第23話 エーベルトの相談
「おや、ポラリス嬢。お元気かな?」
「ごきげんよう、エーベルト様。おかげさまで」
次の日、放課後に空き教室に向かうために廊下を歩いていると、先日食事会をしたエーベルト様に出会った。
お元気そうで良かった。
表情も良さそうだから。
「そちらは空き教室だが、どうしたんだい?」
「実はゼナイド様に稽古をつけてもらっているんだ」
「ほう、稽古を」
エーベルト様は興味を持っているみたい。
時間に余裕はあるけれども、長話にならないかな。
「もうすぐ礼法の実技試験があるからね」
「そうだったな。大変だろうな」
察してくれているみたいだけれども、子息って礼法の実技試験ってあったのかな。
どうなんだろう。
「まあね……」
苦笑いしながら、エーベルト様に答えていく。
それにしても今、こうして会話をしているから多少は暇なのかな。
「貴族同士の話題ばかりだと、どうにも息が詰まる。君とは、そういうのを忘れて話せるから楽なんだよ。たまたま出会えて良かった」
「へぇ~」
ボクってそう思ってもらえているんだ。
嬉しいけれども、ボク自身はそんなに変わらないけれど。
「ポラリス嬢、君に相談したいのだが……今度友人とその父親にプレゼントしたいと思っているのだが……どんなものが良いのだろうか」
突然入れられた相談。
エーベルト様は悩んでいるみたいだけれども、ボクが答えて良い内容なのかな……
(何でボクに訊くんだろう。小学校で友達としていた話と違うから……!)
絶対、送る相手って貴族とかだから、変な答えも出来ないし。
「う~ん、相手が喜びそうなものだったら何でも良いんじゃ……」
当たり障りの無いものしか答えられない。
具体的なものを言って相手と揉めたら、それこそボクが責任取れないし……
逆に破滅しちゃうって。
「そうなんだがな。参考にしたいから、具体的なものを教えて欲しいんだ」
これはどうしようもないよ……
何か言わないと。
「だったら、エーベルト様か相手の紋章入りの手帳や本を送ったら、どうかな?」
「おお、それは良いな。ありがとう」
納得したようで良かった。
これで解放されそう。
「送るのって、貴族なんですか?」
「まあ、そんなところだけれど、ポルタルチアのドージェと息子だね。昔から親交があるから」
「あ……そうなんだ……」
貴族じゃすまない相手だった……
間違えたら、問題が大きくなっちゃうじゃん。
(余計にしまった……! 言う前に訊けば良かったよ……)
冷や汗が出てきながらも、エーベルト様との会話を続ける。
ここで逃げたら不自然すぎるし。
「どうしたんだ?」
「い、いえ……」
(貴族の贈り物って、友情よりも”外交の符号”なんだ……)
引きつった感じの表情になっていたから、気にしちゃったんだ。
苦笑いしか出てこないけれども。
「そっか。あっ悪いね、これから稽古なのに」
「大丈夫です……エーベルト様と話せて良かったから」
「ありがとう、では稽古頑張ってね」
「は、はい」
何とか会話は終わったけれども、そのプレゼントが無事に喜んでくれるといいな。
さて、稽古へ行かないと。
(今の会話、緊張した……貴族の人達って、考えることのスケールが違うなぁ……)
だけど、ボクみたいなのでも少しは頼られているんだね。




