第108話 学院祭準備4
数日後、学院祭の話し合いが行われた。
前回から何日か経っているけれども、それだけ考える時間があったという事。
それぞれ考えてきたよね。うん。
「やっぱり展示は地味じゃないかしら」
「でも演奏系は、他学年と被りますよね」
前回よりも令嬢達は話していて、沈黙は少ない。子息達も話しているけれども、今は分かれている。
「競技形式は学院祭らしくないのでは?」
「でも、来客は多いですし」
だけど沈黙は無いわけじゃなかった。
学院祭は、王都の人達だけじゃなくて、国内外の王族や貴族も来る。
それだけ注目されているという事。
「……結局、何も決まらないですわね」
だからこそ、案が出ては消えていくっていう感じ。
「今日こそ何か決めないと」
令嬢達の視線が机の中央を彷徨っていた。
この話し合いの進行役はいるけれども、誰かこの流れを先導してくれる人を、期待しているのかもしれない。
ボクも思っているんだけど、先日にゼナイド様から言われたことを実践してみることにした。
「……あの」
少しだけ手を上げながら、ちょっと弱い声を出した。
一瞬だけ、空気が止まった。
「はい、バルカナバード嬢」
「どうしました?」
進行役の令嬢がボクに発言を。
「今日は、決めないことを決めませんか?」
ボクがそう言った言葉。
それによって、周りがボクを見て、言葉が出てこなくなっていた。
(これ、このまま話してもいいのかな?)
「……え?」
「決めない、とは?」
「どういう意味ですの?」
令嬢達が聞き返している。
ボクはゼナイド様の言葉を思いだし、考えながら続けた。
「全部を今、決めなくていいってこと」
ちょっとドキドキしているけれども、落ち着きながら話していく。
「被りそうな案と、準備が重い案だけを、一旦”後”に回すとか。今日は”候補から外さないもの”を残すだけで」
とりあえず、少しだけ完全な決定じゃないけれども、方向性だけを。
「……それなら」
「音楽系も今決めなくても良い、ということ?」
納得したように、令嬢達の声が落ち着いている。
「展示も競技も、残しておく?」
「優先順位を決めない、という選択ですわね」
ざわざわとした感じじゃなくて、沈黙があったけれども気まずさはなくて、納得した整理されたものだった。
「でしたら」
アデリナ様が口を開いた。
「責任を今、背負わなくても済みますわね」
ブランカ様もアデリナ様の言葉に頷いていた。
「それ、助かる人も多いと思う」
ロランスも一言。
「では今日は、決めない項目を決める、で良いですか?」
誰も反対は無かった。
頷いている令嬢も。
「異論が無いようですね」
誰も首を振らなかった。
(ゼナイド様、見守っているのかな)
扇子を閉じたまま、頷きもしなかった。
でも視線は、ボクを見ていなかった。
同意していると思う。
(話し合い、進んだね)
それから徐々《じょじょ》に話し合いが進んだ。
「全部を一つにまとめる必要、ありませんわよね」
「同時にやっても、構わないのでは?」
ボクが発言してから、方向性が固まった。
分裂しないで、並列していくような。
何をするかは決まっていない。
そして準備を進めていいものも、決まっていった。後で決めるものも、決めながら。
「こちらとしては、”人と場”を扱う事で良いでしょうか?」
「問題ありませんわ」
さらに、担当領域が仮で決められた。
変わるかもしれないけれどもね。それぞれが何をやるかは決まっていないし。
「ふぅ……」
今日の話し合いはそれらで終わった。
「ね」
廊下に出てから、ロランスが話しかける。
「一言だけだったね」
「うん」
ボクは頷く。
するとロランスは、はにかんだ。
「でも、ちゃんと進んだ」




