表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/109

第2話 舞踏会の朝

 舞踏会ぶとうかい当日の朝、学院がくいんの空は雲一つ無く晴れていた。

 王宮おうきゅう行きの馬車が次々と門を出ていく。窓越しに見えた金色こんじき装飾そうしょくが、今日という日の特別さを物語ものがたっていた。


「準備はできたかしら?」


 ゼナイド様の声がして、ボクはあわてて姿勢しせいただす。


「は、はい! あの、リボンはこれでいいですか?」


 仕立て直したドレスを着て、ゼナイド様に確認する。


「まあまあ。……もう少し左。貴女あなた、鏡を見なさい。曲がっているわ」


 ゼナイド様が軽くため息をつきながら、器用きようにボクの襟元えりもとを直してくれた。

 それだけの仕草で、まるで本物の姉のように見えた。けれど、そのひとみの奥には冷たい光がある。


「舞踏会は戦場よ、ポラリス。足の運びひとつ、視線ひとつで”評価”が決まる」


「わ、分かってます……」


 でもボクにとっては、踊るよりも食べる方かな。


「貴女はわたくしの取り巻き。下手な真似まねをして、わたくしの名に傷をつけないで」


「は、はいっ」


 言われるたびに胃がきゅっと縮む。

 怖いけど離れたくない。

 守られている気はしているけれど、縛られている気がする。

 そんなゼナイド様に憧れながら、ボクは小さく息を吸った。


「ま、心配はしていませんわ。貴女は……みょうに運だけはあるもの」


 運かぁ。

 ボクが取り巻き令嬢れいじょうに転生したのも、運かもしれない。

 転生する前は絶対的に悪かった訳じゃないけれどね。


「貴女は”わたくしのもの”なの。失敗したら、許さないわよ?」


 ゼナイド様はボクに念押しをしてきた。

 笑顔を見せているのに、ボクの胸は苦しかった。


「はい……」


 ロランス・プルゼニが笑いながら寄ってくる。


「ゼナイド様の言葉、つまり”失敗しなければ合格”ってことだよ。ね、ポラリスさん」


「そ、そうだね……まあ、とりあえず、料理をこぼさないように頑張る」


「えっ、そこ!? もっと別の目標を持とうよ!」


 ロランスが肩を落とし、ゼナイド様がくすりと笑う。

 そんな空気の中、学院のかねが鳴った。出発の合図。

 馬車に乗り込むと、ふわりと香水こうすいの香りが漂う。

 窓の外では、学院の白い尖塔せんとうが小さくなっていく。

 ゼナイド様は黙ったまま外を眺め、ロランスは緊張をまぎらわせるように雑談をしていた。


「ねえ、ポラリスさん。王宮に行くのって初めて?」


「うん……」


「そっか。じゃあ楽しみだね」


「う~ん……分からないや」


 馬車の揺れに合わせてドレスの裾がふわりと広がる。

 やがて、窓の向こうに白亜の塔が見えてくる。

 王宮だ。


「さあ、着いたわよ」


 ゼナイド様が立ち上がる。その瞬間、車内の空気がぴんと張り詰めた。

 扉が開くと、無数のシャンデリアの光が外まで漏れている。

 きらめく大理石だいりせきの階段、音楽のように響く人々のざわめき。

 胸が高鳴たかなる。


(……これが、王宮の舞踏会なんだ)


 緊張と期待とが胸の中で渦を巻きながら、ボクは深呼吸をして足を踏み入れる。

 ボクはふるえる手でドレスのすそを持ち上げ、一歩ずつ赤い絨毯じゅうたんを踏みしめていった。

 舞踏会だから、今は笑顔を保っているけれど、緊張しっぱなし。

 それに、意味深な誰かの視線をちょっとだけ感じた気もする。


 この夜が、何も知らなかったボクの運命うんめいを変えるなんて、まだ想像もしていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ