第38話 試験結果
次の日、ボク達は校舎入り口近くにある掲示板にやってきていた。
この掲示板には学院の重要な公告を貼り出している。
真鍮で作られていて、学院の紋章があるような、豪華なもの。
「騒がしいね」
掲示板前には令嬢達が集まっていた。
中身を見ようとガヤガヤしている。
「当然だって。試験結果が気になるんだから」
ロランスが説明していたけれども、そう。
今日、昨日行った試験結果が貼り出されている。
それを見たくて集まっているんだ。
「これ……時間が掛かりそうだね」
「待てば良いと思うよ。満足したら去っていくから」
自分の順位が確認できれば良いからね。
「そうする」
ボクは令嬢達の反応を見ながら、順番がやってくるのを待っていた。
喜んでいたり、悔しがっていたり、落ち込んでいるのもあった。
「やっとだ……」
少しして混み具合が落ち着いたので、ボクも掲示板を見てみることにした。
どうなんだろうね、下の方かな……
「えっ!?」
順位を見てみたら……
一位:ゼナイド・ヴィエンヌ嬢。
二位:アデリナ・レーゲンスブルク嬢
三位:ポラリス・バルカナバード嬢
四位:ロランス・プルゼニ嬢
五位:シャルロット・デシャネル嬢
「ぼ、ボクが三位!?」
(どうしてこんなに高いの!? あんな失敗しちゃったのに……!)
小学生の時には順位は出なかったけれども、中くらいの点数だった。
それが令嬢達が集まっているこの学院で、三位なんて……
ゼナイド様やアデリナ様がその順位なのは分かるけれども……
少なくともロランスとは逆だって!
「おめでとう、ポラリスさん」
ロランスが喜んでいた。彼女だって四位なのに、そんなに喜んでくれるなんて。
「あたし四位で十分だよ。……十分、なんだけどね」
一瞬だけロランスは視線が揺れていた。ような気がする。
ボクにとっては、ボクが三位よりもロランスの四位が輝いている。
「い、いや……ロランスの方が凄いって! 一般組だとトップだよ」
模範組に入っていないのに、ロランスはここまで立っている。
無茶苦茶凄いことだよ。
「ううん、ポラリスさんが三位で、あたしは一番嬉しいんだ」
ロランスからそう言ってくれるから、ちょっとだけ顔がほころぶ。
(三位……こんな成績、小学生のボクじゃ信じられない。でも……嬉しい)
ほんの少しだけ、胸を張っても良い気がする。
でもボク的にはロランスの方が、凄いからね!
「ねえ、上位には講評が書かれているよ」
「本当だ」
ロランスが順位の紙を見て、呟いていた。
よく見てみると、上位者は名前の右に一言書かれている。
「ゼナイド様は……”完璧な礼法、貴族令嬢の理想像。感情を抑えた統制美”だって。アデリナ様は、”静謐と均整を兼ね備えた礼。やや形式に偏るが、優雅”、やっぱり凄いね」
教授とかもちゃんと見ているし、この二人の講評も納得だよね。
二人は完璧過ぎるって。
「ポラリスさんもあるよ。”未熟ながらも真心と芯の強さが見える礼。心を打つ自然な表情”だって。ポラリスさんらしい講評だよ」
本当にそんなのが見えていたのかな。
ボク自身は分からなかったけれど。
「そ、そんな事ないって……」
ちょっと恥ずかしくなりながら、ロランスに返事をする。
「あたしは……”安定感のある舞と自然な所作。感情を抑えつつも温かみがある”かぁ。そうだったのかな」
「間違っていないよ。そんな感じだったもん」
ロランスにも書かれていた講評。
あの時だって、そんな感じの動きをしていたね。
美しかったよ。
「ねえ、そろそろ授業に行きましょうよ」
「そうだね」
ふと隣を見てみると、アデリナ様が試験結果を見ていた。
複雑そうな表情をしていて、満足いっていないような。ゼナイド様に次ぐ二位でも、十分立派なんだけれどな。
そして一瞬だけ、ボクを見ていた気がする。
何を思って見たんだろうね。ボクにはまだ分からない。
「どうして彼女は、迷いなく”光”を帯びるの……?」
アデリナ様はボクが聞こえるか聞こえないかの、小さい呟きをしていた。
そこまで気をとめることなく、ボクは掲示板の前を離れていく。
「ねえ、ロランス。あのときの試験、ほんとは緊張してた?」
教室へ向かう途中、ボクはロランスに話しかけた。
「してたよ? でもポラリスさんが先に笑えていたから、なんか大丈夫って思えたの」
「……ありがとう」
ボクをフォローしてくれるなんて。
「ふふっ。あたし、四位で十分だもん。だって三位のポラリスさんが、一番綺麗だから」
今のロランスの笑顔はとびっきり綺麗だった。
(こんなに言ってくれる女の子。小学校のクラスでも居てくれたかな)
「ねえ、ポラリスさん。これからも隣にいていい?」
「もちろん! ロランスはボクの”一番の味方”だよ!」
すると、ロランスの顔が少しだけ紅くなっていた。
「……そんな風に言われたこと、初めて」
嬉しそうだね。ボクも嬉しいよ。




