午後の王国史
食事会が終わった午後の授業、ボクが受けたのは王国史だった。
社会科よりも難しい内容で、ボクにとっては初めて覚えるのばっかりだけど、選択しちゃった。
でも、この授業で良かったかなって思ったのがある。
(こっちは男子が多いから、良いよね……)
受けているのが、貴族子息が多いから。令嬢も居ないことはないけれど。
子息にとっては必修科目で、令嬢は選択だから。
(さすがに……目の敵にしていないよね)
一応子息達は、いつも通りに見ていた。とはいえ、令嬢達はボクを避けている。
だから近くには子息だけが座っているような状況。
紅一点みたいになっているけれども、仕方ないよね。
まだマシと言えるのだから。
露骨な空席が無いのだし。
「おっ、ポラリスも受けているんだ」
「そうだよ。前からだったけれど」
聞いたことのある声が聞こえた。
隣に座っていたのは、さっき食事会をしていたゲオルギ・フサク様。
当然ゲオルギ様はこれを受けるんだけれども、たまたま隣になっちゃったみたい。
「でも俺……苦手なんだよね」
「へぇ~、ボクもなんだよ」
教授がグランカルミア王国の歴史を授業していく。
今日行ったのは、その時代に居た聖女の祈りで、戦況が変わったりとか、収穫が上がったりといったもの。
また聖女の選出で複数の大公家が対立したっていうのも。
この王国って、聖女というものが存在している。
特殊な才能がある人物だけが選ばれるらしい。
まあ、選ばれるとすればアデリナ様だよね。ヒロインだから。
「聖女って綺麗だね」
教科書に載っている聖女のイラストは、どれも美しく描かれている。
だからボク自身もうっとりする。
「そうだよね。こんな人が居たら、ボクでも好きになりそう」
小学生の頃、図鑑の女神像に見惚れてたのを思い出す。あの時も”きれい”って言ってたけれど、意味は今と違ってた気がする。
「へぇ~、ポラリスも好きになるんだ」
「描かれ方かもしれないけれどね」
授業は教授の話を聞きながら進んでいく。
順調だけれども、こんなのが他の授業でも、かつてのままだったら良かったのに……
もう令嬢が中心の授業だと、令嬢達がボクを目の敵にしているし……アデリナ様やゼナイド様を差し置いて婚約候補になったって。
「バルカナバード嬢、この時王子と結婚した聖女の名前は?」
「えっと……クレリア・ベニシュです」
「合っています」
たまに指されるけれども、何とか答えていく。
ボクだけじゃないから安心だよ……
「終わったね。じゃあまた」
ゲオルギ様はそのまま別の教室へと向かっていく。
「ふぅ……あれ?」
窓の向こう、黄金色の髪が光を掠めた気がした。
見間違いだと思いたいのにーー心臓が、妙に早く打っていた。




