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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第41話 昼食後の廊下

 お昼ご飯を食べ終わった後、授業へ向かうために廊下を歩いていた。

 大きな窓から差し込む光が、白い石畳を柔らかく照らしている。

 そんなタイミング、ボクを呼ぶ声がした。


「ポラリス嬢ーー」


「えっ……?」


 振り向くと、アデリナ様が柱の影から静かに現れた。

 どう考えても、”ヒロイン”のするような感じじゃないよね……?

 ヤンデレのヒロインなのかな。


「アデリナ……様?」


 偶然というよりも、”わざわざ”待っていたような立ち姿。

 ボク、さっきご飯を食べ終わったんだよ。


(アデリナ様は食べ終わったのかな。お昼だから、お腹空いていると思うけれど)


 ほんの一瞬、アデリナ様の指先がお腹の辺りに触れた。

 でもすぐに、何事も無かったかのように微笑んだ。


「……食堂が混んでいましたの。だから後にしようと思って」


(これからなんだ……)


 そう考えていたけれども、それを気にせずアデリナ様は首を傾げて言った。


「ふふ、ちょうど通りかかっただけよ。少しだけ、お時間をいただけるかしら?」


「は、はい……!」


(なんだろう……? ちょっと怖いような……)


 アデリナ様は丁寧に歩み寄る。

 香水の香りがふわりと広がり、ボクの心臓が少し跳ねた。

 アデリナ様の瞳は、まっすぐこちらを捉えていた。

 まるで……舞踏会のあの夜から、ずっと続きの答えを探しているみたいに。


「昨日の試験……お見事だったわ。あの場で微笑める令嬢は、そう多くないのよ?」


 ボクを褒めているのかな。

 でもアデリナ様の雰囲気はそうじゃないような。


「そ、そんなことないって……!」


 否定しても、アデリナ様は穏やかに笑うだけだった。

 でも、その瞳の奥には、揺れる光ーー焦りの色が見える。


「殿下も、あなたを”強い光”だとおっしゃっていたわ。本当に……気に入られたのね」


「き、気に入られてなんてないよ!?」


 アデリナ様の表情が僅かに柔らかくなる。

 でもその裏には『確かめたい』という意思が見え隠れしている。


「……ねえ、ポラリス嬢。あなたは、殿下のこと……どう思っていらっしゃるの?」


「えっ!? ど、どうって……あ、あの……」


 突然そんな事を言われても……

 ボクには上手く返事なんて出来ない。


(そんなの、考えたこともないよ……! ボク、小学生男子だったんだよ!?)


 ただの王子様っという事くらい。

 慌てているボクを見て、アデリナ様は手を口元に添えて、くすりと笑った。


「安心したわ。あなたの反応、とても”自然”ですもの」


(なんか……褒められてるの?)


 でも次の言葉は、微笑んだまま、ほんのり冷たかった。


「ただ……自然すぎて、殿下の心を動かしてしまうのよ。それは、とても厄介ですわね」


「え、えぇ……?」


 自然すぎて心を動かすって……

 どうしたらいいんだって。ボクが自然じゃなかったらいいの?


「……あなたの無邪気さは、時に人を救い、時に人を惑わせるわ」


 ボクを無邪気って思っているんだ。

 それはボクも思っている……けれど。


「聖女候補に選ばれるためには、誰よりも強くあらねばなりませんわ。心を惑わせる弱さなど、本来……持つべきではないのに」


(弱いところ……アデリナ様には見当たらないと思うけれど)


 アデリナ様は優雅に首を振った。


「でも私は、負けませんわ。聖女候補になるため、殿下の隣に立つべきなのは……私ですもの」


(やっぱりボクをライバル視してる!?)


 ボクは取り巻きなのに……ヒロインにライバル視されるなんて……

 それに聖女候補って……アデリナ様がなれば良いって! 絶対にお似合いだろうし。

 ボクは興味が無いから……!

 でも、アデリナ様は、すぐにいつもの柔らかな笑みに戻る。


「ポラリス嬢。あなたと敵対するつもりはありませんわ。ただ……”気になった”だけなの」


「そ、そうなんだ……!」


 良かった……

 ライバルになったら、さらに修羅場だもん。


「ええ。ーーまたお話しましょう? せっかく同じ模範組なのだから」


 そう言ってすれ違いざま、アデリナ様のドレスの裾が、そっとボクの腕に触れた。

 一瞬、微かな香りと熱だけが残った。


(……やっぱり、怖いけれど綺麗な人だ)


「……あなたの光、気に入らないけれど……嫌いじゃなくてよ」


 それは聞こえたのか聞こえなかったのか、分からないほどの声だった。

 振り返るとアデリナ様はもう歩き出していて、そろそろ午後の授業が始まりそうになっていた。

 ボクは急いで午後の授業へ向かった。

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