。

 優しい話し方でボクを包んでくれるような。


(守りたい……って。そんな風に言われた事、あったかな)


 少なくとも”ポラリス・バルカナバード”としては無かったかも。


「だ、大丈夫……! 本当に怖くは無かったから!」


 でも、ロランスにこれ以上心配掛けさせたくなかった。

 手を振ってアデリナ様の事をフォローする。


「ほんと?」


「うん。ちょっとびっくりしただけ」


 ロランスは、少し安心したように笑っていた。

 良かった。いつものロランスだよ。


「……そっか、良かった」


 ボクも微笑んでよりロランスを安心させる。


「ねえ、ポラリスさん……なんか最近、ゼナイド様があなたを見る目が変わった気がするの。守っているっていうか、気遣っているっていうか」


「そうなの?」


 ボクにはそこまで気づかなかったけれど、ロランスは気づいていたんだ。

 いつも通りって思っていた。

 ちょっと鈍感だな、ボク。


「そろそろ授業が始まるから、席に座ろう? 他の人と隣じゃ、変な事を言われちゃいそうだから」


「そ、そんなことないよ!」


 ボクは顔を赤くして、苦笑いしながら否定した。


「ーーあると思うけれど?」


 ロランスは優しく笑いながら、空いている席へ一緒に座ることにした。

 今朝から不自然な空席は無くなっていた。ボクを腫れ物には扱わなくなってきたのかな。


「ポラリスさん、午後も頑張ろうね」


「う、うん……!」


 ロランスの隣に座る。不思議と安心してきた。

 さっきまで胸の中に残っていたアデリナ様の影が、少し薄くなる。


(……ロランスがいてくれて良かった)


 ボクは午後の授業も受けていくのだった。

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