第40話 混んでいる食堂
「ああ、混んでいるね……」
食堂へ行ってみると、結構混んでいた。
この学院って、お昼ご飯を食べる場所は基本的にこの一階にある食堂なんだけれど、中庭で食べたりも出来るし、食事会という事で礼法室などの特別な場所で食べたりも出来る。
子息や令嬢達が居るけれども、何故か緩め。
ボクは殿下と踊って以来、しばらく食堂じゃなくて中庭で食べていたけれど。
久しぶりにやってきたけれど……タイミングが遅かったのか、結構席が埋まっている。
「どうしようかな。中庭しようかな」
ボクはとりあえず、お昼ご飯を受け取りに行く。
トレーに載せながら、席を探していった。
令嬢達はボクを見て話しているけれども、気にはならなかった。
何で話しているのか、色々ありすぎて分からなくなっているから。
ボクが殿下と踊ったり、殿下に”お子様”って言ったこと、試験結果で三位になったこと……
(短い間に起こりすぎるよ!)
きっかけはあの舞踏会から。
何で好きなだけ食べていたのに、踊ろうって言い出したんだろう。
でも食べるのは絶対にやめたくない。だって、長い間あんまり食べられなかったボクの楽しみだから。
「でも、席あるのかな……?」
きょろきょろと探していると、どこからか声が。
「おーい! お子様令嬢ちゃん、席だったらここにあるよ!」
明らかにボクを呼んでいる声。”お子様令嬢”なんて、ボクしか当てはまらないから。
手を挙げている場所、そこには明るい金髪をしたこの学院の生徒なのにチャラい感じの男性が。髪に寝癖があるような感じだし。
「う、うん……」
他に無さそうだからそこへ行ってみる。
そこにはゲオルギ様以上に明るすぎる子息が。
「ここだよ! いやぁ、ここに君が座ってくれるなんてね」
「ぼ、ボクも光栄です……」
ノリが良いのに、結構緊張する。
何でこの人にはこんな感じがあるんだろう。
(この人って何かあるのかな……?)
「初めてかな? 俺はフェリックス・ド・グランシエル、よろしくな!」
「よ、よろしく……ボクはポラリス・バルカナバード」
ドキドキしながらフェリックス様に話していく。
「そんなに緊張しなくてもいいよ! とりあえず、ご飯食べようよ!」
「うん、そうだね……!」
ボクは彼の隣で、お昼ご飯を食べる。
食べ始めた時には、緊張していてパンの味がそこまで感じなかったけれども、徐々に緊張は解けてきて美味しくなってくる。
スープも美味しく感じた。
「良いね! これを見られるだけで、隣に呼んだかいがあるよ!」
(陽気すぎるよ! こんな人、小学校のクラスメイトでも居なかったって!)
あれ、よく考えたらあの”お子様令嬢”って、誰から伝わったんだろう。
どこかの令嬢が言ったのかな。
「ボクが”お子様令嬢”って、どこから伝わったの?」
「それ? 令嬢達が噂していたよ。ゲオルギだって、楽しんで広めていたしさ」
(ゲオルギ様まで……!)
あの人ってお調子者だからね。この人だって、同じ……それ以上かもしれないけれど。
それにしても、楽しそうだね。
「良かったら、このリンゴも一緒に!」
「あ、ありがとう……!」
フェリックス様が食べていなかったリンゴを貰った。
嬉しいな。これって好きだから。
「美味しい……!」
甘くてどんどん口に入っていく。
「ポラリス嬢は表情も可愛いね」
(持ち上げすぎだよ……!)
ドラマで見ていた、お酒を飲むところみたいな感じだって。
ボクは男の子だったんだよ……
「それにしても、君ってあの王太子と踊ったんだよね?」
「は、はい……!」
「凄いな~、結構なものがあるんじゃないの?」
羨ましそうにしながらボクを見ている。
「ただの偶然だよ……」
でもボクはそう答えるしかなかった。
こんなの上手く答えられそうにないし。そう信じたいから。
「そっか。もしもその偶然、俺にもあったらな~」
「来ると思うよ。もっと良い令嬢とか」
「へぇ~、そうかな。待ってみるよ」
にこにことしながらフェリックス様は、ボクに話していた。
緊張はいつの間にか消えている。
こんなに話せるなんて。
ボクも楽しくなってきた。
「あら、フェリックス様。相変わらず、くだけているのね」
と、ゼナイド様がフェリックス様に話しかけてきた。
皮肉のある感じだけれども、ちょっとだけ背筋を正したような感じで。
「ゼナイド嬢、良いじゃんこれくらいは」
「全く、王族ともあろう方が、怒られますわ」
「えっ……!?」
ゼナイド様の言葉に、一瞬固まってしまう。
フェリックス様が王族……こんなにチャラいのに……?
「知らなかったんですの、ポラリス。この方は、リュカ殿下の従兄弟ですわよ」
「ふぇっ!?」
(わあぁぁぁぁ!! 何て失態を……)
思いっきり変な声が出てしまった。
殿下と従兄弟だなんて……ボクも色々と気軽に話しちゃった……
「気にしないでよ。俺は継承順位が十番よりも下なんだからさ」
「で、でも……わっ!?」
「大丈夫、大丈夫。だって俺自身が、こんなんだよ。気軽に話しても構わないって!」
するとフェリックス様は背中をポンッと叩いて、励ましている感じだった。
本当に良いのかな。
「まぁ、この方には必要以上に礼を失わなければ、大丈夫ですわ」
苦笑いしながらゼナイド様は去っていた。
でももしかしたら、ボクでも少しは気軽に話せるかもしれない。
だけどとりあえず……
「じゃあ、ご、ごちそうさま!」
「うん、またな!」
「はい……!」
食べ終わったので、今日はとりあえずこれまで。
午後の授業に備えないと。




