第39話 お昼前の会話
「ああ、お昼だね。何を食べようかな」
「ポラリス、良かったですわね」
「ゼナイド様!」
お昼休みの直前、授業が終わったタイミングでゼナイド様に話しかけられた。嬉しそうにしていて、微笑んでいる。
この内容からして、試験結果についてみたい。
良い話なのかな。
「貴女は三位でしたわね。素晴らしいですわ」
「ゼナイド様は一位ですね! おめでとうございます!」
ボクはボクの順位よりも、ゼナイド様の順位について話をする。
アデリナ様よりも上の、一位だったから。
「いえいえ、貴女こそあの順位で、良かったですわね」
「う、うん……あんなに高くて良かったのかな?」
ロランスに褒められたとしても、ボクにとっては思った以上過ぎるから。
あんなに高い順位っていうのも……とはいえ、ボクにとっては殿下と踊った事で候補になっちゃったし。
最近思った以上の事が起きているね。
「いえ、わたくしから見ても、それだけ取れてもおかしくありませんわ」
表情を変えないまま、扇子で口元を隠して話していく。
「そうなの?」
「ええ。わたくしの稽古にもついてきましたし、成長ははっきりと見えましたわ」
ゼナイド様からの視点でも、そう評価してくれるんだ。
嬉しくなってくる。
「だからおおっぴらにする必要はありませんが、多少は誇りなさいな」
ゼナイド様はボクを背中を押してくれるようだった。
だから、少し安心した。
「それに……三位は結果ではなく、“ここから伸びる証拠”ですわ。
扇子の持ち方ひとつで、もっと上に行けますのよ」
(まだ上があるの!?)
あそこが到達点かと思ったら、通過点だった。
これは大変そう……
「あの、アデリナ様ってゼナイド様をライバル視しているんですよね?」
「そうですわね」
「でも最近ボクを見ているような……」
さっきだって一瞬、ボクを見ていたし。
どうしてそんなにボクを見るんだろう。
「そうなんですの?」
気づいていなかったのかな。
もしかしたら、ゼナイド様もちゃんとライバルに見ているのかも。
「ボクはゼナイド様の取り巻きなのに、アデリナ様にゼナイド様よりもライバルに思われたら……」
もしかしたら、ヒロインから悪役令嬢以上に目を付けられるって事になりそう。
アデリナ側の令嬢も居るし……
「アデリナが貴女を見ているのは……自分には無い“自然な光”を感じたからでしょうね」
自然な光……それってどんなのだろうね。
「でも心配しなくてよくてよ。アデリナが何か言ってきたら、わたくしがすべて受け止めますわ。貴女はわたくしの取り巻きなんですから」
(受け止めるって、何を!?)
守ってくれるということなのかな。
それだったら安心出来るけれど……
「ありがとうございます」
感謝を伝えると、ゼナイド様は何かを考えていた。
「そもそもアデリナは、“完璧な型”をなぞるだけの令嬢。貴女のように“心で動く”礼法は、彼女には永遠に真似できませんわ」
ゼナイド様はアデリナ様への皮肉を言った。
(えっ、凄い悪役っぽい……)
さすがといえるかもしれない。
ボクが取り巻きなのが、凄いくらいに。
「さて、もうお昼ですわ。大好きなご飯を食べ損ねますわよ」
ゼナイド様に話しかけられたから、ちょっとだけ時間を費やしちゃったけれど。
でも話すのも悪くないよね。
「は、はい……ありがとうございます!」
「……芯を忘れずに。貴女なら、どの舞台でも輝けますわ」
(ゼナイド様……!)
小さめの声だったけれども、はっきりとボクを励ましてくれた。
ボクは心の中で感謝しながら、食堂へ向かっていったのだった。
でもふと振り返ると、廊下の反対側からアデリナ様がこちらを一瞬見て、すぐに視線を外した。
(……また見てる? 何かしたかな?)




