表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/146

第27話 夜中のミルクティー

「もう、戻れそう?」


「うん……ありがとう」


 礼法室で少し休んだ後、寄宿舎に戻る。

 ロランスは一緒に付き添ってくれて、嬉しかった。食堂でも隣にいてくれたし。

 夕ご飯は黒パンと野菜の煮込みだったんだけれども、お腹が空いていたからか、あっという間に食べてしまった。

 味も美味しく感じた。


「凄いね、そんなポラリスさんがあたしは好きだよ」


「本当!? えへへ……」


 ボクの姿を見て、にっこりと微笑んでくれるロランス。

 それに顔をほんのり紅くさせる。


「嬉しそうだね」


「ロランスに言ってもらうとより、ね」


「へぇ~、言ってくれるね。ふふっ」


 同じゼナイド様の取り巻きだけれども、友達同士みたくあるから。

 夕食を食べ終わって、部屋のベッドで横になった。

 部屋は真っ暗だけれども、ほんの少しだけ月明かりが部屋を明るくしていた。


「ああ、実技試験かぁ……無事に良い点数を取れるかな?」


 ペタル講師やゼナイド様に稽古をつけてもらったけれども、ほんの少しだけ不安。

 失敗しないかどうか。


「ああ……疲れたな……」


 逆に疲れ過ぎちゃったのかな。

 眠れない。

 不安も入って、余計に眠れなくなってしまう。


(明日……大丈夫かな。失敗したらどうしよう)


 寝返りを打っても、考えが頭の中でぐるぐると回る。

 昼間の稽古でペタル講師に褒められたのに、不安は消えてくれない。


 そのとき、コンコンと小さくノックの音がした。

 ボクは慌てて起き上がる。


「……ポラリスさん、起きてる?」


「ロランス?」


 扉の向こうから聞こえてくる声。

 開けてみると、パジャマ姿のロランスが、小さなトレイを手に立っていた。

 その上には、湯気の立つマグカップが二つ。


「眠れない顔してると思ったから、来ちゃった」


「えっ、顔に出てた……?」


「うん、今日の稽古の時から、ずっとね」


 そう言って、ロランスはにこりと笑う。

 ボクってそんなタイミングから顔に出ていたんだ。

 ちょっと照れながら、ベッドの端に腰を下ろした。

 ロランスも隣に座って、マグカップを差し出してくれる。


「温かいミルクティー。蜂蜜をちょっとだけ入れてあるの」


「ありがとう……!」


 カップを両手で包むと、指先からじんわりと温かさが伝わってくる。

 それだけで、心の中の不安が少しだけ薄らいだ。


「ねえ、ポラリスさん。緊張してる?」


「……うん、してる。上手く踊れるかなって。殿下も来るみたいだし、ゼナイド様も一緒に踊るだろうし……。それに、恥ずかしいところを見せたらどうしようって」


「ふふ、らしいね。あたしも同じ。でもねーー」


 ロランスはマグカップを持ったまま、ゆっくりと笑った。


「恥ずかしいことを恐れる人って、本当はすごく優しい人なんだよ。だって、自分を見せるのが怖いっていうのは、人に見てもらいたいからでしょ?」


「……そうなのかな?」


「そうだよ。あたしね、今日のポラリスさんを見てて思ったの。扇子を落としても、顔を紅くしても、それでもちゃんと立ち上がってた。あのときの笑顔、きっと”本物”だよ」


 胸の奥が少しだけ熱くなる。

 褒められているのに、涙が出そうになった。


「ロランス……ありがとう」


「ね、あたしからひとつお願い。明日は”完璧な令嬢”じゃなくていい。”ポラリスさんらしく”踊って。顔を上げて、笑って。それだけで、たぶん誰より綺麗になるから」


「……笑って、踊る」


 小さく呟くと、ロランスが頷いた。


「うん。あたし、ポラリスさんの笑顔が大好きだから」


 その一言が、胸の奥に温かく残った。

 気がつけば、カップの中のミルクティーが半分も無くなっていた。


「もう夜も遅いから、寝ようか」


「うん……ミルクティーありがとう」


「いいの。あたしも眠れなかったから」


 ベッドに潜り込むと、ロランスが扉のところで振り返る。


「おやすみ、ポラリスさん。夢で練習してもいいけれど、転ばないようにね?」


「ふふっ……おやすみ、ロランス」


 ロランスが去った後、部屋は再び静けさを取り戻した。

 けれど、不思議と眠れない不安は無くなっていた。

 月明かりの中、ボクはゆっくりと目を閉じる。


(明日は、笑って踊ろう。ロランスが言ってくれたみたいにーー)


 そう思いながら、ボクは穏やかな眠りへと落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ